BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――エグいっ!

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 関浩哉がエグい。10Rは井上一輝が逃げ切ったはずが、ブンブン握っているうちに関がつかまえてしまった。2周1マーク、関が外から握った瞬間、整備室でモニターを見つめていた選手たちが「ぐっ、ぅわーぁ」と声をあげている。彼らが見ても、これは届いてしまうと察知できるものだったのだろう。果たして、関は井上に追いつき、バックの伸びで前に出てしまった。引き上げてきた関は、そもそもはしゃぐようなタイプではないので淡々としていたが、他の選手たちの胸中はざわついていたに違いない。

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 特に、別に大きなミスをしたわけではない井上は、ただただ苦笑いするしかなかった。通常ならそのまま先頭をキープしてゴールできる展開。とにかく相手が悪かったと言うしかない。

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 1周1マークを回った時点では2番手争いになっていた中村桃佳も、結局はあっさりちぎられているわけだから、レース後は呆然とした様子。しっかり差して2番手というのは、もちろんレースに瑕疵があったわけではないわけだから、結果3着というのは納得のいくものではなかっただろう。まあ、ほんと相手が悪かった。

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 それでも関は、レース後またまたペラを叩いていた。今回、関は整備室外の壁際に設けられた調整所で作業をしているので、その様子が実によくわかるのだ。レース後にゲージを当ててチェック、というのは誰もがやっていることだが、あのレースぶりでさらにハンマーをとるとは驚きではある。もっと出したい。もっと出るはず。ここで満足せずにさらに上を目指す姿勢は立派だと言うしかない。

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 初日連勝は関だけではない。栗城匠もピンピン発進。またこの人がレース後にテンションを爆上げすることなどなく、表情をほとんど変えない人なので、エンジン吊りの間も、終えて控室に戻るときにも、実に静かなものである。笑顔も見られなかった。栗城らしい連勝後の様子、というわけである。ちなみに、今年の平和島周年優勝後の表彰式で栗城は号泣している。ピットでの栗城を見ているだけに、感情をあらわにした栗城におおいに驚かされたのだった。それくらい、GⅠ初優勝は特別なんだろう。ヤングダービーを優勝したら、どんな栗城が見られるのだろうか。うん、それを見たくはありますな。

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 関と栗城は初日から景気がいいわけだが、もちろんそうでない選手も多々である。代表格はやはり永井彪也か。初日4着6着というスタート。同じヤングダービー覇者の関とは好対照である。9R後は整備室にこもり、ギアケースの調整をしていたのだが、その間じゅう整備士さんが張り付いていて、永井も何事か相談をしていた。今日は部品交換をせずに戦っているが、明日は大きな整備にも取り組もうということだろうか。

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 9R後には、5着だった松山将吾も本体を割っていた。1マークを回って2番手も、という隊形からズリ下がるように着を落としたのだから、感触が良かろうはずがない。9R後ということは、都合3レース分しか時間がないのだが、それでも割ったというのはそれだけ整備の必要性を感じていたということだろう。

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 あと、近江翔吾がキャブレターの調整を10R終了後に始めていた。今日は3着2着と悪くない初日だったが、できることは今日のうちに、ということだろうか。ちなみに、10R終了後に帰宿の1便が出発。整備室前に整列していたので人数を数えてみたら、16人。登番最上位の渡邉優美やその次の松尾夏海、下のほうでは畑田汰一も含まれていたが、登番上から3番目の近江は居残り作業。これもひとつの気合のあらわれと見たがどうか。

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 あと、3着2着の吉田裕平も、最後までプロペラと向き合っていた。後半9Rは6号艇2着と悪くない一日だったと思うのだが、さらに上を目指そうという姿勢だろうか。整備室の奥のほうで一人、静かにじっくりと調整を行なっていた吉田。ヤングダービーとの相性はいいだけに、今回も怖い存在となりそうだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)