BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――選手の本能?

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 今日も9R終了後に帰宿の1便が出発。ざっと数えたら24人が1便で帰っていった。蒲郡の宿舎はレース場と隣接しているので、徒歩通勤。競技棟のほうで整列後、ピットを横切って裏手に回り、宿舎へと向かうことになる。

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 その隊列がピットを横切るちょうどそのとき、石野貴之が試運転を終えてあがってきた。それを見つけた守屋美穂がペラ室を駆け出てエンジン吊りをヘルプしようとする。当然それは、帰宿組の隊列の後方を進んでいた選手の目に入る。すると、その選手たちが一斉に石野のもとに殺到。あと10~20秒ほど遅く戻って来ていたら、守屋が孤軍奮闘していたはずのエンジン吊りは、10人ほどの手によってあっと言う間に終わったのだった。一刻も早く帰りたいはずの帰宿組も、あがってきたボートを見かけたら駆け付ける! これはもはや選手の本能のようなものだろう。

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 その1分ほどあと、やはり試運転をしていた磯部誠があがってきている。またまたミポリンがダッシュ! 帰宿組はとうに姿を消していたので、今度こそ孤軍奮闘かと思いきや、9R後のコメントを報道陣に語っていた上野真之介が、記者さんに恐縮しながらダッシュ! ちょうどコメントを一通り出し終えたタイミングだったようだが、もし取材の途中だったら、記者さんに「ちょっと待っててください」と断わって、やっぱりエンジン吊りに加わっていただろう。もちろんその行動パターンを報道陣もよく心得ている。

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 このエンジン吊りには、ヘルメット&カポック姿のままで石野も参戦。おそらく磯部がもう少しであがってくるだろうと、自分のエンジン吊りを終えても帰らずに待ち構えていたものと思われる。それが当たり前だ、とばかりに。試運転にエンジン吊りに、ご苦労様です。あと、ミポリンもお疲れ様!

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 後輩が先輩に対して、はもちろん、先輩が後輩に対してであっても、選手たちは“他人の分まで”が沁みついているように思える。まあ、大人の社会というのは多かれ少なかれそういう部分はあるものだが、それがごく自然なかたちで、かなり積極的に、選手間では行なわれているように思えるのだ。写真は、アカクミを片手に2枚ずつ持っている中島孝平。アカクミは各ボートに2枚ずつセッティングするもので、ということは中島は2人分を手にしているわけである。当然、先輩の今垣光太郎の分ですね。

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 ただ、実はこのシーン、中島はアカクミ置き場にこの4枚を返しに向かっているところなのである。そう、中島がやるより先に、今垣が中島の分までセットし終えていたのだ。後輩の自分が今垣さんの分までやるのが当然、とばかりにごく自然にアカクミを取りに行き、それぞれのボートに向かった中島。ところが、ボートに着いてみたらもうアカクミがあったわけですね。ようするに今垣は、後輩が自分の分までやるのが当たり前などとはまるで思っていなかった。まだ自分のボートにも孝平のボートにもアカクミがないから、俺がやっとくか。そんなふうにごく自然に動いたわけである。このあと控室かどこかで顔を合わせて、「光太郎さんすみませーん」「ぜんぜーん」などというやり取りがあったんでしょうな。

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 10R。平本真之がまくり一撃で快勝! 2日目は連勝である。悔しさを隠さない男・平本は、喜びを隠さない男でもあるのだが、今日のレース後はわりと淡々としているのだった。スタートタイミングはコンマ05、ちょっと早かったかなあとか振り返っていたのだろうか。それでも、菊地孝平に「やったな!」と称えられると、相好を崩して「よっしゃっ!」と雄叫び。そうそう、それでこそ平本真之でしょう。この勢いを明日にも維持したい。

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 丸野一樹は3着。1マークは狭いところに艇を運び、番手争いを演じて3着キープ。昨日よりらしいレースができたということか、レース後は笑みも浮かんでいるのだった。平本とレースを振り返り合うときには写真のような表情も。着々とケガ前に戻りつつある感触があるのだろうか、とにかく爽やかなレース後なのであった。

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 11R。銀河系の盟友同士である田村隆信と湯川浩司は道中接戦。ただし、4番手5番手争いだったんだけど。レース後、回顧し合うふたりは、下位での競り合いになってしまって苦笑い連発。「手前は俺のほうが分があるな」「でもその先はこっちやな」とさらに競り合うのだった(?)。次の直接対決は先頭争いでの“銀河競り”が見たいぞ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)