BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――苦いデビューとニコニコ顔

 初っ端からいきなりハプニング! 朝からJLC等でレース映像をご覧いただいた方なら、スタート展示がなかなか始まらなかったことにお気づきになっただろう。1Rスタート展示は10時15分の予定だったのだが、この時刻になっても展示用ピットには誰もおらず、始まる気配がなかったのだ。どうやらスリット写真を撮影するための危機にトラブルがあったようで、1Rメンバーは待機状態となっていた。結局、15分遅れて始まったのだが、いきなりのハプニングにピットは騒然……とはまったくしていなかった。我々報道陣はどうしたどうしたとわいわいしていたが選手は実に淡々としたもの。プロペラ調整組はまるで意に介さずに調整に集中していたし、整備室にいる選手たちも水面のことは気にせずしっかり作業。喫煙所で休憩していた選手たちも、特に気にすることなく談笑していた。写真はプロペラ調整をしていたドリーム1号艇の馬場貴也です。泰然自若というか、なんというか、さすがトップレーサーはこの程度のことには動じないですね。皆様、今日は締切時刻が変わっているレースがあるので、ご注意のほどを。

 というわけで、遅れて発走となった1R、水神祭の大チャンスだった1号艇の末永和也は、スタートで後手を踏んでしまい、先マイはしたものの窮屈な旋回で流れてズブズブと差されてしまった。ほろ苦のSGデビューだ。レース後はさすがに顔色を失っている雰囲気だったが、どうやら自身と接触して転覆した濱崎直矢を気に掛けていたようで、末永はすぐさま医務室へと走った。敗戦もそうだが、事故に絡んでしまったことも末永の気持ちを落としていたようだ。

 といっても、濱崎は選手責任の転覆であって、実は末永は気にしなくてもかまわないのであった。幸い、濱崎は無事。レスキューから降りる際、ちょうどエンジン吊りに選手が集まっていて、同期の毒島誠が声をかけると、濱崎は悔しそうに顔を歪めながら、首をひねりまくった。毒島は笑顔だったから、身体に問題はなさそうだ。濱崎もまたSGデビュー戦で、こちらはほろ苦どころか激痛の初陣となってしまった。選責だから厳しい予選道中となりそうだが、巻き返しの一撃にも期待したい。

 勝ったのは土屋智則で、今年のSG戦線の1着一番乗り! のぞいたスリットから、冷静に末永を先に回しての差し切りで、さらにまくり差しで迫った磯部誠を2マークで捌いての勝利でもあり、レース後は実に朗らかで、笑顔が絶えなかった。出迎えた毒島や関浩哉もニコニコ顔だ。

 笑顔といえば、2Rを勝った仲谷颯仁もまたニコニコ顔。ピットにあがり、しばらくは神妙な顔つきで、エンジン吊りの仲間たちに頭を下げていたのだが、塩田北斗が何か声をかけると、たまらずニンマリ。もう我慢できん、といった感じで、笑顔が爆発したのだった。それを見ていた羽野直也もニコニコ。なんだか楽しそうなレース後なのであった。

 それにしても、仲谷のエンジン吊りに集まったのが、塩田、羽野、新開航と、岡崎恭裕&篠崎元志&前田将太はいたものの、世代交代を感じさせる面々であった。瓜生仁志西山らがいなくても、若手がこれだけ揃うのだから、福岡支部の層は本当に厚いな、と感服した次第。

 このレース、2着は今垣光太郎だ。6号艇6コースからの2着は、今後を考えると実にデカい。しかも、2番手を競った桐生順平とは、2周目ホームでの足色が明らかに違った。桐生が今垣に声をかけて、両手をモーターに見立てながら「伸びましたねー」と感心していたほどだ。今垣も勝利には届かなかったものの、手応え十分の2着でヘルメットの奥の目が細くなっていた。笑顔になっていたのは明らかだ。後半9Rの4号艇にも期待大!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)