BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット--5日目②優出メンバー決まる!

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 9Rを逃げた今井美亜がピットへ帰ってくる。戻ってくるなり、すぐにそばにあるカラーコーンにヘルメットを刺して、自分の艇の洗浄へ参加。勝利の余韻に浸る間もない。
 ただあまり笑顔がなかったのは、この時点では待機行動違反を気にしていたかららしい。結果はお咎めなし。優出決定。

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 エンジンもさることながら、今節の今井ははスタートがキレキレだ。初日からのST順位は121113。そして今日もトップスタート。
「この大会に出るためにこれまでスタートを抑えてきた。その分しっかり行こうと思っています。かなり集中してスタートは切れています」とそのスタートを自己分析する。
 64号機大山への対策は? 
「向こうが失敗しないと優勝はありえないと思うので。完璧なレースをさせないよう、プレッシャーをかける動きをみせなきゃいけないなと思います」
 基本的に今井は進入でプレッシャーをかけるタイプではない。つまり明日はスタートでプレッシャーをかけて大山に挑む。

 2着に入線したのは大瀧明日香。ピットに戻った瞬間はあまり笑顔がなかったのだが、こちらも待機行動違反を気にしていたようだ。

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 18年6月1日から12月31日までの勝率は5.08。事故率は0.61。ここから事故点を増やさずに勝率を上げて、地元のレディースチャンピオンに出ようとモチベーションを上げた。地元最後の砦ですという質問には--。
「砦感はそんなにないです(笑)。でも地元が乗った方がいいかなとがんばりました」
 明日は4号艇。走り慣れた自分の庭で大山に挑む。

 

 11Rでファイナルへのキップを掴んだのは田口節子と遠藤エミ。

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 田口はピットに上がってくるなり、目を細めてニッコリ。カメラに向かっても笑顔を振りまいていた。
「(優出できて)ほっとしています。威張れる足じゃないけど、積み上げて来た経験を生かせたと思います」

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 大山対策は?
「どうやってもあの足にはならないと思うので、展開をつけるよう、乗り心地をつけていきたい。2コースは得意なコース。いつもどおり走れれば。大山さんは別格かもしれないけど、1枠は緊張するはずなんで」
 よくよく考えてみると、田口は「緊張して負ける側」と「緊張している選手を負かす側」、両方の経験している。
 05年のレディースチャンピオンは、田口が1号艇で登場。人気を集めたものの、コンマ19の6番手スタートで3着に敗れた。
 逆に11年のレディチャンは、1号艇で圧倒的1番人気に支持された平山智加をまくり差しで破っている。
 ファイナリストの中で経験値は間違いなく最上位。経験で大山に挑む。

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 遠藤エミは昨日の転覆の悪影響から抜け出せていなかった。足がかなり落ちており、今日も展示の発走時間ギリギリまでペラ調整を続けていた。レースでも藤原菜希に伸びられた。明日もやることは一杯あるという。
「全体的な底上げが必要です」
 ただし、そんな逆境にあっても、優勝戦に駒を進めてくるのが、遠藤の強さの証明でもある。明日の20時40分には、大山に挑めるレベルには仕上げてしまいそうな気もする。

 

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 11Rは松本晶恵が2着をキープして優出。誰もが恐れる64号機大山と初対戦した松本だが、悲観的なイメージは抱いていない。
「たしかに足も良さそうですが、スタートの行きっぷりや、乗りっぷりがすごいと思った。ホームは同じくらい出ていたし、いい部分が場所によって違うが、私はそこまでヒケを取らないと思います。自分も展示タイムは同じくらい出ていた」と宣言。
 大山の足がいいのは誰もが認めるところだが、その派手なレースぶりから、足自体の印象が上方修正されている部分があるのではないかと考えているようだ。松本のモーターは自称100点満点。つまりやり方によっては戦える。
 昨年の地元・桐生レディチャンは、準優勝戦で2着に入るも不良航法で優勝戦へ進めなかった。その鬱憤を晴らすべく、18年末のクイクラを優勝。GⅠ通算2勝、平成最後のクイーンが大山にガチンコで挑む。

 

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 そして11Rを圧勝した大山千広。多くのファンが予想したとおり、順当に優勝戦の1号艇を手に入れた。
 しかしここにきて、心の中にはほんの少しの不安が持ち上がってきているようだ。
「合えば確実に節イチ。乗り負けることはないが、ちょっと足落ちしている感じも」
 今日のレースを傍から見ていて足落ちは感じなかったが、本人はいいときに比べると若干落ちているという。
 余談になるが、いいモーターを引き、大レースで初優出した選手が急に「足落ちを感じる」と言い出すことが不思議とよくある。これはプレッシャーからくるファントムペイン(幻肢痛。存在しない足なのに痛みを感じる)のような現象ではないかと想像しているのだが、正確なところはわからない。

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 どちらにしても、不安の種を放ったらかしにすると、それはプレッシャーという食虫植物になって襲いかかってくる。実際に足を上向かせるのか、それとも今の足に納得するのか、方法は2つしかない。
「チャレンジャーなので楽しんで走りたいと思います!」
 楽しんで走れるよう、不安の種は取り除いてほしい。
 大山千広は、やはり自分自身に挑むのである。

(TEXT姫園 PHOTO池上一摩)