10Rは中田夕貴が逃げ切り、角ひとみが2着。陸に上がってボートを降りるなり、角が中田に歩み寄って、肩をポンポン。そして力強いハイタッチ! 中田が一気に笑顔を爆発させた。角のテンションはかなり高く、出迎えた中里優子ともグータッチを交わしていた。
団体戦において、この勝利はなかなかデカかった。ここまでルーキーズが7点リードで迎えており、もしここを落とし、さらに特別選抜A戦もルーキーズに獲られていたら、その時点でレディースの勝利はなくなっていたのだ。だから、中田-角のワンツーは土俵際でギリギリ残したに等しい上位独占だった。角は宮田龍馬との2番手争いをしのいでおり、それもまた気分を上げていた要因だったかもしれないが、実は団体戦においては3着でもポイントゲットだった。それでもやはりワンツーでの4点獲得は大きかったのだ。これぞ団体戦の光景、であった。
この結果、11Rの結果にかかわらず、団体優勝のゆくえは12R優勝戦の結果次第ということになっている。それでも点差を引き離したかったということなのか、数原魁が6コースから気合のスタート。その心意気や良し、ではあるが、残念ながらコンマ02の勇み足となってしまった。この時点で8点は紅組に。31対26で紅組が逆転!
といっても、やはりスタート事故があったレースでは、レディースたちも喜ぶわけにはいかない。淡々としたレース後の光景となっている。数原はあがってきた各選手のもとに向かって頭を下げた。勝った鎌倉涼に対してもすみませんでしたと詫び、そして鎌倉は数原に慰めの言葉を投げかけていたのだった。気落ちしている後輩に対しては、団体戦のことなど頭から消え去ることだろう。
さあ、運命の優勝戦。展示から西橋奈未が気合の3カド。本番も展示もコンマ08のスタートを決めたあたりは立派の一言。しかしながら、やはり井上忠政は強かった。インからコンマ09のスタートなら、西橋の3カド攻めもそれほどプレッシャーにはならなかったに違いない。見事にイン逃げを決めて、個人優勝を手にしている。
問題は、その後ろだ。2コースから差して追走の渡邉優美が2番手、さらに中里優子が3番手を走った。こうなると、西橋が4着か5着で12点はレディースに。そして西橋はまさに4番手5番手争いとなっていたのである。ところが3周1マーク。競り合いのなかで西橋は高橋竜矢に押し出されるように流れて一気に6番手に後退。その瞬間、控室からは野太い歓声がウワーッと上がった。それは間違いなく男たちの声。ルーキーズ、10万円獲ったどーっ!
それでも西橋は3周2マーク、差してなんとか追い上げをはかっている。エンジン吊りのためピットに出てきた落合直子らがビジョンに見入るが、映し出されたゴールラインの映像は、明らかに西橋がシンガリ負け。落合らは「あぁ~っ……」と溜息を漏らすのだった。というわけで、団体優勝はルーキーズに決定!
レース後、やはり西橋はただただ無念の表情。個人戦で3カド実らず優勝がかなわなかったことも悔しかっただろうし、レディースの優勝をこぼしてしまった責任も感じているようだった。だが、決意の3カドに対しては、ナイスファイトと称えておきたい。結果にはつながらなくとも、勝利へのこだわりを見せたことは尊いのだ。
団体優勝はもぎ取ったが、佐藤航もまた悔しそうだった。エンジン吊りを終えて控室に戻る途上、カメラを持って待ち構えているこちらに「すみませんでした」と頭を下げた。いや、こちらは謝られる筋合いは何にもないのだが、結果を出せなかったことを申し訳なく感じているようだった。しかし、今節の活躍はもちろんルーキーズの団体優勝に大貢献している。最後に西橋を競り落とした一人なのだから、その点も大きかった。思い切り胸を張って、10万円持ち帰ってください!
そして、個人優勝の井上忠政は、ただもう、淡々としたレース後なのであった。ウィニングランに向かう前に、出迎えた仲間たちに軽く左手をあげてみせたくらいで、表情は柔らかいものの歓喜をあらわにすることはなかった。いろんな思いはあるだろうが、僕は勝手に「見据えているものはここではない。まだまだ先にある」ということだと解釈しておきたい。とにかく今節は圧倒的な強さだった。おめでとう!
表彰式では、井上が個人優勝の表彰を受けた後に、栗城匠がルーキーズ代表として団体優勝の表彰式に登場した。まあ、なにしろ“笑わない男”なので歓喜がやはり見えてこないのだが、しっかり10万円をもらってくださいね! こちらもおめでとう!(黒須田)