BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――調整とは

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 後半のレースを終えた原田幸哉は、整備室に入っている。今日は前半レースでセット交換を施して出走。結果は5着、3着。前半は事故艇があってのものだが、1周2マークでは最内から先マイに持ち込んでおり、また後半は逆転の3着と、進境は見えたかのようにも思えていた。それでも、「戦える」程度では満足しているわけにはいかない地元SG。さらなる上積みをと、もういちど整備室に入ったわけだ。もともとは愛知支部の原田、ざっくりとした感覚だが、かつての蒲郡や常滑のビッグ以上に、支部移籍後の大村SGでは気迫満点のように見える。移籍してきたからむしろ、地元意識が強くなっているということだろうか。

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 整備室には徳増秀樹の姿も見えた。10Rは枠番通りの4着。初日も2号艇2着、6号艇5着と、ほぼ枠番通り。明日は5号艇だが、勝負駆けを見据えれば、ここは枠番通りというわけにはいくまい。大きな整備をしている様子は、遠目にも見えなかったが、わずかな時間であっても、できることはやろうという姿勢であろう。

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 12Rの毒島誠は、今日もギリペラ。出走の1つ前のレース、今日なら11Rの発売中となるわけだが、毒島がペラ室から駆け出るのを見るのはすっかり楽しみとなった。何度も書いているように、展示ピットにボートをつけなければならない制限時間のギリギリまで、プロペラ調整をしてレースに向かうのが毒島スタイルなのだ。

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 ところが、今日は毒島以上のギリペラがいた。上野真之介だ。毒島が係留所でプロペラを装着していたころに、上野はペラ室を飛び出た。そして大急ぎで展示の準備。ここまでの絶好調ロードは昨日途切れてしまったが、こうした姿勢がいい波に乗れた要因かも。12Rは6着大敗と、苦しい戦いは続くが、そのとことんやり尽くそうという思いが尊い。

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 調整といえば、菊地孝平が10R発売中、すでに外していたモーターをボートに装着している。えっ、この時間帯から試運転に出ようというの? 通りかかった松井繁も訝しく思ったようで、「これから乗るのか?」と問いかけている。菊地は「いや」と発して、ハンドルをグルグル回す仕草を見せた。どうやらハンドル(とモーターをつなぐワイヤー)の調整を始めるらしかった。

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 装着し、操縦席に乗り込んだ菊地は、ハンドルのあたりをいじり始める(カウルの死角になっていたので、具体的な作業は不明)。さらに、ワイヤーのあたりもドライバーなどの工具で調整し、ハンドルを何度か回したりもしていた。モーターの気配というより、操縦性に違和感があったのだろう。レース後にこうした作業を見かけるのはなかなかないことで、かなりレアな光景であった。モーターやペラ以外でも、やれることはいろいろあるのである。(追記:菊地はレース後にボート交換をしていました! 新しいボートとモーターのセッティングの調整をしていたのかもしれません。ピットにいると、なかなかボート交換等の情報がすぐには伝わってこないのでありました。すみません!

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 そうした調整とはまた違うが、ボート磨きもそれをルーティンとしている選手にとっては(今垣光太郎とか)大事な作業である。相棒を慈しむのは悪いことのわけがないし、その時間はメンタルを落ち着けたり、あるいは思索に耽ったり、どちらかといえば内面の調整につながるのではないかと僕はにらんでいる。今日は篠崎仁志がレース後にじっくりとボートを磨いた。9R、虎の子の1号艇で2着に敗れ、レース後はやや脱力感を醸し出していた仁志。そりゃあ1着を計算していたはずだから、気持ちは落ちる。その整理を、ボートを丹念に磨くことで均そうとしていた、と言ったら穿ちすぎ? ともかく、気持ちをしっかりと切り替えて、予選後半に進んでほしい。(黒須田)