BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ニコニコの勝者

f:id:boatrace-g-report:20190317171638j:plain

「出足もいいじゃないっすか!」
 10Rのエンジン吊りを終えて肩を並べた平尾崇典と菊地孝平。菊地が平尾にそう語りかけた。菊地としては渾身の2コースツケマイだったに違いない。しかし平尾はしっかりと受け止め、まったく前に出さなかった。そのまま押し切った。ドリームは4カドから、今日の前半は2コースからまくっている平尾。どちらもその外に差しを許しており、明らかな伸び型かと思われた。菊地もそこを突いてツケマイを放ったのかもしれない。しかし平尾はそれを許さなかった。菊地の叫びは、至極当然の思いだろう。

f:id:boatrace-g-report:20190317171713j:plain

 平尾はもう、ニッコニコだ。レース直後こそ淡々としたものだったが、勝利者インタビューから戻ってくると、さまざまな記者さんたちと目を細めながら話し込んでいた。ここまでの3走、すべて主導権を握り、オール2連対。手応えがないとは言わせない。いや、平尾がどんな言葉を並べようと、そのニコニコ顔がすべてを物語っている。

f:id:boatrace-g-report:20190317171831j:plain

 11Rは山崎智也が逃げた。白井英治、笠原亮とここまで好調の二人がいて、戸田ということを考えれば決して楽なイン戦ではなかったが快勝。ピットに戻って仲間の出迎えを受けた智也は、爽快に笑った。声をかけたのは、やはり今日快勝の濱野谷憲吾と長田頼宗。もうずっとこの欄に書いてきたこと。「智也は負けた時ほど、よく笑う」。勝って戻ってくると淡々として、特別笑ったりしないのに、敗れたときには悔しさを紛らし、そして胸の内を覆い隠すようにして笑顔を見せる。そして他の選手の視線が智也から外れたときに、表情が暗転する。だから、勝った後にここまで笑顔なのは実は珍しいことなのだ。智也自身、気持ちよすぎる勝利だったのだろう。

f:id:boatrace-g-report:20190317172008j:plain

 そういえば、濱野谷憲吾が本体を割っていた。7R、爽快な4カドまくりを決め、足は上々と見えていただけに、意外な姿だった。かなりジックリ、丁寧に、整備は12R発売中まで続いた。忙しそうで声をかけるスキが見つからず、部品を交換したかどうかは現時点ではわからない。いずれにしても、勝って緩めず、の整備と見えた。

f:id:boatrace-g-report:20190317172043j:plain

 整備室には選手の姿が多く、他では久田敏之が本体整備。ピストンを外しているのが見えた。海野康志郎は電気一式を外していたので、これは交換かも。桐生順平はキャリアボデーを外している様子で、こちらも交換か。明日の直前情報はぜひチェックしていただきたい。

f:id:boatrace-g-report:20190317172108j:plain

 そんななかで、吉川元浩はゲージ擦りだ。何度でも書くが、ゲージ擦りは現状のパワーを引き上げる作業ではない。今乗っているモーターについているプロペラ、その形をゲージに写し取るわけだから、「出ているエンジンについているプロペラの形」を自分の引き出しに加える、と考えていいだろう(すべてがその限りではないだろうが)。まして、2日目にしてこの作業に没頭できるのは、間違いなく現状に大きな不満がない、ということ。ここまでの戦いぶりとこの作業は、ピッタリ符合しているのである。

f:id:boatrace-g-report:20190317172133j:plain

 遅くまで試運転をしていたのは、松本晶恵、長嶋万記、渡邉英児。松本は毒島誠のアドバイスを受けたようで、試運転の合間に顔を合わせると、お辞儀してお礼を告げていた。松本は12R発売中まで試運転。初戦1着後は6着を並べており、流れを取り戻そうと必死だ。

f:id:boatrace-g-report:20190317172210j:plain

 長嶋は初戦妨害失格、今日の1号艇も4着と流れが悪い。というか、このところどうにもリズムが悪く、勝率を大きく落としてしまっている。落胆や焦りはあるだろう。特に、初戦の妨害については。しかし長嶋は前を向いて、残りの4日間も決して投げ出すことなく奮闘している。それが今節のどこかで実を結んで、悪い流れを断ち切るきっかけになってほしい!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)