BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――テラショーダントツ、ボーダー混沌

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 上位の選手で得点率を下げる選手が続出して、ボーダー争いは混沌とした。9Rを走る時点では4位にいた桐生順平が6着で得点率を5・83まで落として、しかし結果15位で準優に残ったのが代表的な事象だったと言えようか。桐生は2便で帰宿しているが、どこまで状況を把握していたかはわからない。

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 12Rはそもそも19位以下から浮上する選手の出走がなく、また1号艇の吉川元浩は勝っても19位には届かずといった状況。大敗すれば19位以下に落ちるという選手はいたものの、結果的に他の5人は全員がそのまま準優へ、という、終わってみればまるで勝負駆けに関係ない予選最終レース、というものになったのだった。こんな4日目12R、これまでにあっただろうか。6着に敗れた興津藍は、無事故完走で準優行きだったのだが、この大敗で準優は6号艇。どうやらそれを把握していたらしく、エンジン吊り時にはいったん外した艇番をふたたび装着していた。艇旗は外しもしなかった。そう、12Rは6号艇だったから、このままでいいや、となったわけだ。

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 もっとも、準優に残るのは目標ではありながらも、ひとつのレースには別の思いもある。大きい着を獲ればやはり不本意であり、だから5着の齊藤仁も準優に乗れることはわかっていても(得点率6・00)、悔しさを隠そうとはしなかった。レーサーたるもの、まず敗れれば悔しいのである。その後に、もっといい着を獲れていれば準優の枠も……という思いも沸いたかもしれないけれども。

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 11Rでは毒島誠が4着。得点率6・17だから、準優はセーフ。道中はさらに後ろの着でゴールする可能性もあったから、さすがの捌きとも見えたわけだが、「競り負けたーっ!」と悔しさをあらわにする場面があった。守田俊介との3番手争いのことであろう。ピットに戻ってきた毒島は息も荒く、疲れた様子を見せていたのだが、それは悔恨の表現でもあったということなのだろう。ただ準優に乗れればいい、というわけではないということだ。

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 この11Rでは、岡村慶太が痛恨であった。いったんは3番手を走り、これをキープできれば初SGにして予選突破という壮挙になっていた。ところが、道中揉まれて6着。この結果だけでも相当に悔しいだろうが、準優圏内を転げ落ちたのだからさらに痛恨だ。エンジン吊りを終え、ヘルメットを脱いだ岡村の顔からは脱力感が見え、この敗戦を重く受け取っている様子がうかがえた。

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 明暗分かれることになったのが、同県同期の松田大志郎で、11Rは2着で予選突破。一緒に準優を走れればという思いはあったに違いないが、こうなったら松田は岡村の分まで奮闘しなければならないだろう。その松田には、艇修理の係の方や職員さんたちが次々に声をかけていた。レースはもちろん、練習でも何度も走った水面だろうから、まさに新人のころからお世話になった人たち。松田がSGの予選を突破したことがわがことのように嬉しいのだ。松田はそうした人たちの期待も背負って、明日の準優に臨むのだ。

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 地元からはもう一人、篠崎仁志が準優に残った。いや、残ったという言い方はふさわしくないか。1号艇で準優に乗った。明日からは本格的な地元タイトル獲りへの挑戦である。仁志はレース後、時間をかけて丁寧に丁寧に、ボートを磨いた。操縦席にわずかに残った水分までも。それはまるで、明日からの共闘を前に相棒と会話をするがごとく見えた。その作業が徐々に闘志を高めていくものでもあったと思う。地元勢は結局篠崎と松田のみが予選突破。もちろん地元全体の期待も彼らを後押しするだろう。

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 さて、予選トップは寺田祥。寺田の得点率が8・33、2位の石野貴之が7・00、3位の篠崎仁志で6・83だから、まさにテラショー、ダントツ! ボーダーが混沌としたのも、このぶっちぎりっぷりが無関係ではないだろう。寺田のSG制覇って、初制覇の若松メモリアルにしろ、昨年の下関メモリアルにしろ、いつもこんな感じですね。ということは、完全にVロードに乗っかってるということである。すでに2度もこの状況を経験している寺田だから、レース後はとにかく余裕綽綽。涼しい顔で2便のバスに乗り込んでいる。明日も、逃げ切れば明後日も、震えるようなテラショーがまるで想像できないのだ。寺田を止める選手が出るのかどうか、まずは明日の12Rを楽しみにしたい。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)