BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――イン受難の日

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 毒島誠、4連勝! ピット離れで飛んで、コースを奪っての抜け出し。かと思えば、内をうかがえるピット離れながら5コースを選んでのまくり差し。先月のオーシャンも、バナレで飛んで3カドまくりを繰り出したり、2コースからまくったりと、変幻自在の攻め筋で優勝。返す刀で、平和島周年を5カドからまくり切って優勝もした。「勝てるコースを探して勝負する」という毒島の戦略が面白いようにハマっているわけだ。手が付けられない強さである。
 モーター差が激しいと言われる昨今、しかし毒島は“選手”が勝っているように見えるのだから素晴らしい。レース後の表情を見ると、機力には完全に満足しているわけではないという気配が伝わってくる。プロペラ調整もいつも通り、とことん突き詰めてレースに臨んでいて、必ずしもモーターパワーに頼った4連勝ではないわけだ。

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 一方で連勝が止まったのが西山貴浩。めちゃくちゃ落ち込んでる……などということはもちろんこの男にあるはずもなく、遅い時間帯までプロペラ調整を続けては、他選手との絡みでは意気軒昂なところも見せている。明日の予選最終走は1号艇。これがまたすごい番組で、2号艇に毒島誠、5号艇に前本泰和、6号艇に松井繁。外枠の前付けは必至で、連勝男との直接対決でもある。西山の前半成績次第ではあるが、予選トップの直接対決となることもありうる。さらには茅原悠紀もいて、なかなか難儀なメンバー構成だ。それを西山は「面白い番組ですよ~」と言ってのける。楽インになりそうなメンバーのほうがいいのは当然でも、この組み合わせでも怯んでいる様子はないのだ。「(毒島の)連勝止めてやる~っ!」とも言っているのだから、明日8Rは要注目のレースになりそう! 一味違うニッシーニャを見せてもらおう。

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 今日はイン受難の一日であった。わずか3勝で、大池佑来は抜きの1着だから、逃げたのは赤岩善生と菊地孝平の82期コンビだけなのであった。12Rの白井英治はフライングに散ってしまったが、これも峰竜太のまくりが前に出ていたから、勇み足でなかったとしても勝てていたかはわからない。こんな日もあるから、ボートレースは面白い。
 赤岩はようやくゴンロクロードを抜け出す逃げ切り。レース直後は、関係者の方ととびきりの笑顔で話す場面もあった。足的にはまだまだ苦しいとのことだが、そうしたなかでの勝利は気持ちを楽にしてくれる良薬であろう。レース後もさらに調整に励んでおり、機力アップの戦いは明日以降も続いていくが、一息つける勝利を得たことでどう変わっていくかが楽しみだ。

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 菊地も、レース後の表情は実に明るかった。インが勝てない流れは、聡明なこの男なら把握していただろうから、きっちりと逃げ切れたことの安堵も大きかっただろう。公開勝利者インタビューに向かう際、たまたまその途上で出会った菊地は、満面の笑顔でこちらに手を振ってきた。嬉しそうだ! こちらももちろん、手を振って返す。菊地は12年前にBOATBoyで連載コラムを書いてもらっているが、それ以来の付き合いのなかで、手を振り合ったのは初めてだ(笑)。

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 このイン受難のなかで、とりわけ悔しい思いをしたのは磯部誠ではなかったか。水神祭の最大のチャンスであった1号艇。コンマ02まで踏み込み、湯川浩司のまくりを受け止めて逃げたが、2マークで逆転差しを食らってしまう。池上カメラマンによれば、先輩たちに愚痴をこぼすようなところもあったようだ。もちろん、ただヘコんでいるわけではない。今日も結局、最後まで試運転をしていたのが磯部だったのだ。切り上げたあとも、ペラ室にこもって調整作業をしている。磯部は全身ショッキングピンクのいで立ちで、実によく目立つ。最後の最後まで、ペラ室のガラス越しにピンクをまとった男が視界に入ってきたものだ。水神祭は何号艇でやってもいいわけなので、明日はこの努力が実ることを祈りたい。1R5号艇と8R3号艇。あ、西山vs毒島の8Rか。毒島を止めるのはこの男だったりして。

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 1Rでまくり差しを決めて、イン受難の流れをまず作ったのが笠原亮。今日は1回乗りだったのだが、なんと12R発売中にもペラ調整所に姿があった。1R後のボートにはピンクの艇旗がついていなかったので、水面をずっと確認していたわけではないが、おそらく試運転はしていない。しかし、プロペラ調整は丸一日、続けていたのだ。笠原は室外の調整所で叩いているので、風が吹き込む今日のピットだったとはいえ、汗をかきかきの作業だ。笠原はペラ調整所にこもるタイプではあるが、1R1回乗りの日に、10R後の1便でも帰らずに叩き続けるとは。最近は叩きすぎて悪くしてしまうこともあるのだが(笑)、準優好枠も狙えるポジションにいるだけに、明日の気配に注目してみたい。ハマれば、コース不問で突き抜ける爆発力があるだけに、楽しみなことになる。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)