BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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冷たい風のなか開幕!のピットから

 強くて冷たい風が吹き荒れるなか、多くの選手が試運転に励む。初日の光景としては当たり前ではあるが、なかなか大変な気象条件ではある。
 1R発売中に、大山千広がいったん試運転を切り上げて、ボートを陸に上げた。ドリーム組としては早い動き出しとも見えるが、何しろ久々の実戦である。少しでも水面の感触を確かめたいという部分もあっただろうか。

 大山は、ボートを所定の場所に移動すると、しばし動きを止めて、モーターを見つめた。いや、モーターを見つめたというよりは、思案を巡らすなかで視線がモーターに向けられたといったほうがいいか。1分ほど、身じろぎもせずに立ち尽くした大山。やがてカポックを脱いで、操縦席にぽんと置き、またしばし微動だにせずに思案。どれだけそうしていただろう、大山はついに意を決したように動き出した。ボートを引っ張って動かし、そのまま整備室へと入っていったのだ。ボートを整備室へ持ち込むということは、本体整備だ。彼女の思案はつまり、おそらくは足りないと感じたパワーをどう底上げするのか、何をどう整備するのか、そういうことだったのだろう。
 整備室に入るとすぐさま整備士さんに声をかけ、しばし会話を交わす。蒲郡のモーターを知り尽くす整備士さんの意見にも耳を傾けながら、これから本体に手をつけていくことになるだろう。どうやら忙しい復帰戦となりそうだ。

 整備室をひとわたり眺めると、これがまた錚々たる顔ぶれが作業を行なっているのだった。守屋美穂も本体整備なのか、点検なのか、ともかく本体と向き合っている様子で、1R発売中になってボートに装着している。プロペラが交換になっており、ペラ室にこもっているものと想像していたのだが、時間があるドリーム1回走りだけに、本体のほうも万全を期しているのだろう。

 平高奈菜の姿も整備室にあった。もっとも、大きな作業をしている様子はなく、外回りの点検といったところか。平山智加の姿もあって、こちらはギアケースを手にしていたので、調整を行なったものと思われる。

 香川素子は、正真正銘、本体整備である。10R1回乗りと時間がある初日に、しっかりと本体に手をつけたわけだ。というわけで、タイトルホルダー目白押しの整備室。B級選手も出場している今節だけに、その豪華な顔ぶれには目もくらむというもの。

 高田ひかるが今日も整備室にいて、作業内容はキャブレター調整(交換かもしれないので、直前情報にご注意を)。ペラはもちろんのこと、本体、外回りと手を付けるべき部分にはすべて手を入れてあの伸びを引き出すわけである。ドリームではどれだけの伸び足を披露してくれるだろうか。

 さて1R。オープニングを制したのは5コースまくり差しを放った魚谷香織だ。まさに快勝だが、ピットに戻った魚谷は特に笑みを浮かべるでもなく、戦った5人に頭を下げて回った。128期の後輩、宮崎つぐみにも神妙に「すみませんでした」と丁寧に声をかける。水の上では先輩も後輩もないが、レース後の勝者が敗者に対する敬意にも先輩も後輩もない、のである。

 宮崎はといえば、ヘルメットを脱いだ瞬間、泣き顔があらわれている。2周2マークで浜田亜理沙と接触。浜田が大きく後退して6着となり、これで宮崎は不良航法をとられてもいる。宮崎はまずボートリフト上で浜田に平謝り。ピットにあがってからもう一度、浜田に歩み寄って頭を下げた。浜田は淡々と右手を掲げて返している。とはいえ、先輩に迷惑をかけたという思いが強いのだろう、泣き顔は消えない。同支部の先輩である落合直子に言葉をかけられる間も同様なのだった。19歳の新人にとって、その罪悪感を消すのは簡単ではなさそうだった。月並みだが、これも経験。事故にはつながらなかったことを幸運と捉え、今後につなげていくしかあるまい。怯まずに頑張れ!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)