BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――強風のなかの奮闘

f:id:boatrace-g-report:20200422174323j:plain

 一日通して、強い向かい風が吹き、安定板装着でレースが行なわれた2日目。11Rでは3周2マークで渡邊伸太郎が転覆。ホーム向かい風ということはバック追い風、2マークは強風に後ろから押されるので非常に乗りにくい水面になっている。ここでの転覆がこの1件で済んだのだから、百戦錬磨の技術はさすが。なお、渡邊はアゴを打ったようだが、自力でレスキューを降りている。明日の巻き返しに期待します!

f:id:boatrace-g-report:20200422174419j:plain

 10R、特に風速が強くなっていて、水面も荒れ荒れ。3コースまくりで先頭に立った徳増秀樹が、大事に大事に落として回った3周2マークで今村豊に追いつかれ、あわや大逆転負けを喫するところだった、というシーンが生まれている。このレースは1周2マークで3番手の角谷健吾がもたつき、三嶌誠司に逆転されるという場面もあったほどだが、先頭を走っていれば、最後のターンマークはきっちりかっちり回りたいのはよくわかる。しかしこのときはそれがかえって仇となりかねなかったのだ。

f:id:boatrace-g-report:20200422174445j:plain

 レース後、並んで戻ってくる徳増と今村。二人ともヘルメットの奥には苦笑いが浮かぶ。風の強さの影響があったのはこのときばかりではなく、スタートも難しかったようで、今村は何度も「風が」「風が」と繰り返していた。徳増は「水面が悪すぎ」と何度か返しており、この悪環境のなか、ナイスファイトとしか言いようがない。徳増は冷や汗をかいただろうが、しのぎ切ったのだから万事OKだ。

f:id:boatrace-g-report:20200422174522j:plain

 で、風とはまったく関係ないハプニングがレース後に。3着だった三嶌誠司がカポック脱ぎ場に入っていこうとしたとき、その手前に置いてあるごみ箱を蹴飛ばして倒してしまったのだ。速攻で気づいたのが今村で、素早く動いて処理。写真がその瞬間であります。三嶌、恐縮してました(笑)。まあ、ごみ箱蹴倒すくらい、どうってことないっす。

f:id:boatrace-g-report:20200422174600j:plain

 9Rは濱野谷憲吾が2コースまくりで快勝。スリットがぐいっと出ていってのまくりだった。インの川﨑智幸が放った分、出ていったようだ。まあ、スタ展では2コースだった川﨑、本番は石川真二がそれほど飛ばずにイン主張となって、それでこの向かい風の強さ、スタートは難しかったはずだ。逆に、石川の前付けに突っ張って2コース主張からのまくり、濱野谷は気持ちよかっただろう。ということで、レース後はかなりゴキゲンの様子。取材場所にやってきて報道陣の質問に応える際も終始、笑顔なのであった。

f:id:boatrace-g-report:20200422174646j:plain

 11Rは上平真二がイン逃げ快勝。ほぼ1艇身のトップスタートからきっちり逃げた。基本的にレース後は淡々としている上平だが、西島義則から祝福を受けて、笑顔がはじけた! こういう、けっこうレアに思える場面に出会えると、こっちもなんか嬉しくなりますね。もっとも、現在ではユーチューバーとしても知られる上平、本来は楽しいお人柄でもあります。JLCの勝利者インタビューで恒例の「カメラサイン」には、オリジナルのカメラスタンプなるものを持参。ちゃんと用意して津にやってきているあたり、お茶目でありますな。

f:id:boatrace-g-report:20200422174716j:plain

f:id:boatrace-g-report:20200422174736j:plain

 対照的に、2着の深井利寿、3着の太田和美がうつむき加減で戻ってきたことも印象に残った。荒れ水面のなか、しっかり展開を突いて、道中も乗りこなしての2着3着は上々にも思えるのだが、本人たちはそう捉えてはいないのだろう。気象や水面がどうあれ、負ければ悔しい勝負師たち。ベテランだからといって負けの味に慣れることなどないからこそ、この場に立っていられるのだろう。

f:id:boatrace-g-report:20200422174814j:plain

 9R4着の松井繁のレース後の動きもそういうことだろう。すぐさま本体を触っているのだ。初日にセット交換、キャリアボデー交換を2回、ギアケースも交換、今日もキャブレター交換をしている。それでもまだ、整備の手を緩めない。それもレース後すぐに、なのだ。結果が出ない苛立ちや、ここで諦めるわけにはいかないという執念が、王者を突き動かす。松井の動きにはいつでも感じるものは多いのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)