13時30分から行なわれた優出インタビューを終えて、すぐにペラ室に入ったのは井口佳典。「ターン出口に不安」というその部分を解消するべく叩いたか、それとも現状の特徴である行き足にさらに磨きをかけんとしたか。いずれにしても、その動きは素早かった。優出インタビューを起点とするなら、最も早く動いたのが井口である。調整はその後も続いていたので、一日びっしりとペラ調整(と試運転)に励むということだろう。
時間が経たないうちに、笠原亮もいつもの場所でペラを叩き始めている。装着場にいれば、自然と目に入るそのポジション。今節、そこで笠原が視界に入っていたのは、どれくらいの時間に及ぶのだろう。今日は、自分のペラ調整をいったん切り上げた菊地孝平が隣にすわって、しばし会話を交わした。それは菊地が後輩にアドバイスをしている、という姿に見えた。笠原としては、菊地に話を聞いてもらうだけでも、大きな後押しになるだろう。
つづいて姿をあらわした柳沢一は、ペラ室で調整中の池田浩二のもとに向かっている。やはりしばしの会話で、池田もしばし手を休めて柳沢の言葉に耳を傾け、言葉を返していた。湯川浩司の場合は、松井繁が会話の相手だった。ペラを手にして装着場にあらわれた湯川は、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、明らかに誰かを探している様子だった。それが王者だったか。二人並んでペラ室に陣取り、湯川は松井の言葉に聞き入っていた。ペラ室を出て控室に向かう際にも、会話は続く。「ああ、それはようある」という松井の言葉が聞こえたので、湯川が調整の結果なりを松井に話して、松井がよくあることやで、と返したものだと思われる。
笠原と菊地。柳沢と池田。湯川と松井。SGタイトルを量産している先輩が、優勝戦を戦う後輩に寄り添う。そんな場面が見られた、ファイナルの午後イチなのであった。
圧倒的な強さを見せつけている毒島誠は、2R発売中にプロペラ室に入っている。室内での様子をすべて見ていたわけではないが、木槌は持たずにゲージを当てており、まずは確認作業と見受けられた。本格的な調整作業はこれからだろう。といっても、朝のスタート特訓後、毒島はボートを係留所につけたまま。いつでも水面に出ていく用意はありそうだ。6連勝でここまで来たが、気を緩めるつもりはまったくない。集中力を保ったまま、ファイナルに向かうことになるだろう。
序盤の時間帯で、唯一作業を始めていなかったのが篠崎仁志だ。エンジン吊りも控室のほうからあらわれては、最終日のモーター返納作業のヘルプを終えるとまた控室へと戻っていっている。こちらはマイペースで過ごしており、表情もスッキリしていた。眉間に、頬に、力がこめられるのはこれからだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)