BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――自然体

 グランプリが迫り、チャレンジカップのほうはまさしく勝負駆けとなる(最終日の10月31日が選考締切)このダービー。ピリピリした空気が最高に高まっていてもおかしくないわけだが、前検日は意外と穏やかな雰囲気なのであった。SGは2カ月開いたから、むしろ高揚感のほうが強いということだろうか。

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「……どうなのよ?」
 いきなり問われても困るぞ、白井英治。検査を終えた私物をピックアップして宿舎へと帰る間際、すれ違いざまにそう問いかけてきたわけだが、目もとは実ににこやか。何がどうなのよなのかいまいちわからなかったが、とりあえず三島敬一郎がA評価を下しているモーターを引きましたな、と伝えたら、さらに目尻が下がる白井なのであった。今日乗った感触は「よくわからんのよ」とのことだが、素性が悪くないのは間違いなく、しっかり仕上げてくると思います。

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 モーターの数字はもう一つで、しかも前検タイムが一息の丸野一樹も「そんな感触じゃないっす」と、むしろご機嫌な様子だった。ひとまずグランプリ行き(ベスト18入り)は当確で、近況のリズムも悪くないということで、テンション高めで前検に臨んでいる。メモリアルでSG初優出したことは、精神的に大きかったかも。こちらとしては「ベスト6を!」と煽りたいところではあるが、本人はそのあたりもいたって自然体のようだ。

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 賞金ランク13位の池田浩二は、状況的には「ここでグランプリ行きを確固たるものにしたいところ!」とか思うわけだが、雰囲気的にはそれを意識の外に置いているようにも見える。前検から調整に忙しく取り組む姿はいつも通りだし、表情も普段のSGと変わらなく見えた。「いざ勝負駆け!」というのは、チャレンジカップならいざ知らず、こちらの先入観に過ぎないのだろうと思ったりする。

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 そのチャレンジカップ勝負駆けなのは、赤岩善生、なのだが、赤岩もまったくピリピリした様子はない。それはレース場入りのときにも感じたし、ピットでも同じだ。職員の方と話しているのを見かけたときは、実に柔らかな表情を見せていた。そして、こちらとすれ違う時には、明るく右手を掲げてきた。赤岩とはけっこう話すほうだが、前検日にこうしたアクションを見せてきた記憶はないんだよなあ。とにかく集中度がハンパない男だから、こちらから話しかけていいときと悪いときというのを僕も見極められているつもりでいるのだが、シリーズ序盤からこんな雰囲気というのはなかなかないことだ。もちろん、今日の感触が良かったから、ということなのかもしれないが。

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 で、SG初出場の古澤光紀と山崎郡はどうなんだろう、と気にしていたわけだが、古澤については自然体で過ごしているように見える。なにしろ福岡支部の同世代が数多く参戦しているし、同期の深谷知博もいるし、他支部の同世代ともよく話していたし、精神的に追い詰められなくて済む、そんな仲間がいるのは大きいだろう。

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 一方、山崎郡は、たとえばヤングダービーやレディースvsルーキーズバトルで会ったときよりは、やや重い雰囲気と見えたのだった。上條暢嵩がいるので、節間通して話し相手には事欠かないと思われるのだが、同支部にはとてつもなく偉大な先輩がいるわけで、決して威圧的な人たちではないけれども、緊張を強いられることもあるだろう。大阪支部の層の厚さから、記念斡旋も決して多くはないなかで手が届いたSG出場である。結果を出してステップアップしたいという思いも強いはずだし、一般戦との雰囲気の違いをヒシヒシと感じることもあるだろう。今年絶好調のその勢いを、SGの水面に叩きつけてほしいと強く願います!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)