●久しぶりの
SGなどのビッグレースの前検の班分けは、1班にドリーム戦の6人(ドリーム戦の枠番通りに入る)、2班以降は登番順となっている。このBBCトーナメントにはドリーム戦がないので、今日の班分けは1班からすべて登番順。今回の登番最上位は太田和美なので、太田が1班1号艇、である。
今年のSGのドリーム戦は、1号艇がすべて峰竜太だった。というわけで、今年のSG前検では、1班1号艇はすべて峰竜太だったのである。だが、今日は久しぶりに1班1号艇から外れた、のである。しかも、登番では真ん中より下になるので、なんと後半組に振り分けられた(5班3号艇でした)。というわけで、前半組のスタート練習とタイム測定が始まっても、峰竜太のボートは装着場に。その時間帯にピット内をふらふら歩いている峰竜太、というのは妙に新鮮なのでありました。
●怪物くんが登番最上位!?
それにしても、太田和美が登番最上位とは、なんだか不思議な感覚なのである。浪速の怪物くんと呼ばれた若手有望株、という印象が今でも拭えないんですよね。我々がSGのピット取材に入るようになったばかりの頃は、若手とは言わないまでも、まだ30代前半だったのだ。花の69期がもうビッグレースの“最年長”になるんだもんなあ。
いや、最年長と言ったら怒られる。今節の勝利者インタビューを務める高尾晶子さんが「最年長!」と声をかけたら、「最年長ちゃう!」と反論が返ってきたのだ。年齢でいったら前本泰和のほうが上なのだ(といっても、前本72年4月生、太田73年1月生で同学年)。いずれにしても、太田も前本もレースぶりはまだまだ若い。ハツラツとした最年長ぶりを見せつけてもらおう。
●居残り
全8班のスタート練習とタイム測定が終わったあと、帰宿便の1班が出発している。ちなみに、鳴門の宿舎はピットを出て徒歩3秒ほどだ。1班で帰った選手の多くは、登番3000番台の前半組。やはり“先輩たち”が先に帰る傾向にあるわけである。
そうしたなかで、最後まで居残ったのが濱野谷憲吾と石渡鉄兵の東京コンビ。二人は1班で、真っ先にスタート練習とタイム測定を終えているわけだが、それから延々とペラに向き合っていたというわけだ。濱野谷は普段から、早い便で帰らずにピットで過ごしている傾向がありますね。
ちなみにですが、できるだけ帰宿が分散するように、早く帰れる選手は1便で、という指示というか要望が出されているので、早く帰るのもまた大事なことである。それでも居残ろうという執念のようなものもまた、見ていて気持ちいいのだ。
●ラストイルミ
水面でスタート練習などが行なわれているとき、選手たちが次々と覗き込みに行く場所がある。「スタート練習班別表」だ。1班から8班までの班分けが記されているのだが、鳴門のピットではこれがなかなか重要。というのも、ピット内にいると水面が見えず、誰が走っているかを判別するのが簡単ではないのだ。だから、エンジン吊りに出るかどうかを判断するために、この班別表をいちいち確認することになる。
寺田祥らを引き連れて、この表を覗き込んだ白井英治。中四国の選手たちの班を確認し、エンジン吊りの算段をしているのだった。最後に言い放ったのは「ラストイルミだな!」。ようするに8班に岡山支部の入海馨がいるということなのだが、ラストイルミ、なんか響きカッコいいっすね。それはともかく、白井がいかに率先して後輩たちのエンジン吊りに駆け回っているか、ということがわかるシーンなのでありました。
●続々と
8班のスタート練習とタイム測定が終わった後、整備室入口の脇に置かれていたバインダーに一枚の紙が挟まれた。それを見た選手たちが続々とやって来て、その紙を覗き込むのだった。なんだなんだ。
じっと見つめていた池田浩二が、立ち上がって言った。「真ん中よりちょっと上くらいだな」。これ、今日の前検タイムが記された紙なのだ。みな自分のタイムをチェックしたり、他の選手と比較したりして、わりと長い時間、そこで過ごしているのだった。
ところで、池田の前検タイムは6秒77。真ん中より上、かなあ? そういえば隣には磯部誠がいた。磯部は6秒72。磯部のタイムをチェックしてあげていたのかもしれませんね。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)