THE勝負駆け①予選トップ争い
上位ランカーの興亡
2012年チャレンジカップで地元の平尾崇典が逃げきってから、児島・記念優勝戦(SG・GI・GⅡ)の1号艇はなんとなんと破竹の15連勝中!! もちろん、予選トップに立った選手が、そのプラチナシートに大きく近づくことになる。
★昨日までのトップ5
①田村隆信 9.00 8R⑥、12R③
②松田祐季 8.00 6R③
③馬場貴也 8.00 7R⑤、12R②
④毒島 誠 7.80 9R④
⑤西村拓也 7.60 12R⑤
この中で前半戦に登場したのは暫定2位の松田ただひとり。6Rで自慢の出足・回り足を駆使して勝ちきればトップ田村に大きな圧力をかけられるのだが、逃げる久田敏之を捕えきれず、6コース石野貴之にも差し抜かれて3着まで。7・60で予選を終え、いささか険しい相手待ちとなった。
逆に、このレースを勝ちきって暫定7位から2位まで躍進したのが久田だ。初日から33211着という尻上がりの成績で8・00。予選ラストの11R4号艇で3連勝なんてことになれば、6人ゴボー抜きの大逆転トップも見えてくる。
続く7Rに登場したのは暫定3位の馬場貴也。12Rでの田村との直接対決を考えれば上位着でプレッシャーを与えたかった馬場だが、十八番の5コースまくり差しをブロックされて4着に敗れた。
昨日の上位ランカーが次々と着を落とす中、続く8Rでガッチリと大きなポイントを稼いだのが暫定トップの田村だ。試練の6号艇もなんのその。④深川真二の前付け狙いで内4艇が深くなるのを尻目に、飄々と6コースに構えて伸びなり豪快な絞めまくり。2~5コースを絞め潰してから、的確機敏なまくり差しハンドルを突き入れた。2マークで柳沢一(メイチ①着勝負!)の逆転差しを許したものの、6号艇での8点上積みは大きい。
一方、上位ランカーたちの足踏みは続く。9Rの毒島誠は枠番なりの3着で7・50フィニッシュ。松田の7・60を下回り、この瞬間に予選トップの可能性は消滅した。さらに、11Rでは勇躍2位までランクアップした久田が、4カドからよもやのスタート遅れ。外の原田幸哉に一撃で叩かれ、6着=6・83で予選トップどころか準優1号艇の可能性も消失した。田村だけに追い風が吹くような流れの中で、最終決戦の12Rは……?
THE勝負駆け②準優ボーダー争い
同県コンビたちの泣き笑い
1R~12Rまでボーダー6・00が微動だにしなかったトップ18を巡る争いは、例によって最後の最後まで予断を許さぬ激戦となった。まず、惜しくも準優に手が届かなかったのが3Rの山田康二だ。その行く手を遮断したのは、同県の大先輩・深川真二。2着=6・00が欲しい山田に対して2番手を取りきった深川は、後輩の猛追を激辛のターンで完全ブロック。ゴールまで丸々2周に渡って山田の渾身のターンを全身全霊で跳ねのけた。「泣いて馬謖を斬る」ではないが、心の中では泣いていたかも? F2の身の上でギリギリのボーダー争いを演じた山田には、労いの拍手を贈りたい。
それから、予選の最後まで劣勢パワーに泣かされ、ついに力尽きたのが地元のエース茅原悠紀だ。2走12点が必要だった茅原は、前半5Rのバック直線で最低ノルマとも言うべき3着争いを演じていた。ところが、そこからターンするたびにずり下がり、終わってみれば6着惨敗で準優圏内から一気に転がり落ちてしまった。昨日も書いたが、モーターのみならず気持ちも空回りしていた気がしてならない。ゴールを過ぎて1マークを回ってから、茅原は極端にスピードを落とし、同じくガックリと肩を落としてバック水面をゆっくりと流し続けた。地元ダービーに懸ける並々ならぬ思いは、4日目にしてその行き場を失った。
