BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――チャレンジカップの勝負駆けはグランプリの勝負駆けでもある

 

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 なんとなく嫌な予感がして、記者室での仕事をいったん切り上げて、ピットへと向かう。8R、もし松井繁がここで大敗などすれば、王者のグランプリロードが終わる。そのシーンを目撃せねば、などと思ったわけではないが、なんとなく背中がぞわぞわして、寒くなり始めたピットに足を踏み入れた。
 いやはや、凄かったっすね! 杞憂もいいところで、松井は4カドからまくり一撃。一気に後続をぶっちぎって、準優行きを決めた。王者はやはりこんなところでは終わらない。似たような場面は何度か見てきたが、今日も王者は王者だった。

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 笑顔をたたえてボートを降りた王者に、石野貴之や木下翔太ら出迎えた面々も笑みが浮かぶ。「まだ乗るから!」と石野に伝えて控室と戻る松井は、貫録たっぷりなのであった。「乗るから!」というのは、試運転をするよ、ということ。勝利者インタビュー後に水面に出て、明日に向けて万全の準備をして、松井は1便で宿舎に帰った。その後ろ姿までがいちいち王者! 王者のスーパー勝負駆け、やはりドキドキするし、そして圧倒される。

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 地元グランプリを目指す大阪支部では、石野貴之も木下翔太も準優に残った。石野はベスト6を目指す戦いで、木下は初めてのベスト18を目指す戦いとなる。木下は松井と同じレースとなった。しかも隣合わせ。未来の大阪支部を担う者として、間近で見る王者の背中は木下には意義深いものとなるだろう。そして王者を破って優出を果たしたとなれば、大きすぎる経験となるはずだ。

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 そんななか、湯川浩司は負傷により途中帰郷となってしまった。8R発売中、着替えを終えた湯川は荷物を整理するために宿舎へ。ちょうど鉢合わせして、湯川はこちらに渋面をつくって、小さくごめんと口にした。そんなことより、まずはしっかり身体を癒してほしいわけだが、グランプリ復帰がならなかった無念も癒してほしいと思う。身体も痛いが、心も痛いはず。来年こそは、と切り替えて、グランプリシリーズとはなるが、住之江で元気な顔を見せてほしい。

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 10Rは、菊地孝平が1号艇で勝負駆け。1位なら得点率トップとなる桐生順平と片岡雅裕がすぐ外に控える組み合わせで、さらにエース機・石野貴之も5号艇にいた。なかなか険しい戦いだったわけだが、菊地はしっかりと逃げ切って、勝負駆けを成功させた。レース後は、とにもかくにもホッとした、という表情。充実感も漂わせながら、微笑を浮かべながら戦った相手に礼をしていた。

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 その菊地の表情と比べると、桐生順平のそれはまるで明るさをたたえることがなかった。憮然とまでは言わないものの、不機嫌そうな顔つきであったのはたしかだ。結果的にはそれでも準優1号艇なのだが、道中で石野貴之に2着を逆転されていることもあって、満足のいく結果ではなかったのは明らかだ。やはり1位通過の可能性があった片岡雅裕はむしろ淡々として見えたが、桐生には悔しいばかりの結果だったかもしれない。

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 その後の11R=レディース戦では、寺田千恵が「首の皮一枚つながった~」とテンションを上げていた。2着ではあったが、優出に望みをつなぐ2着でもあった。寺田が差しを放った1マークの出口では逃げた遠藤エミと接触しそうになっており、それを遠藤が詫びに来ても、「違う違う、あれは私が別の方向を見てたの」と気遣っている。4日目終了時点で6位とまだまだ予断は許さないが、悪くない気分で明日の勝負駆けを迎えられるだろう。
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 12R、峰竜太が逃げ切り。しかし、これがスムーズな逃げ切りではなかった。1マーク手前で初動を入れた瞬間、激しくバランスを崩しているのだ。これで2コースの前本泰和、3コースの中島孝平は外を行くしかなかった。少なからず、レースに影響があったと言える。というわけで、ピットに戻った峰は、まず他の5人に頭を下げて回った。もちろんみな許しており、峰は苦笑いを浮かべるしかなかった。そんな峰を、みんなイジるイジる(笑)。峰はさらに苦笑いというのか照れ笑いというのか、ともかく笑みを深くしていた。峰曰く「曲げすぎた」ということだが(ハンドルを急に入れすぎた?)、それでも逃げ切ったのはまあたいしたものだし、それを寄ってたかってイジられるというのが峰のキャラというものだろう。

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 このレースでは、赤岩善生が1着なら、予選トップに立っていた。しかし差し切れずに5着。さすがにヘルメットの奥からのぞいた瞳には悔しさが漂った。

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 結果、予選トップは馬場貴也! ダービーにつづいて滋賀支部だ! 絶賛発売中のBOATBoy12月号のダービーレポートには、優勝した守田俊介に馬場が寄り添う写真が見開きでドーンと載っている。前検日、それが嬉しかったと馬場が僕に話しかけてきた。次は馬場貴也が主役にならなきゃ! そんな話をしたわけである。そのチャンスがやって来た! 馬場にとって、SGでこの立場に身を置くのは初めて。当然、緊張しなければおかしい。なにしろSG初Vと初グランプリが手の届くところにあるのだ。カタくなるのが自然である。馬場もそれはしっかり認識していた。「だから、しっかり集中していきますよ」。うん、プレッシャーを吹き飛ばすにはそれしかないかもしれない。
 そして、「最終日は守田さんと黒須田さんを泣かせますよ!」と笑った。まあ絶対に泣くのは馬場自身だと思うが、こちらもハンカチを用意して最終日を迎えられるよう、明日の戦いぶりに期待します!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)