BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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住之江グランプリTOPICS 初日

三百戦練磨

11R
①辻 栄蔵(広島)17
②毒島 誠(群馬)18
③瓜生正義(福岡)20
④馬場貴也(滋賀)24
⑤篠崎仁志(福岡)24
⑥新田雄史(三重)28

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 気合パンパン新田の前付けを他の5艇がすべて突っぱね、最終隊形はほぼ横並びの枠なりオールスロー。約90m起こしの出足勝負で、内3艇がしっかり主導権を握った。誰かひとりでも艇を引いたら勝機があった気がしないでもないが、そこは第1戦の勝負のアヤ。得点も横並びだからして、枠番の利に重きを置いたのだろう。

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 インコース辻の先マイは当然として、毒島の旋回がなかなかに興味深い。2コース並走からすぐに差しハンドルは入れず、一瞬だけ握って瓜生のまくり差しのスペースを消してから舳先を左に傾斜した。おそらく「瓜生のツケマイを浴びたら惨敗もありえる」という計算があったはずで、これもトライアルならではの駆け引き。短期決戦の勝負術を知り尽くした激辛な旋回に見えた。

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 もちろん、それを瞬時に察した瓜生は1ミリの迷いもなく握った。やや膨らんだ毒島の外を全速でぶん回し、見えないところからインの辻に迫る。瓜生のアタマ舟券を買っていた私は、届くかも!?と期待したが、辻の逃げ足がその攻めを上回っていた。

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 その後も辻vs瓜生、瓜生vs毒島でなかなかに熾烈な局地戦が勃発したが、1~3着に関しては外枠の追随を許すことなく高得点を分け合った。枠番の利が生きたレース、と言えばそれまでかも知れないが、私の目には「グランプリの戦い方を知り尽くした男たちの余裕」みたいなものが、そこはかとなく感じられるレースでもあった。

ヒーローの交錯

12R 並び順
①前本泰和(広島)10
③丸野一樹(滋賀)12
⑥西山貴浩(福岡)13
②石野貴之(大阪)16
④菊地孝平(静岡)13
⑤池田浩二(愛知)17

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 大大大大大大波乱だ。単に1300倍という超絶配当だけではない、今後のGP戦線に大きな波紋を投げかける大波乱! 立役者は、艇界きってのエンターテイナー西山貴浩。11Rの⑥新田同様にオラオラ動いたらば、こちらは注文が通って3コースまで潜り込んだ。

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 とは言え、生易しい3コースではない。枠番の利を捨てて4カドを選んだのは、地元浪速の勝負師・石野! かつてトライアルで2度も成功させている「前付け容認カド選択作戦」が、まさかの初日に遂行された。ただ、初日だからこそモチベーションの在り方が難しかったかも知れない。ダッシュの利が生きる絶好の4カドながら、スタートで後手を踏んで自力攻めを断念。外を止めての二番差しという、今までより消極的な次善策を余儀なくされた。

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 そしてそして、そんな石野に代わって凄まじい握りマイを繰り出したのは、自他ともにワースト級パワーと認めていた西山81号機だった。今日の西山は【ギヤケース・キャリアボデー・リング1本】を交換するなど「やれることは全部やった」と自負しての参戦ではあったが、あのツケマイに関しては機力より気力が大きく影響したはずだ。石野を受け止めてからの初動の早さ、握りっぷりの良さ、イン前本を交わす速さは、「見る前に飛ぶ全速ターン」と評していいだろう。あっという間に、最低人気の男が先頭に突き抜けていた。

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 この天地をひっくり返すような番狂わせで、もっとも仰天したのはまくられた前本だったか。気が動転したであろう稀代の名手は、1マークの手前でバランスを逸してよもやの転覆。さらに、二番差しを選択した石野~アウトから最内を狙った池田がこれに乗り上げる形で横転し、レース的にもGP的にも悲惨すぎる事故現場が誕生してしまった。地元でのGP連覇に燃えていた石野は、まさか緒戦でその夢がほぼ絶たれるとは予想だにしていなかっただろう。明日からどんな心持ちでレースに向かうのか、想像するだに同情を禁じ得ない。

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 嗚呼、それにしてもの西山貴浩! このとんでも1着で明日は「完走当確」、つまりは去年に続いてトライアル2ndのステージがほぼほぼ約束されたのだから、勝負強さというのか、天性の大穴男というのか、そういう性質に脱帽せざるを得ない。ワースト級の機力がどこまでアップし、明日の5号艇も含めた3戦連続の外枠をどこまで克服できるのか。私見としてはGP頂点への道は去年以上に険しいと思っているのだが、1300倍の大穴を掘り起こした男にもちろん私の常識なんぞは通用しないだろう。

パワフルトリオ

 さてさて、GPシリーズ組はかなり機力の凸凹が大きな印象があり、10戦中インコース4勝(逃げ2本)のみという住之江らしからぬ波乱が相次いだ。とりわけ目を惹いたのは『三島敬一郎・四傑』に抜擢された上野真之介、西村拓也、徳増秀樹の3者で、それぞれ1号艇以外で貴重な1着をGET!

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 まずは2R、上野が4カドから伸びに伸びて豪快な一撃まくり決着。やはりエンジン性能だけの比較なら、この29号機のストレート足がいちばん強力だと再認識する勝ちっぷりだった。これで上野が7R1号艇もキッチリ勝ちきるようなら「断然のV候補」というレッテルを貼れたのだが、恐るべき埋伏の兵がいた。

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 徳増73号機! 前検から「上野の次かその次」くらいのストレート足と見ていたのだが、この男にはいつでもどこでも直線パワーアップの秘術がある。今日もしっかり行き足~伸びを強化しての【①上野vs④徳増】の直接対決。パワー的に初日ではもったいないほどの好カードで、しかも⑤赤岩善生がオラオラゴリゴリ動いたからたまらない。1235/46というスリリングな隊形から、5カドの徳増が猛烈なシャクリまくりで一気にインの上野まで攻め潰した。これをもって「上野より徳増が伸びる」と言いきるつもりはないが、徳増の秘術も込み込みでほぼ互角のストレート足と見ていいだろう。
 もうひとり、西村14号機の実戦足もかなりゴキゲンだ。6Rは2コースから出足~行き足でイン稲田浩二を煽り、狙い済ました差しハンドルでバック独走状態に。稲田の足が悪すぎる(←前半2Rより競り合えるレベルにはアップ)とは言え、実にしっかりしたターン回り~出口の押し足に見えた。後半9Rの西村は展開に恵まれず6着大敗も、パワー負けとは縁遠い6着で明日以降も常に警戒する必要があるだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)