BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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個人&団体優勝戦 私的回顧

凄絶、脱・6着バトル!

12R優勝戦
①井上忠政(大阪)09
②渡邉優美(福岡)08
③西橋奈未(福井)08
④佐藤 航(埼玉)08
⑤中里優子(埼玉)10
⑥高橋竜矢(広島)12

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 今節の圧倒的なエースストライカー忠政が、最後も外の5艇を寄せつけずに逃げきった。節間131111121①着。個人成績としても無敵と呼ぶべき存在だったし、もちろん優勝戦も含めて団体戦の貢献度も圧倒的で、完全無欠のMVPと絶賛していいだろう。

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 さて、最終バトルを振り返ろう。このレースの唯一のサプライズは、西橋の3カド攻撃だったか。9R後の特訓、スタート展示ともにこの奇襲を披露していたから、もちろん早い段階で腹を括った作戦だ。
 これで3カドから突出すれば事件というか、波乱の火種となったはずだが、スリット隊形は↑御覧のとおりの美しい横一線。ダッシュの分だけ頭ひとつ出たものの、同期・井上の伸び返しと渡邉の質の良いほぼ全速スタートで、突出するだけの勢いはなかった。

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 1マークまでぐんぐん伸びた井上がくるり回って勝利確定。一方、紅組のエースとして井上と予選トップを争った優美は、やや握りながら西橋のまくり差しのスペースを完全に消し去ってからの激辛の差しハンドル。あっという間に紅白の両雄だけが、後続を大きく引き離した。井上37号機の超抜パワーと、優美の冷静的確な捌きと。今節のふたりの長所持ち味が、まんま1マークに投影されたワンツー決着だった。
 個人戦としては、書くべきことはここまでか。119期で伸び盛りの井上忠政が、節イチのパワーを武器に一般シリーズをぶん捕った。とりたてて驚くべき事象のない、むしろ一般戦で当然に起こり得る想定内の優勝だった。

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 だがしかし、いざ視点を「団体戦」にスライドすると、この最終バトルは最後の最後まで目の離せない、そして手に汗握る“死闘”だったのだ。
 早い段階で1着10点=白組、2着8点=紅組はほぼほぼ確定。これで白組が3番手を取りきれば簡単に白組優勝の当確ランプが点ったのだが、バック直線で力強く抜け出したのは紅組の“後衛”中里!! いやはや、今日の中里61号機も追いすがる白組の難敵を寄せつけないほどのウルトラ鬼足だ。

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 白・紅・紅で大勢が固まった場合、手っ取り勝敗の見極め方は「6着を取った方の負け」となる。もう、8回もこの大会に参戦している私は、すぐさま4着争いよりも最後方の選手に視線を移した(笑)。6着に千切れた選手がルーキーなら紅組の優勝、逆に西橋がシンガリなら白組の優勝。どっちが先に土俵を割るか。
 そう、おそらく走っている選手たちも、「6着アウト」の法則を知っていたのだろう。西橋×高橋×佐藤の“脱・6着争い”は誰かしらが千切れるどころか、ターンマークごとに順位が入れ替わる凄まじい激闘となったのである。

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 2周1マークまでは西橋が僅差ながら4、5番手を往来していて、それなりに安全圏に見えたものだ。が、その“唯一の敵”を挟撃するように高橋と佐藤が襲い掛かり、2周2マークの出口では3艇が横一線に! 真ん中の西橋だけがほんのわずかに凹む一列隊形のまま3艇は3周1マークに殺到し、まさにサンドイッチ状態の西橋の握りマイが虚しく真横に流れて勝負あった。3人がどれだけ状況を把握していたかは分からないが、団体戦という潜在意識のある私の目には「RPGゲームの2対1の戦闘で、数的に不利な戦士がライフを削られて敗れ去った」みたいに映った。3カド攻撃~道中の死闘が報われずに団体優勝を横取りされた西橋の悔しさは、おそらくピットレポートに描かれることだろう。
 紅組3138白組
 初日から一度もリードを許さず、今日の11Rで初めて26-31と逆転されたルーキーズが、死闘の果てに勝者へと返り咲いた。
            ☆

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 さてさて、今節もオヤジの小言のように、アレを書かせてもらおう。『もっとこうしたら、団体戦が盛り上がるんじゃないっすか!?』コーナー。今まで何度も書いてきて、ほとんど重複する提案ばかりだけど、今日もやっぱり書いちゃいます!
①この大会だけは予選の着順賞金をカットし、団体戦優勝チームにどどーんと振る舞う。ひとり当たり50万円とか。そうすれば、両チームの団体戦に対する意識がメチャクチャ向上し、レースの戦術なども他のシリーズとは一線を画すものになるのではないか。
②ただ、選手のボーナスを増やしただけでは、舟券を買うファンからすれば「なんのこっちゃいな?」的な隔絶した感覚は否めない。ファンにも直接的に「なるほど、これって団体戦なんだな」と簡単に理解させるアイデアやイベントが必要だと思う。
③たとえば、事前に紅白チームに分かれ、さらに団体レースの3人がお互いの決意や戦術を確かめ合う「作戦会議」を開き、それをファンに公開するのはどうか。その作戦の延長線として「内枠3人、または外枠3人の進入が入れ替わる」などが発生しても面白いと思うのだがどうか。
※将棋界では3人一組の団体戦バトル『ABEMA杯』が開催され、戦う順番を決める作戦タイムが放映されている。
 とりあえず、この3点か。とにかく、「この大会は単なる個人バトルとはまったく違う。紅組と白組がそれぞれの名誉と賞金のために一致団結してチームの勝利を目指す」というユニークな特異性をもっともっと色濃く選手とファンに植え付ける必要があるのではなかろうか。団体戦を強く意識する選手、まったく頓着せずいつも通り己の成績だけに固執する選手。個々の選手の意欲、モチベーションがバラバラだと、舟券を買う側も混乱をきたしやすい。私の周辺からも「舟券の買いにくいシリーズ」「厚く張れないシリーズ」といった声もちらほら届いており、このあたりが改善されれば超ユニークな名物大会として巷のファンにも定着し、愛されるのではないだろうか。うーーん、やっぱ、いっつも同じことを書いてるなぁ(苦笑)
(text/畠山)