『永世・紅白王』誕生。
12R優勝戦
①上田龍星(大阪)00
②田口節子(岡山)14
③吉川貴仁(三重)02
④長嶋万記(静岡)03
⑤三浦永理(静岡)03
⑥片岡大地(東京)F+03
おーーい、吉川タカジン(本当はタカヒトですが)、なんでこの大会はこんなに強いんじゃーーー!!??
こう叫ばずにはいられない最終バトルだった。チルトを0に上げたせいか、スタート展示ではピット離れでドカ遅れをやらかしたが、いざ本番はギリギリ残して枠なりをキープ。
「引くかな、引いてくれよるかな」
「お、こりゃカドじゃろ!」
スタンドの何人かが私の祈りを代弁している。もちろん、少し遅れて吉川◎の私も「引いてくれ!」と叫んだ。
そして、真っ赤なボートの舳先がスタートとは逆方向に翻る。脳汁が一気に噴き出す。とりあえず、予想の重要な第一関門を突破した。突破してくれた。
そして、数秒後のスリット隊形は、↑かくの如き電撃のタイミングに。吉川のコンマ02も半端ないが、インの龍星はキワのキワまで突っ込んでいた。ここ1年ほどセンターまくりが激増している1期下の後輩の怖さを、熟知しているからこそのタッチスタート。
1マークのはるか手前、2コースで凹んだ田口を早々に握り潰した吉川には、ふたつの選択肢があった。
ほぼ同体で伸び返している龍星を勢い任せにまくるか、先マイさせてまくり差すか。
内3艇の隊形を見る限り、後者の方が正解だったかも知れない。さらに「団体戦」の結果を意識するなら、明らかに「まくり差し」が正着だったはずだ。
だがしかし、吉川の選択はより過激な前者だった。スロットルレバーを握りっぱなしで同じ白組の先輩に襲い掛かり、あっという間に引き波にハメていた。昨日も一昨日も接戦で競り負けている相手だったから、「いくら強いパイセンでも、3連続の屈辱は許さん!」という怒りのツケマイだったか(笑)。
バックで先頭に立った吉川は、そこで今大会2度目の優勝をほぼ手中にした。1回目の栄冠は、2019年6月13日のびわこ大会。やはり3カドに引いたもののスタートで後手を踏んで攻めきれず、それでも鋭い差しハンドルで先頭に躍り出た。この大会のみならず、デビューから3年目にして初の優勝でもあった。
嬉しい嬉しい水神祭をプレゼントしてくれたこの特殊な色物シリーズは、吉川の脳内に何かしらの化学反応を引き起こしたのだろう。翌2020年2月の津大会でも優出(3コース3着)、今年に入って2月のとこなめ大会でも優出(2コース6着)、そしてそして、今日は2度目のタイトルを戴冠したわけだ。デビュー通算優勝も、これが2個目という恐ろしいほどの相性の良さ!
いつからか、私と黒須田は吉川を『ミスター団体戦』と呼ぶようになったのだが、「4大会に参戦して4優出2V!!」は、まさに他の追随を許さぬ断トツの活躍であり、金字塔と呼んでも誇張ではないだろう。今節はエース格の宮之原輝紀、3DAYSバトルで大活躍した栗城匠、デビュー期にコンマ10の平均スタートを叩き出した小芦るり華という絢爛豪華な同期も参戦したのだが、栗城が凡機に苦しみ、宮之原が選手責任エンストで脱落し、小芦も不良航法を喰らったりしている中、吉川だけは厳島の神様に守られたようにズンズンとV街道を驀進したわけだ。
嗚呼、どうしてこんなに強いのか……。
颯爽と先頭をひた走る吉川を眺めながら、今日の私もまた「ミスター団体戦」の底知れぬ強さに脱帽するしかなかった。初優勝は3カド差しだったが、今回は文句のつけようのない一撃3カドまくり。この大会とともに、吉川貴仁という男はシン・ゴジラのように第1種~第4種進化形態を遂げているのではないか。そんなことを思ったりもした。
うん、もはや『ミスター団体戦』では物足りないな。
