BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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前半ピット/ふたつの課題

 前原哉&大道の仲良し姉弟が、おソロの横縞パンツで右に左に駆け回る正午の児島ピット。昨日の記事からの流れで、何人かの選手の変化について記しておきたい。まず、地元のエース田口節子は完全にV戦線の軌道に乗った、と思う。昨日は1Rの手前から試運転を繰り返し、陸に上がってもなかなかに険しい表情で「すわ、ドリーム1号艇に暗雲か??」などと勘ぐったものだが、その後の調整がバチッと当たったのだろう。ドリーム戦はインから凄まじい伸び返しで逃げきり、上りタイムも昨日イチの1分46秒7を叩き出した(2位は原田才一郎の1分47秒7)。

 そして、今日の前半4Rを走り終えた田口の表情にも、一片の翳りなし! 6号艇で2着だったものの、「十分に戦えますわよ♪」的な余裕たっぷりの顔でキラリキラリン目を輝かせていた。もはや昨日の早朝とは別人なのである。

 別人と言うなら、同じ4Rで5号艇5コースから僅差の3着に食い込んだ堀之内紀代子も昨日とはまったくの別人に見えた。あ、正確には、ピットに帰還してもしばらくヘルメットを被ったままだったので表情は分からずじまい。ただ、20分後にどこぞやから戻ってきた紀代子さまの表情の清々しいこと!

 表情だけでなく、近くに立っていたルーキーに「あ、ありがと~ね~♪」と何事かのお礼を伝えた声の張りといい、尻上がりのトーンといい、眉間に皺を寄せていた昨日とは大違い。それはそうか。道中で後手を踏みながら、最内をくるくるくるくる回って先行する田口との差をじわじわ詰めていたのである。直線はともかく、あの粘っこい回り足がワースト級であるはずもなし。もちろん、「整備で大化けして上位までアップ」とは断定できないけれど、十分に戦えそうな手応えを掴んだのではなかろうか。

 さてさて、「選手の表情(や声)を拾って勝手にパワー診断しちゃおう」の妄想コーナーはここまで(笑)。今日は前半3Rを見て、ぜひとも直撃したい気になるルーキーが現れた。前節の優勝モーター(渡邉和将)を引き当て、昨日からちょっとときめくような伸び足を魅せている牧山敦也君だ。
――前節の優勝モーター、かなり伸びてる感じに見えるけど、どうっすか? あまり叩き換えてないっすか?
牧山「あ、はい、そのままじゃないですけど、前節のペラをベースにしてます。伸びは良いですね。でも、どうしても回転が上がってこないんですよ。どうやって回転を上げるか、まずはそこが課題です。それから、今日の風。基本、横から吹いてるんですけど、急に止まったり、前後に吹いたり……すごく気持ちが悪い風なんですよ」

――3Rは放っちゃった。
牧山「放っちゃいました。昨日は全速で行けたんですけどねぇ。今日は本当に難しい。12Rまでにしっかり特訓でスタート勘を掴んで、できるだけ全速で行きたいです。で、回転を上げることができれば、4カドから面白い足だとは思ってます」
――そのふたつの課題が克服できれば、まくりきっても不思議じゃない伸びですよね。
牧山 はい、だと思います。あとは自分次第、です!
 こちらがひとつ聞けば、ふたつみっつ先取りで答えてくれるような、なかなかの好青年でありました。ふたつの課題を克服できるかどうか断定できないけれど、12Rはカドから一撃の猛攻に期待したい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)