BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

同期、ツープラトンV!!

12R優勝戦
①鎌倉 涼(大阪)19
②砂長知輝(埼玉)26
③中田夕貴(埼玉)24
④三村岳人(岡山)07
⑤西橋奈未(福井)11
⑥中 亮太(福岡)12

『125期の下克上』砂長が、レディースの総大将・鎌倉をズブリ差し抜いた。6人でもっとも遅いコンマ26での優勝は、なかなかにレアなケースでもある。そんなサプライズな下克上を実現できたのは、「同期・三村の強烈なアシストがあったから」とも言えるだろう。

 そう、↑上記のとおり、スリット隊形がヤバすぎた。昨日までコンマ10前後で安定していたイン鎌倉が、やや握り遅れてのコンマ19。さらに砂長、中田がドカ遅れに近い凹みで、4カドの三村は泣く子も黙るコンマ07!!!!
 ま、また優勝戦でもやらかすのか? 3日目の再現なのかっ??
 心の中で叫ぶ。3日目に4カドからコンマ08で突出、一撃まくりで1400倍を演出した光景と完全に重なった。ただ、大きく違ったのはイン鎌倉の伸び返しだ。スリットで1艇身近く遅れていたのに、自慢の行き足をフル稼働してその差を縮める。

 両者の隊形的には「鎌倉を行かせてまくり差し」の選択もあったはずだが、125期の若武者は迷うことなく大本命に襲い掛かる。個人戦と団体戦の主役を担う鎌倉が、全身全霊で若き侵略者を食い止める。昨今ではめっきり減った【インvsカド】の大競り展開だ。火花が散るようなぶつかり合いで、2艇が外へと弾け飛ぶ。生き残ったのは鎌倉だが、接触の影響でおいそれと前には進まない。

 勢い、凄まじいスピードで突き抜けたように見えたのは、5コースから三村を徹底マークした西橋。このまま差し抜けて独走か、という勢いだったが、出口の引き波で舳先が浮き上がって失速。その原因は分からないが、シンプルに引き波を突き抜けるだけのパワーが不足していたか。

 代わって最内から鋭く伸びたのが、コンマ26で死に体だったはずの砂長だった。くるり小回りしての出足、行き足は軽快そのもの。態勢を立て直した鎌倉の中間速もゴキゲンだったが、砂長には届かない。2マークのスピード差しも一歩及ばず、2周1マークの全速握りマイも届かず、最後まで追って追って追って、ついぞ捕まえることができなかった。

 125期・砂長知輝、デビューから3年2カ月での初優勝、おめでとう! 同期では主席・定松勇樹に次ぐふたり目の水神祭。砂長クンに関するプチ情報は3日目のTOPICSでアップしたが、養成所リーグ4・92という劣等ゾーンから、今や押しも押されぬ「125期の第二人者」になったと断言してもいいだろう。

 もっとも、今日の水神祭は同期・三村に高級焼肉を何度か奢るべき展開ではあったが(笑)。とにかく、今後もセンターコースから徹底して自力で攻める「戸田のまくり怪獣(←意外と少ない)」として大成してもらいたい。

 さてさて、レースの途中に巻き戻そう。先頭・砂長、2番手・鎌倉、3番手・西橋の隊列が続く道中、私の視線ははるか後方にも注がれていた。この大会ならではの風物詩=団体戦ポイントの行方だ。まだ馴染みのないファンのために、もっとも簡単な判別方法を記しておこう。
★パターンA/1着-2着、1着-3着を獲りきったチームは後続の着順に関係なく勝利。
★パターンB/それ以外は、6着を獲ってしまったチームが負け。
(フライングなどの事故レースを除く)
 で、この優勝戦の道中はパターンBだからして、入れ替わりがない限り「6着を獲ったほうが負け⇔獲らなかったほうが団体戦の優勝」となる。3周目に突入してチラリ後方に目をやると、大きく引き離された最後方を紅組の中田が懸命に走っていた。2周目あたりは4着争いをしていたから、何かしら致命的な失速を強いられたのだろう。
――個人戦も団体戦も、白組か……。
 この大会(10シリーズ)をすべて現場で観戦してきた私は、呆れるほど迅速にこの結末を弾き出した(苦笑)。団体戦の最終ポイントはこうだ。

☆今節の団体ポイント

 紅組2940白組

 大差のようだが、11R終了時点では紅組が29-28と1点だけリードしていた。5日目まで、紅組は1日たりとも勝ち越すことができなかったのに。今日の9Rまで17-28のウルトラ大差だったのに……そう、今節の団体戦を眺め続けて、私はようよう新たな事実(?)に気づいた。
――総体的な力量でルーキーズが圧倒していても、つまり5日目まで白組が大差でリードしたとしても、レディースに8人ほどのトップ級を揃えれば、最終的に互角レベルの団体V争いになる。

 どんなに白組が1ポイントずつ地道に貯金しても、最終日10R~12Rの点増しレース(計24点)ですぐに追いつき、追い抜かれる可能性が高いのだな。今日の10Rと11Rのように。かつて、この大会は総体的な力量を揃えることにヤッキになっていた時季もあったが、今回の極端な斡旋(女子レーサーの実力差がやたらと激しい)でも最後は手に汗握る接戦になる、と気づいた次第だ。もちろん、11Rで決着がついてしまうリスクも大きいけれど。
 今後、両チームがどんな力関係になるか分からないが、「今までより幅広い層の選手を斡旋しても、スリリングな団体戦になる可能性が高い」という見通しが立った気がするのだが、どうだろうか。(photos/チャーリー池上、text/畠山)