BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――オレンジベスト

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 荒れ水面となっている2日目。1Rから安定板装着でレースが行なわれており、また昨日よりも気温がぐぐっと下がってもいるので、選手たちの調整ピッチも早い時間帯から上がっている。“石川ペラ”を前検日から叩いてきた柳沢一も、3R出走ということもあってだろう、懸命に調整する姿が見かけられた。桐生のピットにはペラ調整所が2カ所あり、さらに屋外の調整所も設けられているが、それでも場所がとれないということなのか、柳沢は調整所の外、出入口の脇に陣取っていた。調整所はいつも満員御礼状態なのだ。

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 試運転をする選手ももちろん多く、波立つ水面を切り裂いて、手応えを確かめている。水面状態が良くないと足色の確認も難しいだろうが、だからといっておろそかにはできない。4Rを控えた井口佳典も試運転に励み、いったん切り上げると気合たっぷりな表情でペラ調整所に向かった。
 その井口、今日はオレンジベストを着ている! 男子最低体重51kgに満たない選手が重量調整用に着用するベストだ。グランプリでの井口のベストはおなじみだが、ほかのSGではあまり見た記憶がないのだが。それだけこのチャレンジカップに「何としてもベスト6入りへ!」との気合を込めているのだろうし、あるいはすでにグランプリへのスイッチが入っているということでもあろう。

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 オレンジベストは、中野次郎も着用していた。調べたら、過去1年で次郎がベストを着たのは昨年のチャレンジカップのみ。去年も今年もグランプリ出場を切望しての減量敢行と考えていいだろう。今年に入って、ピットでの次郎の雰囲気が変わってきているように感じているのだが、もうひとつ上のステージに駆け上がることを、今の次郎は強く意識しているのかもしれない。

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 そうしたなか、装着場では瓜生正義が自艇に乗って、ハンドル操作やモンキーターンの姿勢をとりはじめた。その脇では、香川素子と落合直子が質問を交えながら見入っている。今年の福岡オールスターでも“開講”されていた「瓜生教室」だ! 福岡では生徒は大山千広や竹井奈美だったが、今回は支部の枠を超えた。瓜生と同じ斡旋になることは少ないであろう香川と落合にとって、このチャレンジカップは絶好の機会。瓜生の操縦技術の一端でも学ぼうと、こうして教えを乞うているわけだ。もちろん、瓜生も快く教える。このエッセンスを香川と落合はしっかりと身に着け、さらにレベルアップしていくことだろう。香川と落合は、瓜生以外にも平本真之にもやはり教えを受けていた。こうした向上心は素晴らしい!

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 1R、渡邉優美が差し切って1着。そのレース前、おおよそ10分ほどもかけて、入念にストレッチをしている渡邉の姿があった。ボートレーサーが全身を駆使して戦うアスリートであることを改めて実感する。元選手に話を聞くと、ペアボート操縦などでたまにボートに乗ると、次の日などに激しい筋肉痛に襲われるんだとか。走るのは機械=モーターボートでも、それを全身で操縦するのはレーサーなのだ。1Rの勝利がそのストレッチのおかげと結びつけるのは短絡だろうが、それでもそうした心掛けが渡邉を支えているのは間違いないだろう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)