重たい、回転が合ってない、起こしが鈍い、これが連発された前検日。コメントを見ると、ドリーム組以外の選手もこれらを口にする選手が実に多かった。というわけで、朝から調整、試運転に勤しむ選手たち。ピットに入った途端、ペラ室から響く金属音に耳を奪われる。ご時世柄、換気対策でペラ室の扉が開け放たれているので、音がよく聞こえてくるわけだ。ちなみに出入口のいちばん近くにいたのが吉川元浩。評判機38号機を引いたが、ペラの形が実に独特だったようで、これを叩き直しているものと思われる。
整備室では、長田頼宗が本体を割っていた。11R1回乗りと、時間もたっぷりあるので、さっそく大きな作業に取り掛かったのだろう。整備士さんたちに見守られながらの整備は、2R発売中まで続いていた。
西山貴浩も本体整備だっただろうか。というのも、覗き込んだときにはちょうど本体を組み上げたところだったのだ。ある程度の分解はあったものと思われるわけだが、内容はちょっとわからなかった。
その後の西山はモーターをボートに装着。それをすかさず発見したのが先輩の枝尾賢で、自分のボートが置いてあった場所をわざわざ西山のために空けてあげていた。そこが整備室のすぐ近くだったのだ。装着もヘルプしていて、うーん、なんて素敵なお人柄。
装着場では徳増秀樹がキャブレターのネジを締めていた。朝のうちに調整をしたのだろうか。その後、徳増はいったんどこかに姿を消していたのだが、1Rが終わって選手たちがボートリフト周りに集まりだした頃に装着場にやって来ている。1Rは東海勢の出走はなかったのだが、手薄な陣営のエンジン吊りを手伝うのだろうか?
と思ったら、なんと一人エンジン吊りの輪に背を向けて、モーターを外し始めたではないか。何か整備の方向性がひらめいたのだろうか? 白井英治に手伝ってもらってモーターを架台に乗せると、整備室に運び込んで整備開始。ドリーム戦まで試行錯誤を繰り返していくのだろう。
キャブレターといえば、峰竜太が調整しているのを見かけた。昨日の峰は、前検航走が終わった後はリードバルブ調整をしていた。キャブレターは燃料と空気を混合する部品で、そこで混合気になったものがリードバルブを通って本体内部に送られていく。どちらも吸気の部分に関わるわけですね。まずはこの部分の調整から始めたわけで、峰といえばプロペラというイメージはあるものの、こうした外回りと呼ばれる部分の調整にも余念がないわけである。
1R終了後、すぐに整備室に駆け込んだのは西村拓也だ。今日は1R1回乗りで時間はたっぷりあるというのに、速攻で着替えを終えて整備室に入っている。整備士さんとともに機歴を確認し、何事か相談。過去の整備状況などを参考にして、整備の方向性を相談していたのだろう。それからいったん、どこかに姿を消したニシタクだが、この後はたっぷりと時間を費やして本体と向き合うのだと思われる。
さてさて、オープニングを制したのは前本泰和。あざやかな4カドまくりだった。前本はレース後も淡々としているイメージがあるのだが、どうですか、この笑顔! 出迎えた山口剛もニコニコで、広島勢の気勢を上げるまくり一撃だったのだ。児島は、GⅠ初制覇の地。相性のいい水面で絶好のスタートを切った前本なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)