BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

波乱と快挙

10R
①茅原悠紀(岡山)  05
②深谷知博(静岡)  06
③下條雄太郎(長崎)F+02
④稲田浩二(兵庫)  06
⑤倉持莉々(東京)  01
⑥桐生順平(群馬)  02

 大波乱と大快挙が一瞬にして両立した。
 大波乱は、3コース下條が痛恨のフライング。気がはやりすぎたか、自慢の行き足が噴きすぎたか……とにかく、向こう1年間のSG出禁となる“重罪”を犯してしまった。

 さらに、この勇み足は痛ましい二次災害につながってしまう。まだFとは知らない下條が絞めまくりを敢行し、イン茅原が身体を張って迎撃ブロック。その窮屈な応戦は外の下條×内のターンマークの両方に接触し、バランスを逸して水面に投げ出された(選手責任で賞典除外)。なんという悪夢。

 そして、その直後に快挙と呼ぶべき事件が起こる。バック最内から先頭に躍り出たのは、女子レーサーの莉々!!!! 12号機の抜群パワーと軽量の女子力をフル稼働して、雌雄を決する2マークを先取り。1ミリのロスもない素晴らしいターンでファイナルの内枠を鷲掴みにした。去年のクラシックで遠藤エミが優勝しているから大快挙は言い過ぎかも、だが「女子戦を3度優勝しただけの29歳が2度目のSG出場で優出」はかなりのサプライズとお伝えしていいだろう。たとえ、悪夢のような事故レースだったとしても。

 相棒の12号機は、三島敬一郎十傑の第三席に相応しい超抜仕様。そのパワーは今日のターン出口⇒2マークまでの半周を見てもらうだけで明らかだ。直線は深谷や稲田を子ども扱いするほど伸びまくり、2マークの鋭角旋回でもまったく流れることなく前に前に突き進んだ。明日の枠番はまだ分からないが、機力的にはどんな展開からでも優勝できるだけのポテンシャルがある。乗り手のハートがそのパワーにぴったり連動すれば、「水球女王のSG戴冠」というどこかのCMのような出来事も起こりうるだろう。

 2着は莉々に出し抜かれつつ、2マークを冷静に対処した深谷。1周にも満たないレースで相棒25号機のパワーは断定できないが、莉々より劣勢に見えたことだけは間違いない。昨日までどおり「パンチ力はないけど安定感のある上位のひとつ」と見立てておきたい。

節イチの余裕

11R
①石野貴之(大阪)12
②篠崎元志(福岡)12
③前田将太(福岡)11
④瓜生正義(福岡)12
⑤平本真之(愛知)32
⑥宮地元輝(佐賀)25

 大波乱から一転、こちらは非常に穏便かつ順当な実戦となった。戦前に波乱の匂いがあったとすれば、宮地がチルト1・5に跳ねたことか。これは「パンチ力を付けて自力で平本を飛び越えて石野まで潰しに行くぞ!」の意思表示だろう。

 だがしかし、スリットラインは↑のとおり外の2艇がダダ凹み。宮地は平本を叩いて全速のまくり差しを敢行したが、スリットで後手を踏んだ分だけ届かない。その間に超抜パワーの石野が1マークを先取りして独走態勢を築く。昨日は寄りすぎ握りすぎの不安定なターンだったが、今日は完璧なインモンキーで明日の2号艇以内を確定させた。相棒の14号機については前検から何度も何度も書いてきたので、ここで重ねる必要もないだろう。全部の足が強力なS【出S・直S】で文句なしの節イチ。それだけで十分だ。

 2着は分厚い地元3人トリオの中から、バック直線で絶対エース瓜生が抜け出した。4カドから、内の前田が握った瞬間の差しハンドル。2艇身ほど後方から篠崎兄がしぶとく食らいついたが、その動きを背中で感じながら激辛の位置取りで反撃の芽を摘み取った。さすがの貫禄だが、元志にせっつかれた足色は五分五分か、むしろ元志にわずかな分があったように見えたのだが、どうだろうか。

亀裂の刃

12R
①毒島 誠(群馬) 19
②山田康二(佐賀) 21
③椎名 豊(群馬) 24
④馬場貴也(滋賀) 27
⑤濱野谷憲吾(東京)14
⑥磯部 誠(愛知) 17

 本命の11Rを挟んで、またまた⑤②⑥。こっちの大波乱は泣く子も黙る1200倍オーバーのとんでも配当!!
 その最大の原因は、↑アレを見れば一目瞭然だろう。バラッバラのスリットラインだ。私は予想欄で「どこかしらに凹凸亀裂が生まれるかも??」などと書いたのだが、このレースでその断層が現れた。圧倒的一番人気の毒島は、やや遅い程度のコンマ19。

 ただ、そこから段々に遅くなり、4カド馬場がドカ遅れと言っていいコンマ27……馬場はスター展示で3コースのスローを選択した(ピット離れで遅れた椎名をけん制するようなコース取り)。推測の域を出ないが、直前に4カドのリハができなかったことが、思わぬ踏み遅れにつながったのではなかろうか。

 何にせよ、その外隣の憲吾がフツーにコンマ14で発進してしまっては、内4艇はたまらない。緩い勾配のスロープをるんるん駆け降りるように内艇を呑み込み、勢いラスボスの毒島までエイヤッの気合で握り倒した。なんとか抵抗しようとした毒島は、珍しく慌ててバランス崩壊。落水しそうな体勢をやっとこさ立て直し、大差のシンガリを走るのが精いっぱいだった。

 だからして、憲吾の勝因ははっきり「スタート勝ち」と断定していいだろう。少なくとも私は、1ミリたりともパワー勝ちとは認めるつもりはない。機力云々を言うなら、むしろはるか前を行く憲吾にじりじりにじり寄り、ゴール手前で2艇身差まで追いつめた2着の山田の方がパワフルに見えた。もちろん、百戦錬磨の大ベテラン憲吾がタイムアタックの如き全力疾走するとも思えないけれど……(笑)。
(photos/シギー中尾、text/畠山)