BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

平和島クラシックTOPICS 3日目

昭男さんの執念

f:id:boatrace-g-report:20200319181131j:plain

 今日も華やかな女子レーサーの話題から。1Rの守屋美穂は絶好の1号艇を活かせず2着まで。取りこぼしではあるのだが、その走りっぷりにはウムムと唸らせるものがあった。まずは1マークの攻防だ。5コースから伸びなり襲い掛かった大峯を敢然とブロック。「絶対にまくらせない!」という強い意志を感じさせるこの飛びつきが、2着=8点につながった。生半可な握りマイだったら引き波にハマッて惨敗したことだろう。
 2番手に残したバック直線は、濱野谷憲吾との一騎打ち。内の憲吾に対して半艇身ほどリードしていた守屋は、2マークで1ミリの迷いもない全速ツケマイを選択。憲吾が艇を合わせようと落とした瞬間に握ったそれは、圧倒的な迫力で2着を決定づけた。いや、2着どころかその後も先頭の守田俊介を追い回す追い回す! 最大5艇身差から一時は2艇身までにじり寄った勢いは、天才・俊介を大いに慌てさせた。
「いやぁ、①が追っかけてきて、ちょっとミスしたら抜かれるんちゃうかなぁ思いました」

f:id:boatrace-g-report:20200319181221j:plain

 もちろん、それに見合うだけの機力も備えているのだろうが、SGという舞台で彼女の「気力」を余すところなくレバー&ハンドルに反映している部分を高く評価したい。この2着でギリギリ準優勝負駆けの可能性を残した守屋。ボーダー6・00とするなら、明日は5R6号艇でメイチ①着条件! あまりにも険しいハードルだが、無欲無心の攻めでモニター観戦するファンを驚かせるようなレースに期待したい。

f:id:boatrace-g-report:20200319181250j:plain

 さてさて、今日のヒーローを世代別に3人ピックアップしよう。20代からは「ブラックパンサー」永井彪也。10R2号艇の彪也は、江口晃生と石野貴之の前付けを入れて4カド選択。スリットから伸びなり飛び出ると、すぐには絞めずに内の動向をしっかり探りながら空いたスペースにズバッと舳先を突き刺した。最年少の27歳らしい果敢な絞めまくりも観たかったところだが、結果オーライと言うべきか。黒彪の如きスピード旋回で、初日から2131着とオール3連対を継続させた。暫定2位で迎える明日は、5R4号艇&12R6号艇の一大正念場。ここでも舟券に絡み続けるようなら、準優1号艇も見えてくる。何度か書いたが、ヤングダービー制覇から心技ともに逞しく成長した今なら、この高い壁を克服しても不思議じゃない、と思っている。

f:id:boatrace-g-report:20200319181317j:plain

 30代からは、もちろん稲ダッシュ!! 昨日まで311着で3連勝&予選暫定トップが懸かった今日は6R3号艇の一発勝負。④桐生順平の変則前付けを横目に4カドを選択した稲田浩二は、コンマ09から伸びなりカド受けの池田浩二(コンマ18)を叩き潰した。
「浩二は浩二でも、イナダ浩二だーーーっ!!」
 という雄叫びが轟くような絞めまくり一閃。委細構わずインの中岡正彦まで一気に呑み込み、ターン出口で3連勝を確定させた。強いホーム追い風が吹き荒れた今日の平和島で唯一のまくり決着。『イナダッシュ』の愛称は伊達ではない。

f:id:boatrace-g-report:20200319181346j:plain

 稲田25号機については、シリーズ前から我が盟友の三島敬一郎が「ペラが良いのか出足・行き足とスムーズで上位級」と評価。初日の2走を観た私も、その時点で出足・回り足は節イチ級のひとつと判断した。今日は多分にスタート勝ちの面もあったが、スリット足も水準以上。細かく採点するなら【出S・行S・伸A】という感じか。
 4戦36点で予選突破はもちろん、準優好枠も“当確”と思われる稲田。明日の7R2号艇と11R6号艇を上位着でまとめれば、予選トップの座も維持できるだろう。ならば、求めるべきパワーは伸び足にあらず。節イチ級の出足~行き足を十二分に活かせるステージが待っている。これまで5度のSGは【3連続予選落ち→2連続準優6着】と不完全燃焼だった35歳が、どこまで高く突き抜けるのか。25号機のゴキゲンな足色とともに見守っていくとしよう。

f:id:boatrace-g-report:20200319181410j:plain

 そしてそして、40代からは琵琶湖の古豪・吉川昭男! うっかりモーター抽選で超伸び型の15号機を引き当てた昭男さんは、初日からこのやんちゃな相棒との交際に手を焼いていた。名人世代の捌き巧者にとって、超伸び――るモーターは猫に小判。「伸びがかなり落ちてでも、手前に寄せたい」と調整してきたようだ。
 だがしかし、遊んでばかりのヤンキーがいきなり生徒会長になれるはずもなし(笑)。昨日の見せ場すらない6・6着を目の当たりにした私は、正直「昭男さん、相性の悪いパートナーに振り回されて、迷路に入り込んだな。もう出られないかも?」などとかなり悲観的な思いを抱いていたものだ。

f:id:boatrace-g-report:20200319181438j:plain

 そして今日の9Rだ。6号艇の吉川元浩ばかり見ていた私は、もうひとりの吉川に胸ぐらを掴まれる。絶品の2コース差し!! ホーム追い風の利があったとは言え、1マークをくるり小回りしてからギュンギュン唸るように加速する出足~行き足は、もはや過去の15号機とは別人。わずか1日で、昭男さんはこのじゃじゃ馬を従順なペットへと手なずけたのだ。恐れ入りました><
「今回が最後のSGのつもりで戦ってます」
 ぴったり10年ぶりのクラシックで2勝を上げた47歳は、2度の勝利者インタビューで同じセリフを吐露した。1年前の地元GⅡ制覇で得た千載一遇のチャンス。その執念が、おそらく15号機の心にも響いたのだろう。1661着というド派手な成績で迎える明日は、6R5号艇の②着勝負駆け。生まれ変わった相棒とともに内へと潜り込むのはほぼ間違いなく、手前の足が確かならば十分に予選突破も可能だ。「ラストチャンス」の思いとともに、悔いのないレースを魅せていただきたい。

今日の元浩13号機
日々良化!

f:id:boatrace-g-report:20200319181509j:plain

 前出・昭男さんが執念の2コース差しを決めた10R、元浩13号機は5コースから全速でまくるもイン磯部誠には届かず3着止まり。初日からアタマ決め撃ちの私の舟券は今日も紙屑となった。
 だけんどもしかし、初日より昨日、昨日より今日、13号機は徐々に本来のパワーを見せはじめている。スリットからの行き足は初日から変わらずトップ級だと思ってるし、ターン回りの不安は完全に払拭されたし、そこから押して行くレース足は日増しにアップしている(←あくまで13号フェチの個人的な感想です、はい)。

f:id:boatrace-g-report:20200319181534j:plain

 明日の元浩は4R4号艇と12R1号艇。ボーダー6・00想定で③④着の勝負駆けだが、もちろん私の視線はそんな底辺を向いていない。
「ピンピン連勝でどこまでランクを上げるか、いや上がり過ぎると準優は旨味がないか、でもでも今までの負け分を明日の4号艇でガッポリ取り返したいし、やっぱ連勝してもらおう」
 などとヨコシマな皮算用ばかりが脳内を巡っている。ゴルゴパワーのお祭りは、これからが本番だ。(photos/シギー中尾、text/畠山)