BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――銀河系の新兵姿

 やっぱり感慨深いのである。銀河系軍団の新兵姿。今節登番下から3人が、田村隆信、山本隆幸、井口佳典。85期生だ。文字通りの新兵ということで、モーター架台を置き場からリフトの脇に運んでエンジン吊りの準備をしたり、マグネットで鉄くずを集めたり。僕の感覚は「懐かしい」であって、SGのピット取材を始めた18年前、その頃まさに85期生が新兵であることが多かった。これに森高一真や湯川浩司が加わって、健気に駆けずり回っていたっけ。ようするに、その頃のSGメンバーがそのままマスターズチャンピオンにスライドしたようなものなのですね(すでに引退された選手や、当時はあまりSGに出ていなかった選手もいるけれども)。

 井口がドリーム出走ということで、前検は1班。その準備もあるので、前半は山本と田村が中心に新兵の仕事をこなしていた。山本がベテランになったというのも、なんだか感慨深くて、BOATBoy編集長になった直後に常滑周年の取材に行ったらGⅠ初優勝を果たしている。もちろん当時は期待の若手だった。

 後半は、山本と田村が最終9班なので、すでに特訓とタイム測定を終えている井口が中心となって動いていた。これがもう、彼のレースぶりらしいキビキビとしたもので、また実に素早い動き。ドリーム記者会見で「陸の上ではしっかり仕事します」と微笑とともに語っていたのだが、まさにその通りの仕事っぷりなのだった。9班の前検航走が終わると、照明の落ちた係留所へと降りていって薄暗い中で鉄くず集め。こっちの勝手な思い入れだけれども、一緒にキャリアを重ねてきたという感覚が彼らにはあって、僕のなかでは永遠の若手なのだと改めて感じた次第。

 その3人と一緒に精力的に動いていたのは齊藤仁。登番でいえば下から8番目は厳密には新兵から外れるのだが、下から85期、84期(古結宏)、83期と期では3番目の若さだから、登番に関係なく自身を新兵と任じているのか。というか、そもそも齊藤は人格者であって、先輩の石渡鉄兵も「仁さん」とさん付けするほど。初出場の“新人”ともなれば、そういう姿は想像できるものであった。やっぱり仁さんは素敵だ。

 昨年、一昨年は新兵だった赤岩善生は、ようやく新兵仕事からは解放されたわけだが、しかしながら愛知支部では最も登番が若いから、ふんぞり返っているわけにはいかない。今日の赤岩は、前検航走後はさっそく本体を割って整備。これ自体はある意味ルーティンであって、珍しいものではないが、その合間を縫って先輩たちの艇旗艇番を準備したりと、とにかく忙しそうであった。昨年一昨年の新兵仕事ぶりも実に精勤であったが、やるべきことはきっちりやり通すのが、赤岩らしさと言える。

 本体整備といえば、松井繁も本体を割っていた。ドリーム会見で松井は、「今節も淡々とやります。ただ、僕の淡々は普通の人の淡々とは違うから」と言っていたものだが、松井は本体整備をするかたわら、近畿の選手が水面から上がってくると猛ダッシュでリフトへと走り、エンジン吊りが終わると猛ダッシュで整備室へと戻っていった。むしろドタバタしているようにも見えるわけだが、これが松井の“淡々”なのである。ようするに、いつも通りやるべきことをやり通すのが王者の淡々。忙しそうに見えても、松井にとっては当たり前のことなのである。

 それにしても、今日は早々に本体を割る選手が多いように思えた。3年前の名人・村田修次もその一人。村田のスタート特訓&タイム測定は後半の時間帯で、つまりは今日の整備終了時刻まであまり時間が残されていなかったのだが、それでも構わず本体を割っていた。今日やれるだけやっておこう、ということか。

 意外なところでは、ドリーム1号艇の今垣光太郎。数字のあるモーターを引き、ドリーム会見でも手応えを感じていそうな雰囲気だったのだ。ペラを見たら非常にきれいに叩かれていて、「今回はノーハンマーで行けそうです」。今節は余裕をもって過ごせそうだとも言っていたのに、いきなり本体分解。まあ、点検程度という可能性もあるだろうが、これも今垣の“余裕”ということだろう。松井にしろ今垣にしろ、いつまでも第一線を張れるだけの根拠はこうした部分にあるのだろう。マスターズチャンピオンはやっぱり、偉人の偉人らしさを改めて実感できる大会である。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)