BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト&優勝戦メンバー

最後の東男、散る。

9R 並び順
①久田敏之(群馬) 10
④平本真之(愛知) 15
⑥吉川元浩(兵庫) 16
⑤上平真二(広島) 25
②村田修次(東京) 12
③上野真之介(佐賀)12

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 大波乱を予感させる待機行動ではあった。ピット離れで出遅れた上平が大回りで真っ先に舳先をスタート方向に転換。それに気づいた久田、平本、吉川が慌ててその内に潜り込み、スロー4艇は窮屈かつ深い進入を強いられた。
 この混乱を尻目に、好枠を捨てて潔くダッシュを選択したのが村田と上野だ。村田74号機の足はトップ級だし、昨日も同じような展開からまくりきってるし、村田◎の私はそぞろ脳汁を垂らしてしまった。

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 内4艇は横並びで80mあたりまで流されてからの急発進。ダッシュ勢が圧倒的に有利なレース展開だ。さらに、スリット隊形は↑御覧の通り。脳汁を噴き出しながら私はその後の展開を見守ったが、5カドのムラッシュは凹んでいる上平すら絞め込まずにしばらく直進してからやんわりと舳先を左に傾けた。昨日とは別人のような待機策。スタート直前に放って伸び足に自信がなかったか、上平の向こうに吉川がはっきり見えたので自重したか、準優=2着条件ということで慎重かつ安全な戦術を選んだのか。

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 ダッシュまくりの危機を脱したスロー勢はそれなりに臨戦態勢を整え、インの久田が1マークを先取り、2コース平本が小回りで追走。そこにやっと遠回りでまくり差した村田が2番手争いに参入したが、接戦の末に地元・平本の後塵を拝する結果となった。もちろん、SG準優という大舞台にはそれぞれの選手ならではの実戦心理が交錯するわけだが、それにしても惜しい3着だった。私個人としては、あのスリットから村田が絞めまくったらどんなレース&結果が生じたのか、できればソッチ側のパラレルワールドに酔いしれたかったなぁ。村田が敗れた瞬間、「今年の平和島GPに地元選手ゼロ」という悲しい事態が確定した。寂しい限りだ。
 1着・久田、2着・平本。

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 久田68号機は3日目の2・4コースでの連勝を見る通り、スリット付近の行き足を主体に高いバランスを誇るトップ級のひとつ。スロー起こしからでもスリット付近で力強く出て行くタイプなので、もちろん明日の2号艇でも実に怖い存在と言えるだろう。

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 平本73号機は日(または昼晩)によってややムラがあって掴みにくいのだが、今日は上位に準じるしっかりとした実戦足だったと思う。ただ、道中のパワー比較では村田に分のある接戦にも見えた。5号艇の明日はどの部分の足を強化してくるか。柔軟性のありそうなモーターだけに、その気配をしっかりと把握したい。

危険なナイフ

10R 並び順
①毒島 誠(群馬)14
②桐生順平(埼玉)11
③岡崎恭裕(福岡)07
④丸野一樹(滋賀)09
⑥馬場貴也(滋賀)07
⑤杉山正樹(愛知)07

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 このレースも並びに変化があったが、チルトを跳ねて伸び型に特化(展示タイム6・65!)した杉山と馬場がすんなりの入れ替わり。前付けとは違うためスロー勢もゆっくりと艇を流して9Rとは別物の穏やかな待機行動だ。

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 いざ実戦、アウトから杉山がどんだけ出て行くかと見ていたが、馬場を超えるほどの勢いはない。それよりもスリットで目を惹いたのは、やはり今節ではトップ級の直線足を誇る3コースの岡崎だった。スリットではわずかに覗いた程度から、ずんずんずんずん1マークに近づくにつれてさらに加速していくムード。その勢いに圧迫された桐生がそれでもブロックしながら小回りの差しで応戦したが、伸びなり奔放に1マークを握りまわった岡崎が軽々と2番手を確保した。

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 バックでその岡崎の3艇身先を突っ走っていたのが毒島だった。今日もまったく危なげのないイン逃げ。スタートではやや後手を踏み、さらに岡崎に伸びられる展開にも関わらず、まったく焦ることなく完璧なインモンキーで影すら踏ませぬ完勝だった。
 1着・毒島、2着・岡崎。

