グランプリ3日目というのは、やや風景が変わる。というか、こちらの視界が変わるというか。昨日はトライアル組として見ていた選手を、シリーズ組として見ることになる。そんな選手が6人いることが、こちらの見方に変化をもたらす、というか。毒島誠は1stからシリーズに回るのがこれが初めて。だから、さくさくと作業をしている毒島を、まさかシリーズ組として見ることになるとは、と戸惑ったりする。
ピットに入った時間帯に、ちょうどトライアル2ndの公開インタビューが行なわれていて、12人が丸ごとピットには不在だった、というのも大きい。瓜生正義がボートを水面に下ろしているのを見て、「あれ、なんでここにいるんだ?」とふと不思議な心持になったりするのだ。2ndに進めなかったのだから当然の景色ではあるが、トライアルを走っていたはずの瓜生がそこにいるということに、どこか脳みそが追い付いていないわけだ。
1stからシリーズに回った選手たちについては、ボートの塗装も変わった。トライアル組はゴールドに塗られたボートを使用していたわけだが、わずか一夜でシリーズ仕様のシルバーに変わっているのだ。それによって取り付けに変化も生じる? 上條暢嵩が実に懇切丁寧に、定規を使用して取り付けを確認していた。島村隆幸や、インタビューから戻ってきた馬場貴也にアドバイスを求めながら、かなり時間をかけていたのだ。消化不良に終わったトライアル1st。シリーズに回ったのは悔しいことだが、一からしっかり出直そうという様子にも見えたものだ。
1R、やはり1stからシリーズに回った石野貴之が5着に敗れた。4コースからスタートを決めた宮地元輝が一気に内を叩いてのものだったから、まあ致し方ないところ。シリーズに回って気落ちがあるのか、と穿つ向きもあると思うが、それも否定はし切れないとはいえ、レース後の悔しそうな振る舞いを見ていると、石野もまたこちらで存在感を示そうとしているように思う。予選はあと2日しかないことを思えば、この大敗は痛いが、後半のシリーズ復活戦を含めて、巻き返しに期待したいところだ。
2nd組は、インタビューから戻ると、すかさずそれぞれの作業に取り掛かっている。今日からレースがいよいよ始まる賞金ランク1~6位の面々も、そのレースにはまだまだ時間はたっぷりあるにもかかわらず、すぐに自艇のもとに向かい、調整の準備を始めていた。先にインタビューを終えた11R組が先にピットに戻っているのだが、1号艇の山口剛は速攻でモーター周りの点検。時間に余裕があるなどとは微塵も感じてはいない様子だ。
白井英治は、戻り際にたまたま顔を合わせると、にやにやっと歩み寄ってきて「今節は当たってるの?」なんて軽口を飛ばしても来たが、いざピットに足を踏み入れればペラ室へ直行。リラックスしながらも、特別な戦いへのメンタルはきっちりと仕上げてきているように見える。
丸野一樹については、昨日までより緊張感を高めているように見えた。6号艇発進で、たった2走しかないトライアル1stのほうが状況としては切羽詰まっていたようにも思えるのだが、ここからがさらなる勝負どころだと捉えているのか、作業をしている際の表情が力強く、またややカタめになっているように思える。去年の経験から、さらにギアを上げるべきタイミングだと感じているのかもしれない。
12R組の磯部誠は、ピットに戻るや本体を外し、整備に取り掛かった。昨日はズバリ展開を突いて1着。しかしその足ではまだ物足りないと感じているのだろうか。3日間たっぷりと時間をかけて、2連対率上位のモーターを仕上げてきた賞金ランク上位6名。その差をさらに詰めんと、昨日まで以上に奮闘しようということだろう。
ステージが変わったグランプリ。間違いなくボルテージが一段も二段も高まった!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)