BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――早い快癒を祈る!

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 11R、2周1マークで井口佳典と丸野一樹が3番手争いでもつれた。まず井口が水面に放り出され、次いで丸野も落水。ともに落水のかたちであったが、丸野は妨害失格を宣告される。とにもかくにもヒヤリとする瞬間で、事故はどんな状況でも肝が縮み上がる。
 ピットにはもちろん緊張感が走り、東海や近畿勢が急ぎリフトへと走っていった。やがて、井口が担架に乗せられたまま戻ってきた。リフトへの入口あたりにいた松井繁が深刻な表情を井口に向け、井口のグローブを外しにかかった。そのまま、東海勢とともに医務室へ。重苦しい空気が周囲に漂った。

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 さらに、丸野までもが担架に乗せられて医務室へと向かった。そりゃあ事故は付き物で、取材をしてればゴマンと見てきているが、担架に乗る選手の姿にはどうしたって胸が締め付けられる。その時点で無事というわけにはいかないわけで、どうか大きなケガではなく済んでほしいと祈るしかない。

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 先に医務室を出たのは丸野で、同期の大上卓人に肩を借りて足を引きずりながら控室へと向かった。ピットにいた選手に声をかけられ、気を遣わせまいと笑みを返そうとするのだが、それがかえって痛々しい。井口はさらに手当てを受けているのか、なかなか医務室から出てこない。同じレースを走った白井英治が着替えもそこそこに医務室へと入っていったが、ほんの数十秒で出てきており、それが大きなケガではなかったことの証しと、僕は思い込もうとしているのだった。
 結局、井口と丸野は途中帰郷となってしまった。理由はともに「負傷」としか書かれていないので、それ以上のことは現時点ではわからないが、一日も早い快癒を願う。二人とも1カ月後のメモリアルに参戦予定、元気に下関で再会できることを信じる!

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 事故を負った2人を気遣いつつも、勝者は勝者で笑顔を見せるのも勝負の現場。5カドから一撃を決めた枝尾賢は、ピットで出迎えた仲間がとにかくニッコニコで、それは気持ちいい勝ち方に沸いたからにほかならず、それを受けて枝尾自身も相好を崩すのであった。それにしても、前検のコメントであれだけ泣いていた枝尾が、大きな整備を施してオール3連対。アウト筋から1着を獲ってもいるのだから、その化けっぷりは見事と言うしかない。今節ラッシュとなっている本体整備、それが素晴らしく当たった一人として、枝尾は予選後半もさらに乗りに乗ってくるだろう。

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 逆に、という言い方が合っているかどうかはわからないが、前検、昨日のドリームと高気配を見せた峰竜太が、得意の2コースで6着大敗となるのだから、ボートレースは奥が深い。1マークでは引き波に乗ってズルリと滑った感じで、峰らしくない負け方と見えた。ピットに戻った峰は、悔しがるとか、苦笑いを見せるとかではなく、ごくごく普通の振る舞い。特に何事もなく帰ってきました、と平静を装っているようにも見えて、それがかえって峰の心中の複雑さをあらわしているように思えた。どちらかというと負の要素をもつ、いろんな感情がないまぜになって、無意識に悔しさを隠してしまっているというか。明日はどう立て直してくるかに注目しよう。

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 終盤の時間帯に立て直しに必死だったのは菊地孝平で、本体整備に取り掛かっていた。菊地も整備ラッシュの波に乗ったというか。菊地も前検ではそこまで悪い手応えではなかったはずなのに、レースが始まってみればいまひとつ冴えない展開。予選を折り返したところで、相棒にひとつ喝を入れて、後半に臨もうということだろう。

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 井口を気遣っていた松井繁も、遅くまで調整作業を続けた一人だ。鳴門宿舎はピットに隣接しているが、他の場と同じように、帰宿には1便、2便とある。昨日は9R発売中に1便が出ていて、10、11、全レース終了後と4便編成だったようだ。松井は8Rでレースを終えていたので、早く帰ったってかまわないわけだが、それを良しとしなかった。“支部新兵”の木下翔太は10R終了後に帰宿しているのに、王者はさらに残ったのだ。時に見せるこうした執念には、いつだって感服させられるというものだ。

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 大阪支部では石野貴之も最後までプロペラ調整に励んでいる。今日は3コースからのまくり一発で快勝したが、まだまだ満足していないということだろう。今日も夏の陽気だったが、選手たちは汗だくでパワーアップをはかる。明日から巷は4連休だが、選手たちは休むことなく働き続ける!(黒須田)