BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――92期の絆!

 9Rで濱崎直矢が水神祭! 4R1号艇でSG初勝利の大チャンスを迎えていたが、ここは敗れての出直しの一番。2コースから差して先頭に立ち、念願の初白星を手にすることとなった。

 椎名豊のエンジン吊りに加わらなければならない毒島誠が、急ぎ足で濱崎が帰還するリフトへと向かい、大拍手で出迎える。おめでとう!と短く言って、すぐに椎名の出迎えへ。わずかな時間でも、即座に祝福の声をかけたかったのだろう。エンジン吊り後も嬉しそうに歩み寄って声をかけており、濱崎は勇ましい笑顔を見せていた。

 そう、二人は同期生。やまと学校(現ボートレーサー養成所)時代は、リーグ戦勝率で濱崎は毒島を上回っている。デビュー期勝率も濱崎が上。毒島はデビュー2期目もB2級にとどまったが、濱崎はB1級に昇級している。しかしそれから約20年、二人の立場は逆転した。毒島がSG初制覇を果たしてからも10年近くが経っていて、濱崎はこれがSG初出場だ。お互い複雑な心境もあったかもしれない。しかし、そんな濱崎のSG初勝利を誰よりも毒島が喜んだ。交わした視線にはさまざまな意味が込められていただろう。

 このレースの2着は大峯豊。同期生ワンツーだ! そう、濱崎の初勝利を同期の桜が追走していたわけである。ちなみに、92期でデビュー2期目にB1級に昇級できたのは2人だけで、それが濱崎と大峯。そのポテンシャルは本来、毒島にも劣っていないのである。レース後、濱崎と大峯は笑顔の交歓! それは健闘を称え合う型通りのものではなく、心安い間柄だからこそ交わせる、渋みあふれるものだった。やっと勝ったよ、後ろで見てたぞ、そんなセリフをつけたくなる、濱崎と大峯の無言の会話であった。

 このレースは原田幸哉が6着。準優進出は絶望的となった。やはり苦々しい表情であがってきた原田は、その後、松井繁と長いこと会話を交わした。松井と原田の絡みは実に多く見かけるもので、もはや盟友とでも呼びたくなる関係であるが、このときは松井がアドバイスを送っていたか、あるいは原田が足的な事情を語っていたか、であろう。深刻そうな顔で話し合っていたのを見ると、かなり厳しい状況のようだ。原田はその後、プロペラ調整を始めていたが、松井の助言が効いてくるのだろうか。

 ところで、4号艇で登場なのに黄色いカポックを着ていた磯部誠。10R発売中に行なわれたスタート練習でもまだ黄色かったので、まさか……と本人にその点を指摘してみた。「ああ、(カポックを取りに行ったとき)青がなかったんですよ」とのこと。まあ、ごくごく当たり前の理由なのでありました。そんな話をしているうちに、以前、片岡雅裕が4号艇なのに黒のカポックでスタート展示に出てしまい、再展示をしたことがあった、という話になった。「あ、あれ、メモリアルでしょ。あんなことしたのに優勝しちゃってねえ」。そう、それがまるで厄落としだったかのように、片岡は6号艇からSG初制覇を成し遂げてしまったのだ。ということは、黄色のままで展示に行ったら……とジョークを投げると、磯部の目がパッと光った。さらにニヤリ。ま、まさか……。はい、12Rスタート展示、ちゃんと青のカポックを着てました。そりゃそうだわな(笑)。カポックがどうとか関係なく、SG初優勝をめざせ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)