BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負駆けに明暗アリ

 

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 う~ん、残念。12Rでエース29号機・村岡賢人がフライングを切ってしまった。スタート判定中の表示は2周目のスリットを超えるあたりまで出続けていたため、ピットでは「正常になってくれ」の思いがはっきりと漂っていた。しかし、勇み足……。準優、あるいは優勝戦を賑わすに違いない存在だっただけに、離脱してしまったのはいろいろな意味で痛い。もちろん、いちばん痛みを感じているのは村岡自身。いち早くピットに戻ってきた村岡は、うつむきながら競技本部へと駆けていった。エンジン吊りのためすれ違う他の選手たちも、この痛みは他人事ではない。誰もが声をかけられず、平静を保ったまま村岡とすれ違うのみであった。

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 ドリーム1号艇の羽野直也は、順当に予選突破。準優は2号艇で臨む。ただ、レースを見ている分にはそこまで強い足には見えないので、本人にぶつけてみた。然り、羽野もまた、レース足の弱さを感じているようだ。試運転ではいい足をしているそうである。「足合わせしても、(仲谷)颯仁より出ていく」とのこと。予選トップ通過の仲谷と互角かそれ以上なのに、レースに行くと上位の選手には分が悪いのだそうだ。試運転はよくないがレースではいい、というのも含めて、試運転とレースの齟齬についてのコメントはよく見かけるものだが、どれだけそんな話を聞いても不思議でならないし、選手も同様であろう。羽野は、明日はその齟齬を埋める作業に専念することになるだろう。うまく良化させることができるかどうか。

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 佐藤翼も準優2号艇。佐藤は、昨日までなら、と付け加えたが、やはり足はいい状態だそうである。明日は、まさにその手応えを取り戻す一日。いや、翼に言わせればそうではない。「それ以上を目指しますよ」。元の状態に戻すのではなく、さらにパワーアップをしようというのだ。その意欲が頼もしい。実際に成功するかどうかではなく、その強い意志がレースでは佐藤の背中を押すような気がするのだ。思い出すのは、12年徳山新鋭王座。結局は優勝戦1号艇でFを切り、滂沱の涙を流すことになるのだが、予選トップで準優を決めた日、翼は力強く「旋風を巻き起こしますよ」と言った。あれから6年経ち、翼も30歳。しかし、その前向きな姿勢は変わることはない。あの日の雪辱を最後のヤングダービーで晴らしてほしい、そんな思いにもなろうというものだ。

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 それにしても、今日の木下翔太の勝負駆けはお見事だった。6号艇の7Rは、コースを奪っての1着。それは格上としての意地でもあったし、戦ってきたステージの違いを見せつけるような豪快な勝利だったし、とにかく価値の高い勝負駆け成功だったと思う。木下自身、そんな言葉には「いやいやいや」と謙遜するのだが、そこはグラッツェを聞きたかった(笑)。というのはともかく、手応えを得ているのは間違いなく、そして同時に明日が本当の勝負という思いもあるようだった。準優は4号艇。どんな勝負手を見せてくれるか、楽しみだ。

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 やはり6号艇で前付けに動いた丸野一樹は、Fに散ってしまった。前半の記事を書き終えた後に、まさかの勇み足。俺が書いたせいか、などとも思ってしまったりした。ただ、実際のところは木下と丸野は紙一重とも言える。どちらもここが勝負どころと気合を入れて、何が何でも予選突破と思いを込めた。それが時に明暗を生むのが勝負というものだ。丸野は暗のほうを味わってしまったわけだが、その崇高な勝負心ははっきりと伝わってきた。丸野自身は、やはり悔やむ部分も大きいようだったが、「でも勉強になった」とも言う。何がFにつながってしまったのかを、冷静に分析もできているわけだ。ならば、この経験は無駄にはなるまい。来年のヤングダービーで、いや、もしかしたらまた別の舞台で、一回り大きくなった丸野に会うことを楽しみにしていよう。

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 今節のトピックのひとつとなったのは、女子の健闘! 出場7人のうち、5人が予選を突破したのだ。これはもう、大拍手である。中村桃佳は予選5位。着順によっては8点オーバーもあった得点率は、10Rの大敗で6・83まで落ちてしまったが、しかし予選5位である。「6・83で2号艇!?」と驚いてもいて、もっと外枠になるのを覚悟してもいたようだ。あるいは、「準優2号艇で優出した記憶がない」と悪いイメージが喚起されてしまった? そしたら、JLC解説者の青山登さんが「ここらで吹っ切れ。いつまでも悪いイメージを持ってたらダメだ」とお説教(笑)。青山さんの風貌だから、見ているこちらがブルってしまう……というのはウソだが、青山さんの言うとおりでもあって、明日はその壁を破る一日にしてほしい。

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 2着・2着の勝負駆けをクリアした守屋美穂も素晴らしかった。2つのレースとも2番手争いは激戦になったが、気迫ある走りで獲り切っている。SGも走ってきたキャリアというものを感じる走りだった。レース後の守屋は整備室。といっても本体整備というわけではなく、整備士さんにアドバイスを受けているようだった。モーターを前にしなくても、整備士さんには教わることがたくさんある(今節は木下翔太の同じようなシーンも見た)。若手選手なのだから、その道のプロにいろいろと相談するのはまさにキャリアアップにつながるだろう。それが準優にいきなり活きたら最高だ。

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 10R竹井奈美、11R中村、大山千広、小野生奈、12R守屋の布陣で臨むヤングレディース。11Rに3人が集中するのを残念がる声もあったが、5人も出るのだからどこかで直接対決があるのだし、女子勢が気を吐いてきた証しである。ヤングダービー初の女子優出、見たいぞ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)