BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――アドバイス

 3日目の終盤ともなると、ピットは比較的、人の姿が少なくなる。整備室には原田幸哉。今日は4R1回乗りだったが、その後整備に取り掛かっていたようである。原田はその後はプロペラ調整。隣には、愛弟子の柳沢一が張り付いていた。

 よく見ると、柳沢は特に調整は行なっていないようだった。原田の調整を見守り、時折原田が柳沢に声をかけ、それに応えている。師匠が弟子に、ではなく、弟子が師匠にアドバイスを送っている、そんなふうに見える。原田曰く、柳沢は「精神安定剤」。他の選手には「どっちが師匠かわからん」などとも言われているそうである(笑)。柳沢ももちろん、自身の調整にぬかりはないわけだが、手が空けば師匠の調整にお付き合い。試運転を陸から見守る、なんて光景もよく見かけたりするわけである。

 別のペラ調整所では、中野次郎と深谷知博が向かい合っていた。その前にどちらが声をかけたのかはわからなかったが、装着場で立ち話をしており、その後に調整所に移ったようだった。見ると、二人ともハンマーは手にしておらず、深谷が自分のペラにゲージを当てながら中野に話しかけているようだった。それを見て、時折うなずいている中野。これもまた、後輩が先輩にアドバイスしているような光景に見えたわけである。常滑YouTubeで解説をしているあの鵜飼菜穂子さんは、「深谷くんの手にかかれば凡機も立ち直る」とその調整手腕を高く評価していた。中野もまた、深谷には一目置いているということなのかもしれない。

 それにしても今日はインが強かったですね! 2R以降、9Rまで連勝。安定板が外の攻撃力を減退させた? そんななか、10Rで巨大な反動が生まれた。久田敏之、6コースまくり一撃! インの連勝を止めたのが6コースとは! 嬉しそうだったのが、同期の山口剛。エンジン吊りに参加して、久田の横でめっちゃ笑っていた。久田は3月の常滑周年でも6コースまくりで勝っているのだが、そのときは5マンシュウ。今回は12マンシュウ! 同期の特大マンシュウ快走が愉快だったんでしょうね。久田自身は「僕がいちばん驚いてますよ。まさか唐津の6コースでまくれるとはね」と穏やかな笑み。唐津の6コース、遠いもんね。ちなみに過去1年、唐津での6コースまくり出現率は0・6%。久田はレアな一撃を見せてくれたわけだ。

 11Rはイン逃げ。群馬2連勝! 毒島誠が人気にきっちりと応えた。昨日までは大きな着を並べてきた毒島。ヘルメットをとると、さすがに安堵の表情を浮かべるのだった。そして、正反対の6コースから勝った久田と目配せし合ってニコリ。気分良く、明日の勝負駆けに向かえそうだ。

 このレースで対照的な表情だったのが、秦英悟。4カドからスタートで後手を踏んでの4着は、まさしく消化不良の戦いだったはずだ。レース前、非常に穏やかで柔らかい笑顔を浮かべていたのを見ていたので、そのギャップがまた痛々しかった。明日の予選ラスト走は6号艇。今日の“失点”を大外から埋められるかどうか。準優好枠を得るためにも、気合を入れたい4日目となる。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)