BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆け云々はともかく

 勝負駆けの日だからといって、ピットの空気が昨日までと変わったということはない。ようするに、ノルマを抱えている選手でも、そのノルマが比較的楽である選手でも、またすでに準優行きは厳しくなっている選手でも、変わらずに調整に懸命であるということだ。
 たとえば、ペラ室のいちばん手前には海野ゆかりが陣取ってペラを叩いている。海野は昨日時点での想定ボーダー5・50に届くには、2走5点でいい。片方がシンガリ負けでも、もう一方で4着以上を獲っていれば問題なさそうという条件である。それでも、余裕をかましてもいないし、調整の手を緩めることはない。今日の成績によっては準優で内枠を狙える立場でもあるし、そうでなくともまさか油断するような海野ではないだろう。

 今日1回乗りで、勝っても5・20までしか勝率を引き上げられない今井美亜にしても、懸命なペラ調整が続いている。もちろん試運転とセットだ。ボートレースが何が起こるかわからない、というのもあるだろうし、このままでは終われないという強い思いもあるはずだ。また、手応えの悪いモーターに対しては何としても立て直したいというのは、ボートレーサーの本能のようなものでもある。

 今日が誕生日の高田ひかるは、今日の2走を上位着順で乗り切りたいところ。切り札の伸びを引き出そうということだと思われるのだが、やはりペラ調整に没頭しているよう様子が見えた。後半が1号艇なので、その後の調整がまた難しいところではあるだろうが、まずは前半でしっかり結果を残さなければ始まらない。高田にとって今年の誕生日は、ベリービージーな一日となっている。

 3日目を終えて首位に立っている實森美祐にしても同様だ。仕上がりはかなり高いレベルになっていると思われ、どちらかといえば動きは穏やかなほうだと思うが、キビキビハツラツな動きは、今日も非常に目立っている。この状況に対して緊張感はどうか、というのはもちろん気になるところではあるが、見ている限り、それが妙な影響を彼女に与えているようには思えなかった。

 1R、細川裕子が差して1着。しっかりと後半につなげる勝利であった。レース後は勝利者インタビューを受けて、その後すぐにまた水面へと出ていった。後半が7Rと間隔がそれほどないということもあるだろうが、その素早さにはとにかく目を見張ったものだ。勝利の余韻は予選突破を決めたあとに味わえばいい。今はただ7Rに全力投球。そんな風情であり、そうした動きを見るのは実に爽快なものだ。

 2R1着の櫻本あゆみも、勝利後にのんびり過ごすつもりはまったくないようだった。次は10Rと、細川に比べれば少々、時間に余裕はあるけれども、そんなことは関係ないのだ。連続5着で始まり、尻上がりに着順を上げて迎える予選最終走。4号艇の櫻本といえば、やはり持ち味はまくり。カド一撃を狙える仕様にするべく、調整は続いていく。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)