BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――前検感触

 何人かの選手が口にしていたのが「温水パイプがついた」ということ。冬季はキャブレターの凍結防止のために温水パイプを装着し、これをつけることで「重くなる」という感触を漏らす選手も少なくない。桐生順平は「温水パイプがついてから乗るのは今年初めて」ということで、やはり違和感が残る前検だったようである。これを装着した後、あるいは春に外した後には相場が一変するケースもあるので注意が必要。選手たちは、そのことも勘案しながら、明日は調整に励むことになるのだろう。

 それと関連しているかどうかは何とも、ではあるが、ドリーム1号艇の馬場貴也と2号艇の山口剛は、キャブレターを分解して、洗浄を行なっていた。今日の手応えはそこまで悪くはなさそうとのことで、いわゆる外回りの整備。前検では決して珍しい作業というわけではないが、温水パイプという単語を何度も聞いた後だけにやはり気になるところ。

 で、その作業テーブルが整備室出入口のすぐ脇にあるので、間近で眺めることができたのだが、お湯で洗浄するんですね。彼らの目の前にあるボウルから湯気のようなものが立っているのが見えたので、何の液体だと最初は訝ったのだが、ボウルにはっきり「お湯」と書いてあった。そして、部品を金属製の網に入れて、ラーメンやうどんを湯がくような感じでゆらゆらさせたりして。その作業自体を見たのは初めてだったので、まるで馬場や山口が屋台の親父さんのように見えたりして(笑)。それは言い過ぎとしても、こうした作業があるのだと、今さらながら感心したのであった。

 整備室の奥のほうでは、瓜生正義が本体整備を行なっていた。瓜生が前検から本体をバラすのは珍しいことだと思う。瓜生は賞金ランク15位。グランプリ出場が安泰というわけではない。だからこそ、早々に本体を割って、気になる点を解消しようとする……というのは、固定観念にとらわれた感想という気がしないでもないのだが、チャレンジカップなのだから、そういううがった見方もまた楽し、というわけなのである。

 そのすぐ近くでは赤岩善生も本体整備をしていたが、これはある意味、彼のルーティンである。前検でまったく本体に手をつけないときはむしろかなりの好感触なのであって、だから本体に手をつけるのは彼としては当たり前の光景だ。そのうえで明日の朝にはどんな作業をするのか、気にかかるところではある。

 一方、エース機を引いた鳴門のエースは、馬場や山口と同様にキャブレター調整。地元SGで最高の相棒を手にして、さぞや意気軒昂かと思いきや、実に落ち着いた様子の前検なのだった。その調整中には、寺田千恵が田村の前に陣取って、ふたりでおかしそうに笑いながらの作業となっていた。なんとも和やかな光景は、これがチャレンジカップということを忘れそうになるほどだった。まあ、明日からはぐっと気合が乗っていくものと思われるが、あまり入れ込みすぎていないのは好材料と捉えておこう。

 女子では、平高奈菜の表情が冴えない。ドリーム戦の記者会見でも、実に歯切れの悪い返答で、今後の作業の方向性もまだ掴めていないようだった。ドリーム1号艇ではあるが、「鳴門だけに、このままでは危うい」ということで、明日は朝から調整に奔走することになりそうだ。賞金ランク2位だが、守屋美穂が優勝すれば逆転することになる。つまり、トライアル初戦1号艇を逃すことになる。なんとか逃げ切るべく、まずは調整に気合を注入したい。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)