1Rで同期競り! 2番手を争った吉田拡郎と向後龍一、90期の同期生だ。先行する吉田に食らいついた向後は、2周2マークで気合の2番手先マイ。これで並走に持ち込むと、3周1マークでツケマイを放って吉田を抜き去ったのだ。向後は1着勝負だったが、しかしボーダーの上下はいくらでもありうること。2着で1点足らずなら滑り込みも十分ありうるのだ。その気合が勝ったかどうかはともかく、同期のSGウィナーを競り落としたのだから、これはお見事!
一方、吉田はやはり悔しさ満点で、向後のレース後の挨拶には軽く会釈した程度。吉田も勝負駆けであるのは同じで、こちらは2着2本が必要だったから、3着に下がったことで後半は1着勝負となっている。7R1号艇はまさに必勝態勢! それにしても同期競りって、本当に激しくなりますね。仲がいいからこそ、絶対に負けたくないという思いになるのでありましょう。
2Rでは、もう一人の同期である多田有佑が健闘! 3コースからのまくり差しはインの村岡賢人にまで届くかという角度で、惜しくも舳先が掛かりはしなかったものの、2番手態勢となっている。2マークでは初動のタイミングを間違えたか、ハンドルを切り直している間に椎名豊のツケマイを浴び、さらに松井繁との3番手争いにも敗れてしまったが、見せ場はおおいに作った。
そんな多田に寄り添ったのは菊地孝平。岩手出身と山形出身の東北連合!? 菊地に以前聞いたところによると、仲のいい石野貴之が同期の多田にアドバイスしてあげられないかと請うたきたのだそうだ。一時は4期通算勝率が微妙だった多田を石野が心配し、菊地に相談。菊地はお安い御用とばかりに、甲子園などで斡旋が一緒になったときには目をかけているわけだ。菊地はニヤニヤとスキンシップをとっており、惜しかったじゃんかよ~、といった感じ? SG記念戦線を走る菊地と一緒になる機会はなかなかないだろうし、多田にとって甲子園は厳しい戦いではあるが、菊地の薫陶を受けられる一節でもある。菊地の後押しを受けながら、残り2日でなんとか1勝を!
その2R、逃げ切った村岡賢人は後半に望みをつないだ。10R4号艇で3着条件。山陰地方の意地を見せてもらいたいところ。その村岡が、控室への帰途、2号艇だった松井繁に話しかけた。どうやら足的な話だったようなのだが、支部がまるで違う王者に声を掛けたというのはなかなかの勇気ではあるまいか! 松井は他地区であってもそうした声掛けに冷淡な態度をとるような男ではなく、村岡に丁寧に言葉を掛け続けている。もう10年以上前、SG初出場だった川上剛がレース後、思い切って松井にアドバイスを求め、やはり丁寧な言葉をもらっていた場面を思い出した。村岡は川上よりさらに松井とは年齢やキャリアの差があるわけだから、よくぞ王者に声を掛けたと称えたくなった!
松井はといえば、レース直後はやや不機嫌そうにも見えていたのである。松井は3着2本の勝負駆けで、なにしろ7Rは6号艇だから、少しでも上位の着で後半につなげたかったのだが、いったんは4番手を走っての逆転3着。悔しさが勝っていたのは当然だろう。それでも後輩の言葉にしっかり応えたあたりが王者の振る舞いである。やっぱり貫禄が違うなあ。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)