百裂拳の予感
10R
①豊田健士郎(三重)13
②上條暢嵩(大阪) 15
③長田頼宗(神奈川)14
④菊地孝平(岩手) 17
⑤遠藤エミ(滋賀) 14
⑥池田浩二(愛知) 14
地元の健士郎がインからキッチリ押しきった。まず、外的な勝因としてはスタートがきれいに揃ったこと。今節このメンバーでは菊地のタイミングが突出していたが、風の変化(特訓の頃は追い風~本番は無風)でデジタル補正が慎重になったか、もっとも遅いスタートでイン健士郎の脅威がかなり薄まった。
次の勝因は相棒57号機の強烈な行き足だ。スリット横一線からグイグイ伸び返し、1マークまでに1艇身ちょい。余力たっぷりに1マークを先取りし、長田の握りマイ~上條の小回りターンを抑えて優出一番乗りを決め込んだ。
「盤石の逃げ」と言いたいが、回り足はやや重め。そこで後続に差を詰められ、ターン出口から伸び返し、スリット裏に近づいてからギューーンと突き放す見え方。つまりはイン戦にぴったりの足色ではなかったと思うのだが、スタートと行き足をフル稼働して逃げきり、という印象ではあった。リアルタイムで書いているので健士郎の明日の枠番は分からないが、私の勝手な好みとしては3コースあたりからの57号機を見てみたいな(笑)。
1周バックで早々に1着が決まり、焦点は2着争いに。1マークを回って先行したのは長田だった。3コースから気風の良い握りマイで一瞬だけ健士郎に肉薄。すぐに突き離されたが、2コース差しの上條より2艇身ほど優勢に見えた。
だがしかし、2マークで両者の体が入れ替わる。1マークと同じく全速でぶん回した長田と、同じく小回りで応戦した上條と。今節の2マークでは何度も似たような光景があり、私の見た目ではほぼほぼ握ったもん勝ち。外から抱いて回った選手が突き抜けるケースが多かった。
が、ターン出口から力強く出て行ったのは、最内をくるり回った上條の方だった。舳先を入れたのみならず、さらに1艇身ほど突き抜けたのは、おそらく出足~二の足までの機力差だろう。劣勢を悟った長田が2周1マークで決死の切り返しを敢行したが、外からパワー任せに握った上條が太い引き波にハメ込み、ここで優出の2艇がはっきり決まった。
上條の出足はかなり強い。
改めて実感させる1周だった。
1着・健士郎、2着・上條。
恐るべき逆転劇
11R 並び順
①白井英治(山口)09
②峰 竜太(佐賀)11
③竹田和哉(愛媛)10
⑤重成一人(香川)07
⑥松井 繁(大阪)08
④田村隆信(徳島)08
キーマン松井の前付けに、田村以外の4人が抵抗して12356/4。内5艇が横並びの80m起こし、田村だけがピットに戻るくらい深く引く、という実にスリリングな最終隊形になった。
それでいながら、スリットは御覧のとおりコンマ10前後の横一線! 6人の集中力の高さに脱帽するしかないが、ただひとりだけ趣の異なる数字が存在する。単騎ガマシの田村。松井と同じコンマ08でも、長い長いダッシュを利かせた分だけ伸び足が半端ない。瞬く間にカド受け松井の舳先を飛び越え、四国の同胞ふたりも絞め倒し、凄まじいスピードでまくり差しハンドルを入れた。
が、2コースの峰がその猛攻を許さない。田村の動きを見ながらキッチリ艇を合わせてブロック。単騎ガマシの勢いを完全に殺しつつ、ダンプのような反作用で力強く前に推し進んだ。小回りとは思えない、なんちゅうスピード対応! 田村が通るべきファイナルへの花道を、咄嗟の合わせマイで奪い取った。そんな2コース差しだった。
峰のブロック推進ターンは逃げる白井の内フトコロまで脅かしたが、そのまま舳先を突き抜けるだけのサイドが掛からない。それはやや強引なターンだったからなのか、それとも相棒67号機の出足が足りなかったのか。
おそらく、後者も関係していることは、それから2周をかけて証明される。1マークのとんでもターンで完全に2番手を取りきった峰と、3番手の重成との距離は3艇身ほどあっただろうか。これほどしっかりマウントを奪った峰竜太が、優出漏れするとは思えない。
10Rに続いてワンツー決着か。
おそらく全国の数十万の方々もそう思ったはずだ。が、そこからターンマークごとにじわり重成がにじり寄る。2周2マーク、峰のターンがやたらと重い。ついに重成の舳先が届くほどに追い詰められた峰は、2周2マークで重成を行かせて差す戦法に切り替えた。そのターンがまた重い。舳先が入りきらないうちに、外からコツンと絞められて完全に両者の体が入れ替わった。スタンド騒然! ボートレースが残酷なほどのモーターボート競走であることを、改めて痛感する大逆転劇だった。
1着・白井、2着・重成。
2着争いばかり書いてしまったが、白井の23号機はやや出足が甘いながらも互角に戦えるレベルまで仕上がった。それに加えて、今節の最大の武器はスタート力。コンマゼロ台を連発するキレッキレのスタート勘は、もちろん明日の1、2号艇でも相応の威力を発揮するだろう。
不動のエース
12R
①毒島 誠(群馬)12
②佐藤 翼(埼玉)14
③磯部 誠(愛知)09
④桑原 悠(長崎)08
⑤池永 太(宮崎)09
⑥中島孝平(福井)09
圧倒的人気の毒島が、ここもインから堂々と押しきった。わずかにスリットから磯部に覗かれたが、慌てず騒がず1ミリの隙もない快速インモンキーで一人旅に持ち込んだ。大谷翔平レベルの強さだった。
私が期待した翼は、磯部のまくり差しを浴びて失速。そのまま磯部が最後のチケットを奪う見え方だったが、ターン出口での押しが厳しい。外から機敏に差した池永、桑原にしぶとく絡まれ、2マークは3艇が交差旋回する大混戦だ。もしも磯部に出口からもうひと押しのパンチ力があれば、それで2着は決しただろう。
2マークの交差旋回から、力強く出て行ったのは最内を差した池永だった。磯部のまくり差しが窮屈になったせいもあったが、そこでも出足の差が関与しただろう。がっちり最内でマウントを取った池永が2マークを軽快に回り、逆に外から握った磯部の艇は不安定にバウンドし、ここで大勢が決した。
磯部の出足・回り足にやや不安があると思っていたが、その弱点を突いて競り勝った池永52号機のレース足は天晴れの一語。昨日までの私の鑑定=中堅上位では片づけられない競り勝ちでもあり、遅ればせながら上位の一基とさせていただこう。もちろん、外枠の明日も展開一本で突き抜けるだけのパンチ力がある、とお伝えしておく。
1着・毒島、2着・池永。
(photos/チャーリー池上、text/畠山)