BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

優勝戦 私的回顧

帰ってきたチャンピオン

12R優勝戦
①平本真之(愛知)11
②辻 栄蔵(広島)19
③白井英治(山口)20
④峰 竜太(佐賀)11
⑤秦 英悟(大阪)15
⑥深谷知博(静岡)20

f:id:boatrace-g-report:20211031182725j:plain

 予選のラストバトルで凄絶なKO負けを喫した平本真之が、タフな精神力でダービー王座に返り咲いた。絶対有利な1号艇=インコースとは言え、楽な1マークではなかった。スリットから平本に先制パンチを浴びせたのは、辻でも白井でもなく4カドの峰竜太!

f:id:boatrace-g-report:20211031182757j:plain

――嗚呼、やはり今節は、最初から最後までこのふたりのタイトルマッチだったか。
 私の◎白井を軽々と飛び越える峰を見ながら、失意とともにこんなことを思った。今節のシリーズリーダーの変遷を辿れば【初日が峰~2・3日目が平本~4日目は峰~5日目は平本】。その間、2度の直接対決は2日目・平本、3日目・峰が僅差で先着しており、シリーズを通して足を止めて殴り合っている印象があった。

f:id:boatrace-g-report:20211031182835j:plain

 そして今日、1勝1敗で迎えた第3戦も、他でもない峰が暫定王者・平本に襲い掛かったのだ。3度目の返り咲きを狙う強烈な右フック。
 内2艇がかなり凹んだため、その渾身のパンチは平本の顔面をシャープに捕えきったかに見えた。が、インからしっかり伸び返した平本は巧みなダッキングとクリンチで峰のハードパンチを緩和し、ターンマークを1ミリも漏らすことなく旋回した。完璧な防御からのヒット&アウェイで1ラウンドKO勝利!

f:id:boatrace-g-report:20211031182916j:plain

 おっと。「返り咲き」という言葉のイメージからついついボクシングを連想してしまったが、本当にありえないほど素晴らしい「返り咲きKO劇」だったと思うぞ。4日目に痛烈な連打を浴びてマットに崩れ落ちた暫定王者が、そこから這い上がって2日後にチャンピオンに君臨。今節の宿敵が現役最強ファイターだったからこそ、平和島のみならず全国のファンに与えたインパクトは強烈だったはずだ。

f:id:boatrace-g-report:20211031183021j:plain

 最初のSG制覇がファンから軽視されやすいGPシリーズ戦だったせいか、平本の人気は長きに渡って実力に追いつかなかった。次に頂点に立ったオールスターもファン投票による選出ではなかったし。それから5年間に9度のSG優出で徐々にトップ級の評価が定着し、そして今日のKO勝利によって揺るぎないチャンピオンに認定された。勝手な私の思い込みかも知れないが、そんなことを思った今日のラストバトルだった。

f:id:boatrace-g-report:20211031183049j:plain

【7月オーシャンカップ優出5着→8月メモリアル準V→10月ダービー優勝】という尻上がりの成績で賞金ランク2位まで浮上した平本。この上昇気流は2年前の石野貴之にも似ており、暮れの頂点に立って不思議じゃない流れと言いきっていいだろう。シリーズ優勝から7年、成り上がりファイターの最強伝説が始まろうとしている。(photos/シギー中尾、text/畠山)