BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――愛知の痛恨

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 中野次郎がなぜか恐縮しながら近づいてきたので、何かと思ったら、内緒話でもするかのように尋ねてくる。
「彪也、水神祭ですか?」
 師匠のご推察通り! 2Rで永井彪也が勝てば、水神祭なのであった。一昨年のメモリアルでSG初出場を果たしていたが、そのときは残念ながら未勝利。今日の2Rは1号艇が回ってきて、絶好のチャンスを迎えていたのだ。というより、師匠は水神祭ができるものと信じ切っていたような話し方だったな。
 しかし残念。惜しくも2着に終わってしまった。道中は前をよく追いかけたが、届かなかった。ピットに戻った彪也は、その端正なマスクを硬直させていた。彼自身も水神祭を想定していたはずなだけに、無念は強かっただろう。丸野一樹の1号艇のときにも書いたが、艇番がいくつであろうとチャンスはある! この109期ふたりの水神祭、ぜひ今節見たいですね。

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 この2Rでは、柳沢一がフライングを切ってしまった。柳沢は現在賞金ランク6位。トライアル2ndからの登場は、他力本願のかたちとなってしまった。7位の石野貴之とは400万弱の差があるから、もちろん逃げ切る可能性は十分にある。そうした状況とは関係なく、やはりFは沈痛である。一足先に戻ってきた柳沢を出迎える東海勢は、声をかけられないでいる。師匠の原田幸哉も、痛々しい顔になっていた。当の柳沢は、硬い苦笑いを浮かべて井口佳典らに話しかけるのだが、井口は柳沢以上に暗い顔つきで短く答えるのみだった。

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 ほかの5人が戻ってくると、柳沢は全員にお詫びをして回っていた。Fの痛みは全員が知っている。だから、柳沢に対してはむしろ気遣う様子もあったし、同期の萩原秀人はやはり柳沢以上に苦しい表情を見せたりもしていた。

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 平本真之は、お詫びに来た柳沢に対しては「すみませんでした」と声をかけていた。柳沢を自分が連れて行ってしまった、という感覚だろうか。もちろん柳沢は首を横に振って、平本に対しても頭を下げる。同支部の後輩であろうと、Fで迷惑をかけたという感覚はあるのだろう。後輩の平本としては、結果として1着となっているだけに、やはり複雑な思いがあっても不思議ではない。それを察してか、同期の魚谷香織が平本を慰めるように何度もうなずいてみせていた。平本は柳沢の分まで頑張れ!

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 1Rの女子戦では愛知支部が痛恨。大瀧明日香が1号艇を生かせずに敗れてしまった。昨日までオール6着だった大瀧は、オーメンロードを脱出することには成功したが(4着)、そんなことが心を癒すものになるわけがない。エンジン吊りの間にも、表情は完全に固まっていて、苦しい胸の内が伝わってきた。現在女子賞金ランク12位の大瀧。逃げ切るためにも、明日以降なんとしても巻き返したいところだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)