BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

もっと強くなれ!

12R優勝戦
①峰 竜太(佐賀)07
②白井英治(山口)08
③菊地孝平(静岡)06
④佐藤 翼(埼玉)11
⑤桐生順平(埼玉)11
⑥秋山直之(群馬)17

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 強い強い峰が、怖い怖い菊地のスタート攻勢を受け止めてしっかり逃げきった。
 ここ2日ほど何度も書いてきたが、この最終バトルのキーマンは菊地14号機だった。節イチのストレート足と艇界随一のスタート力を誇る人機が、どこまで大本命の峰を脅かすことができるか。
 準優のコンマ05に続いて、今日も菊地は行った。直前で少しだけ放ったようにも見えたが、SG優勝戦としては限界MAXのコンマ06! だが、内2艇も負けてはいない。過不足のない正確な起こしから、「菊地を越えたらF警報」という不文律を遵守するようなコンマ07&08発進でスリットは横一線。さすが、と呆れるしかない。

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 ただ、スリットからじりじり出て行ったのは、やはり菊地だった。特に2コース白井との行き足は「ケタチ」で、1マークまでにほぼ1艇身近く突出したはずだ。一方、インの峰はしっかり伸び返し、菊地には劣るものの一撃まくりの余地を与えないほどの余力をもって1マークに向かう。
 中凹みの隊形も含めて、菊地の選択肢はまくり差ししかなかった。峰を先に回しながら、白井にツケマイを浴びせるような乾坤一擲のまくり差し。その初動のタイミングと入射角は見事で、並みのイン選手が相手なら軽々突き抜けていただろう。

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 だがしかし、今日のインコースは峰だった。菊地のターンを鋭角と呼ぶなら、峰のモンキーターンは超鋭角な放物線を描いて180度反転した。鮮やかだった菊地のまくり差しは、その超鋭角放物線に引っ掛かる形で失速し、進むべき花道を失った。菊地にとっては相手が悪かった、としか言いようがない。

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 後続艇がもつれたこともあって、ターンの出口で峰は独走状態となった。もっとも獲りたかったタイトルを、スタート勝負と一発の異次元ターンでブッコ抜いた。ファン投票1位~ドリーム戦完勝~予選トップ通過~逃げ・逃げで優勝。予選道中では後続に抜かれるなど盤石のレース運びではなかったが、こうして要所要所を抜き取ればひとつたりとも落ち度のないパーフェクト優勝とも言えるだろう。
 うん、もう勝者について書くべきことはない。ドリーム戦も準優もファイナルもすべて無印にした私には、語るべき資格もない。ただ、ひとつだけ書くなら、強い強い峰竜太には、もっともっともっと強いレーサーになってほしい。チビッ子のみならず、老若男女にもっともっと愛される最強のヒーロー怪獣に君臨してほしい。全国のファンの軍資金をスポンジのごとく吸収してほしい。そして私は、そんな国士無双のスーパースターを、あれこれ難癖をつけながらアタマ舟券の対象からはずし続けるだろう。

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 今節は、伸びるセンター選手がインを叩き潰し、外から連動した選手とのシンプルなセットで大穴が頻発した。その間接的な背景には、「伸びない伸びないと言われ続けた新型モーターを、驚くほど伸び型に特化できる選手が多々出現している」という時流が関与している、と私は思っている。菅章哉や藤山翔大、下出卓矢、高田ひかるetcのペラ調整は、全国24場のどのエースモーターよりもスリットから伸びてゆく。今節は彼らが参戦したわけではないが、それらの特殊なペラ調整やペラゲージが巡り巡って何人かのSG常連のスリット足に大なり小なり影響を与えはじめている。

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 今日の菊地14号機はモーター本体の素性に拠る部分が大きいが、それでも峰や白井をギリギリまで追いつめるほどの脅威を与えた。今後も、スリットから伸び――る選手(モーター)が、インで絶対人気の峰に襲い掛かるケースは何度も発生するだろう。そして、結果によってはSGファイナルで10万舟が飛び出すことだってあるだろう。
 峰が強くなればなるほど。
 最強の男に拍手を贈りつつ、『タイガーマスク』に対するミスターXのように、私は続々と伸び~~るまくり怪獣を刺客として送り込む! 嗚呼、そんな妄想を膨らませてくれた今節の菊地孝平14号機には、心から感謝の意を贈りたい。惜しかったね、キクッチ!(photos/シギー中尾、text/畠山)