ウイニングランで嬉しそうに両手を振る吉川を見ていたら、急に新たなニックネームが浮かんだ。それが冒頭の『永世・紅白王』なのだが、このセンスはともかく、今後の当大会には絶対的な招待選手として漏れなく参加させるルールを作ってもらいたい。冗談ではなく、吉川タカジンほどこの色物シリーズに貢献している選手は他にいないのだから。
さてさて、6日間48戦で繰り広げられた団体戦は、波乱とともに紅組の優勝となった。
最終結果
紅組35-32白組
そう、優勝戦での片岡大地のフライングが決め手となって、白組の手から優勝がこぼれ落ちた、という感じではあった。が、コンマ03の勇み足に「喝!」を入れつつ、スリットから自力で攻めて「あわや2着か!?」という素晴らしいまくり差しを見せた大地君にも控えめな拍手を送りたい。彼もまた、この大会とともに成長・進化し、「ミスター団体戦」へと昇華する資質があるのではないか。そんなことを思ったラストバトルでもあった。
あ、最後に、私が勝手に採点していたアレを添えておこう。
★団体戦のチーム貢献度ポイント
【レディース】
5日間 最終日 合計 備考
高橋淳美 4点 -1点 3点
寺田千恵 5点 3点 8点
道上千夏 -2点 0点 -2点
水口由紀 -9点 0点 -9点
岩崎芳美 5点 3点 8点 団体戦7走
海野ゆかり 1点 6点 7点 団体戦8走・2日目4R転覆
向井美鈴 6点 0点 6点 初日6Rフライング
田口節子 15点 -2点 13点 団体戦7走
長嶋万記 9点 3点 12点 団体戦8走
三浦永理 17点 2点 19点
大橋栄里佳 1点 2点 3点
落合直子 -3点 2点 -1点
藤崎小百合 3点 6点 9点
原加央理 -4点 -3点 -7点
今井美亜 4点 -5点 -1点 団体戦7走
深尾巴恵 -6点 -5点 -11点 2日目5R不良航法
村上奈穂 9点 -1点 8点 団体戦7走
前田紗希 0点 3点 3点 2日目4R優先艇保護違反
新田有理 1点 0点 1点 団体戦7走
大山千広 2点 1点 3点 団体戦7走
小芦るり華 -1点 -4点 -5点 最終日11R不良航法
實森美祐 2点 -3点 -1点
【ルーキーズ】
5日間 最終日 合計 備考
山下流心 3点 5点 8点 団体戦7走
鈴谷一平 5点 3点 8点 団体戦7走
上田龍星 12点 -2点 10点 団体戦7走
中村泰平 8点 -2点 6点 団体戦7走・3日目3R妨害失格
片岡大地 6点 -1点 5点 優勝戦フライング
吉川貴仁 13点 2点 15点 団体戦7走
栗城 匠 7点 1点 8点
宮之原輝紀 11点 1点 12点 団体戦8走・4日目6R責任エンスト
上村宏太 -7点 1点 -6点 団体戦7走
井上忠政 8点 2点 10点 団体戦7走
田川大貴 -15点 0点 -15点 団体戦7走
宗行治哉 10点 -5点 5点
河野主樹 0点 3点 3点 団体戦8走
宇留田翔平 1点 -3点 -2点
高木圭大 1点 -5点 -4点
梶山涼斗 3点 0点 3点
高橋竜矢 -1点 1点 0点 4日目8R責任転覆
宮田龍馬 1点 0点 1点
荒牧凪沙 -2点 -1点 -3点 4日目10R責任転覆
畑田汰一 9点 4点 13点 団体戦6走
滝沢 崚 -4点 4点 0点
※特記事項のない選手はすべて団体戦6走
はい、優勝した紅組で断トツの19点を叩き出した三浦永理を、このルールでのMVPに認定したい。ちなみに白組のトップはやっぱり吉川貴仁で、個人優勝のみならず団体戦でも大いに貢献したことが見て取れる。で、いわゆるA級戦犯=最低得点は、ちょっとここに特筆するのもなんなので、皆さんで勝手にご覧くださいまし(笑)。
(photos/チャーリー池上、text/畠山)