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 今節も毒島の強さが際立っているが、特筆すべきはエンジン出しだろう。前検の私の見立ては「僅差だけどドリーム組でいちばん劣勢」だった。当時の本人コメントも「班ではちょっと弱そう」とシンクロしていたが、あれから6日が過ぎたいま、おそらく評判の高い峰竜太63号機よりも完成度が高いと思う。パンチ力こそないものの、全体的に弱点の見えないバランス型。いつもの毒島スタイルにも近い仕上がりでもあり、一撃まくられの脅威さえなければ、優勝戦のスローからでも難なく対応できるパワーだと思っている。うん、いつものことながら、ピットでも水面でもこの男は憎らしいほど強い。

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 そしてそして、今節の台風の目・岡崎64号機が見事にファイナルまで生き残った。このモーターの前節は「地元の花田和明が6号艇で優勝」というサプライズをやらかしており(恵まれではあったが)、確かに予選道中でも不気味なレース足を感じさせるムードはあった。ただ、乗り手の性質もあって今節ほど伸びるわけではなかったから、岡崎が自分なりに手なずけて直線足を上積みしたのだろう。今節はこれだけスリット足が強くいのに、ターン回りも水準以上という感じ。今シリーズはほとんどがバランス型のどんぐりパワー相場の中で、このいささか危険な飛び道具が生き残ったのは実に興味深い。明日は全国が毒島鉄板のムードに染まる中、穴党にとっての救世主になってくれるかも?

凸凹デッドヒート

11R 並び順
①稲田浩二(兵庫)12
②篠崎仁志(福岡)09
③新田雄史(三重)14
④原田幸哉(長崎)11
⑥前本泰和(広島)12
⑤西山貴浩(福岡)09

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 このレースも非枠なり進入。前本が前付けに動くと、5号艇の西山が腹を括っての6コース単騎ガマシを選択。12346/5で西山に伸び足があれば脅威となるのだが、スリットからひょいと覗き加減だった後は「伸び、売り切れました」という感じで前本と舳先を揃えた。

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 ダッシュが不発でスロー5艇がほぼ横一線となると、1マークは内から順繰りの逃げ差し合戦。稲田が先マイ(ややターンマークに寄りすぎ&握りすぎだったかも)、仁志が差し、新田がまくり差しという正攻法から、私が期待した新田の割り差しは届かず、バック直線は完全に逃げる稲田vs2コース差し仁志の一騎打ちとなった。

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 仁志の舳先がわずかにめり込んだまま100mほど並走し、2マーク手前でより伸びたのは内の仁志の方だった。初日からずっと課題とされた稲田の伸び足=弱点が露呈した瞬間。ここでもうひと伸びあれば、2マークの稲田は差しても握っても仁志を突き放しただろう。劣勢の稲田は伸びられながら力ずくで2マークを握り倒したが、当然のように外へ外へと流れる。それを横目にくるり小回りした仁志が抜け出し、その後も接戦が続いたものの僅差のリードを守り続けた仁志がファイナルの最終チケットを入手した。
 1着・仁志、2着・稲田。

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 2艇のデッドヒートは迫力満点ではあったが、うがった見方をすれば「決め手に欠くパワー同士だからこその接戦」とも言えるだろう。ふたりのうちのどちらかが村田や久田、岡崎レベルの抜群パワーなら、2マーク前後の攻防であっさりケリが付いたはず、という思いは強い。両者を部分的に鑑定すると、「行き足から伸びは仁志がやや優勢で、回り足~出口の押し足は稲田が強め」で、だからこそ付かず離れずのテイルトゥノーズとなった。それぞれ特徴は違えど、トータル評価としてはふたりともにB+=中堅上位が私の勝手な鑑定である。

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 明日のファイナルでセンター枠に陣取るこのふたりが、どこまでイン毒島を苦しめることができるか。パワー相場的にはいささか厳しい気もするのだが、双方の機力の特徴を踏まえれば「行き足~伸びがやや強い仁志が内で、出足系統しっかりの稲田が外」という並びは逆目よりも攻撃力が高そうではある。(photos/チャーリー池上、text/畠山)

 それぞれに異質な部分で見どころがあった準優3個レースが終わり、優勝戦は以下のメンバーになった。遅ればせながら、最後にその6PITを記しておこう。

12R優勝戦
①毒島 誠(群馬)賞金4位
②久田敏之(群馬)賞金36位
③篠崎仁志(福岡)賞金3位
④稲田浩二(兵庫)賞金32位
⑤岡崎恭裕(福岡)賞金28位
⑥平本真之(愛知)賞金11位