BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――いざ、優勝戦へ

9R 爽快!

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 3コースからまくり一撃。おそらく狙った通りのショットで、菊地孝平は準優を突破した。リフトでせり上がる途中でヘルメットを脱ぐと、あらわれたのは爽快な笑顔! してやったり、といった雰囲気で、まさしく会心の勝利だったわけだ。
 同じレースに徳増秀樹がおり、いったん2番手ながら後退するかたちになったということもあって、深谷知博や東海勢も手放しで菊地を称えるというわけにはいかなかった。徳増自身は苦笑い交じりではあったものの、サバサバしているように見えたが、まあ先輩に対する配慮はあって当然ではある。でも他地区なら関係ないですよね。菊地を太田和美が称える場面があったりした。大阪支部は上田龍星が健闘も実らず3着なのだが、これをいい経験と捉えるなら、勝った菊地を称えるのも形を変えたアドバイスになりうる。太田の言葉に菊地はやはり爽快な笑顔!

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 菊地以上に爽快に目を細めていたのは秋山直之! 秋山らしい道中逆転の2着で、レースぶりも実に爽快。これが約10年ぶり3回目のSG優出で、そりゃもう笑みがこぼれまくって当然である。
 さらに、山崎智也が笑顔で祝福! 先輩のスマイルは、秋山にも大きな癒しになっただろう。つづいて毒島誠も! そして松本晶恵も! 次々と群馬支部勢が秋山に歩み寄って、ひたすら優出を称えるのだった。もうひとり、同期の坂口周も! 坂口とは二人で拍手をしあっておどける、なんてシーンもあった。同じ釜の飯を食った間柄だから、喜びを分かち合う時間もやはり長くなるのだった。それにしても、秋山は調整もひとり黙々と進めるタイプという印象で、群馬勢にしろ同期勢にしろ、そこまで濃密な絡みはあまり見られないのである。それが、見事な優出を決めると仲間たちが嬉しそうに絡んできて、秋山もとびきりの笑顔を返していた。素敵なシーンだ!(その後には森高一真との絡みも。初めて見たぞ) 明日も秋山は、仲間たちの熱い視線を背中に、もちろん投票してくれたファンの思いも胸に、全力全速で駆ける!

10R 完勝

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 原田幸哉の前付けもあったけれども、外を寄せ付けずに逃げ切り快勝。いや、完勝と言っていい、見事な勝利であった。白井英治だ。
 もちろん勝って当然などということはないのだが、しかしピットにあがってきた白井はなんとも悠然たる様子。その堂々とした振る舞いを見ていると、勝って当然の一番だったか……と溜め息が出ようというものなのだ。強い!
 実際は、原田の前付けは想定していなかったそうで(レース間のスタート練習では原田は2本とも6コースだったのだ)、スタートに関しても踏み込まねばならないし、でも不安だし、といった心の揺らぎはあったようだ。それでも圧逃劇を見せ、揺るぎない態度で戻ってきたのだから、やっぱり強い! 白井の強さはほんと、相当な高いレベルにあると言うしかない。

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 2着は佐藤翼だ。昨年のダービーに続くSG優出。佐藤を出迎えたのはもちろん関東勢(というか群馬勢)だが(同支部の桐生順平は11R出走のためその場に不在)、もう一人、同期の磯部誠も嬉しそうにエンジン吊りに加わった。このレースは東海勢不在だったから、やはり同期のヘルプに参加したわけだ。笑顔の磯部は佐藤のボディにパンチ! 手荒い祝福というやつだ。佐藤も思わず笑顔が浮かぶ。気持ちのいいパンチだっただろう。
 同期といえば、近況伸び仕様で一般戦を賑わしている菅章哉がいる。今節、菅の未使用のゲージをもらってきて、それで叩いてみたという。しかし、やはり菅のようには仕上げられなかった。その調整に関しては菅がスペシャリストということだ。今節は、その形状から元に戻すのに難渋したとか(だから明日も伸び仕様にはしないとのこと)。それでも好気配を見せて優出まで来たのだから、乗れてる! 優勝戦も侮れない存在だ。

11R お疲れさま

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 西山貴浩の若松オールスターが終わった。いや、明日も2走を残しているが、てっぺん獲りは終わった……。
 レース前、「もう二度と優勝乗れんでいいけん、ここだけは乗せてほしい……」と呟いていた西山。もう二度と乗れんのはこっちとしては困るわけだが、それくらいの思いを込めて準優に向かったのである。しかし、その思いは実らなかった。息を荒く、呆然とした顔で戻ってきた西山。もしかしたら、これまでの敗戦のなかで最も重たいものだったかもしれない。
 肩を落とす西山にまず寄り添ったのは篠崎仁志だ。仁志も西山の思いを骨の髄から知り尽くしている。そして今、どんな思いでいるかも。特に言葉を交わしたということもなかったけれども、そこで肩を並べたことが大切だったのかも。
 ともかく、あれだけ劣勢のモーターでよく奮闘したぞ、西山貴浩。それはもう、本当に心の戦いだったと思う。今日はゆっくり眠れるか、それとも悔しさでさらに眠れないか。いずれにしても、今日という日を胸に刻んで、また明日いつものおどけた西山貴浩の姿を見せてもらいたい。というか、残り2走で意地を見せろ!

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 深川真二の前付け、あるいは松井繁の前付けは誰も譲らず、進入は枠なりオールスローとなったわけだが、その抵抗が奏功したかたちと言えるのは桐生順平だろう。瓜生正義の攻めにしっかりと乗って差して2番手追走。松井の追撃もきっちりと振り切った。佐藤翼と埼玉ダブル優出! まずはやはり出迎えた佐藤と笑顔を交わして、明日の健闘を誓い合う。その後はわりと淡々としていたように見えて、これはまあ桐生らしさではある。明日の優勝は佐藤と4枠5枠で並ぶわけだが、宿舎では想定される展開などを話し合うことになるのだろうか。
 勝ったのは峰竜太だ。深めの進入は想定済だっただろう。集中して1艇身のスタートを決め、逃げ切ってみせた。さあ、優勝戦1号艇!

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 その峰とは、記者会見が終わったあとに、たまたますれ違った(『週刊BOATBoy』の準備で会見には出られなかったのだ)。さぞ喜んでいる、もしくは早くも緊張気味、と想像していたのだが、峰は思いのほか渋い表情を見せた。そして一言。「しんどい……」。ファン投票5年連続1位。予選トップ。準優1号艇。優勝戦も1号艇。昨年の圧倒的な強さで今やボートレースの顔となった。多くの人が期待をかける。注目する。峰竜太は今、さまざまな荷物を背負って、それは自分の責務だと覚悟を決めて、この舞台に立っている。しんどい、それは本音中の本音であろう。そして、そのしんどさと真っ向から向き合ってもいる。これが峰竜太の戦いだと、腹を据えている。
 明日も同じようにさまざまな圧を感じながら、峰は白いカポックを着る。あの朗らかすぎる「アロハ~」の裏には、いろいろな思いが詰まっているのだ。うん、勝ったら10000%泣くでしょうな、明日の峰竜太は(笑)。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)