もうひとりの地元の雄・山口達也はすったもんだのレースの末に、それでも予選を突破した。6号艇の1Rは、多くの選手が邪道として忌み嫌う回り直しを敢行。5コースのダッシュからスロー勢を的確に攻めて準優ノルマの2着を取りきった。さすが曲者、この男はこうでなくてはつまらない。と目を細めていたらば、後半9Rは2コースからコンマ52!!!という半端ないドカ遅れ……これはもう曲者とは無縁の単なる大失態でしかないな。準優の好枠入りを期待して舟券をつぎ込んだ全国のファンに土下座して詫びなさい!! なんとなく、この反動で明日は全速でコンマゼロ台まで踏み込むような気がするのだが、どうだろうか。とにもかくにも、志半ばで力尽きた茅原の分まで、明日こそ悔いのないスタート&レースを心掛けてもらいたい。
さてさて、後半戦に入ると①着勝負駆けの1号艇が次々と予選ボーダーを飛び越えた。前述、8Rの柳沢は田村70号機のまくり差しを浴びながら、1周2マークで乾坤一擲の逆転差し。もちろん値千金の逆転だったし、「田村70号機を追い抜いた」という意味ではパワー相場的にも実に楽しみな予選突破と言えるだろう。明日は直前の気配と照らし合わせつつ、ひそかに柳沢22号機から穴舟券を狙ってみたい。
柳沢のみならず、“ピン勝負ラッシュ”はどんどん続く。9Rはピストン・リング・シリンダーケース・キャリアボデーを換えて最後のチャンスに挑んだ中澤和志、10Rはリング1本を換えた篠崎元志がともに逃げきって、予選ボーダー6・00に到達した。結果的に中澤は同率ながら19位で次点になってしまったのだが、勝負どころで大手術を敢行した気合は天晴れの一語。おそらく、その気力は機力にも反映されたはずだ。明日以降も要注意。
そしてそして、最終12Rの1号艇もまたメイチ①着勝負だった。
最終決戦
予選トップ&準優ボーダーのW直接対決となった12R。その条件を簡潔にまとめておこう。
①井口佳典…逃げれば確定、②着以下はアウト。
②馬場貴也…①着&田村⑥着のみトップ当選
③田村隆信…③着以内で自力トップ確定。
④中野次郎…圏外
⑤西村拓也…①着&田村④着以下でトップ当選。
⑥山口 剛…③着以内で自力突破。
つまり、予選トップ争いは田村が断然有利な三つ巴。また、「田村が⑥着&西村③着以下&馬場②着以下」という条件が重なれば、結果待ちの松田祐季にトップの座が転がり込む。一方のボーダー争いは直接対決というより、「それぞれがそれぞれのノルマを全力でクリアする」という意味合いが強かった。で、ふたりが同時に条件をクリアしたら暫定17位の松井繁が脱落。逆にクリアできなければ暫定19位の中澤和志が繰り上がり突破、とい状況だった。
いざ最終決戦、スリットほぼ横一線から1マークを回って抜け出したのはイン井口と2コース馬場だった。1着以外は意味をなさない井口の逃げvs1着で準優1号艇確定にして予選トップの可能性も残る馬場の差し。一瞬、馬場の差しが入ったかに見えたが、井口44号機は乗り手の気合が乗り移ったかのように、馬場の舳先を振りほどいた。当確ランプの第一号と言っていいだろう。
一方の予選トップ争いは、この時点でほぼほぼ「田村か、結果待ちの松田か」という様相になった。田村が5着以内なら田村、6着なら松田。道中で3着争いをしていた田村で決定的なムードだったが、2周1マークで西村と田村が追突しそうになって田村が減速。一気に5番手まで後退したものの、その後は落ち着いたターンで5着ながらも予選トップのゴールを通過した。70号機のパワーともども、けだし順当な最終決着と言っていいだろう。
そして、もっとも過酷な戦いになったのが山口剛の③着条件だ。道中4番手から前を行く西村を追って追って、一時は逆転の差しハンドルを突き刺したかに見えたが、バック直線の伸び比べで逆に突き放された。状況が状況だけに、残酷すぎるパワー差と言うしかない。暫定18位だった剛はこの瞬間に圏外に脱落、結果待ちだった松井繁が首の皮一枚で生き残った。結果的には「同県の後輩・西村拓也の援護射撃」という感じだからして、今晩の松井は西村の肩をモミモミしていることだろう(笑)。いつものことながら悲喜こもごもが様々な状況で移り変わり、レース以外の選手にもそれらが伝播する、いささか残酷な4日目12Rだった。(photos/シギー中尾、text/畠山)