BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

準優ダイジェスト

ひとり旅

9R
①齊藤 仁(東京)08
②宮地元輝(佐賀)12
③土屋智則(群馬)06
④磯部 誠(愛知)14
⑤毒島 誠(群馬)13
⑥西山貴浩(福岡)16

 齊藤がインから危なげなく押しきり、2016年GPシリーズ以来7年8カ月ぶりのSG優出を決めた。スタートしっかり、1マーク手前の伸び返しも上々、さらに2vs3コースの小競り合いで外艇の仕掛けが遅れ、バック中間で独走状態に持ち込んだ。

 この小競り合い、戦前からある程度は想定できていた。宮地の差し旋回は、何コースであっても深い奥行きをとってから鋭角にUターンする変則スタイル。今日もそれを実践した。一方、スタートでシュッと覗いた土屋は、迷うことなく宮地を叩きに行った。3コースの正攻法ではあるが、今日の2コースには危険な戦術だ。奥行きまで直進する宮地と絞め込んだ土屋が競り合う形になって、それでふたりの優出は遠のいた。

 一方、展開が向いたのは4カドの磯部だ。スタートではっきり後手を踏んだから、有効な戦法は差し一択。正攻法の差しハンドルを入れてみたらば、内2艇の小競り合いもあってターン出口で2番手を我がものにした。

 1着・齊藤、2着・磯部。
 齊藤41号機は全部の足がしっかりしているバランス型で、自在派の乗り手にフィットした相棒と言えるだろう。今日は上々の上りタイムを叩き出し、41号機のポテンシャルの高さを垣間見せた。私は昨日まで【出A・直B+】と鑑定していたが、1マークまでの伸び返しの鋭さを反映して【出A・行A】に改訂したい。
 磯部の2着は展開の利もあったが、1マークで引き波を超える足~道中で後続を寄せつけない回り足は好感が持てた。とりあえず、昨日までの【出A・直B+】の評価を継続したい。

ひとり旅Ver2

10R
①菊地孝平(静岡)13
②瓜生正義(福岡)18
③椎名 豊(群馬)19
④石野貴之(大阪)15
⑤篠崎元志(福岡)13
⑥中田竜太(埼玉)12

 日々パワーアップを遂げている菊地25号機が、これまた危なげなく逃げきった。2022年ダービーから約2年ぶりのSG優出だ。ドリーム戦でセイフティの2番手⇒4着までずり下がる姿を見た者なら、この優出はかなりのサプライズだろう。私もあの時点で「今節のキクは優勝どころか、優出すらできない」などと決めつけていた。それから4日間の菊地の整備力とスタート力には、改めて脱帽するしかない。

 で、例によって熾烈を極めたのが2着争いだ。いや、なんというか、1周バックではさほど熾烈になるムードではなかった。2コースから差した瓜生がスッと抜け出し、3コースから握った椎名と6コースから差した中田が忍び寄るが、届きそうには見えない。
 ここは1-2の準優決着か。
 そう見ていたのだが、2マークで瓜生に何らかの誤算があったか。おそらく中田の内伸びがなかなかに強烈で、抱いて交わす戦法に焦りが生じたか。それとも、先マイした菊地のターン回りが重かったか。瓜生の握りマイは、菊地の艇尾にぶつかりそうな見え方で少し減速。

 その間に、最内からスルリと椎名が差し込んで舳先を並べた。あとは、内からマウントを取った椎名が、2周1マークを素早く回って2着確定。瓜生はさらに道中の競り合いでも石野に抜かれ、4着に敗れた。おそらく、2着争いに関しては1周2マークの攻防がすべてだった気がするのだが、嫌味を付けられた中田や差し抜かれた椎名よりわずかに機力劣勢だったのだろうか。

 1着・菊地、2着・椎名。
 菊地25号機はどんどん良くなっているが、今日はどうだったか。あの1周2マークの先マイがけっこう重たそうだった気がしてならないのだが……。とりあえず、据え置きの【出B+・行A】としておきたい。
 椎名73号機は私が期待したほどのパンチ力はなかったが、2マークの逆転差しは実にシャープで、さらにそこからホーム直線で瓜生を引き離す勢いも感じた。出足を半ランク上げて【出A・直A】の上位ど真ん中とみた。

ひとり旅Ver3

11R
①山口 剛(広島)04
②峰 竜太(佐賀)10
③茅原悠紀(岡山)09
④島村隆幸(徳島)13
⑤遠藤エミ(滋賀)14
⑥坪井康晴(静岡)16

 ここは大村、やはり準優は「インコースから逃げて一人旅×3」という鉄板レースばかりだった。とりわけこの最終レースが鉄板中の鉄板だったか。

 まず、3日目から「出足がメチャクチャいい、キノピオ仕様です!」と胸を張る山口18号機が、今日もガチで強かった。スタートからして唯我独尊のコンマ04。私が期待した3コース茅原もゼロ台まで踏み込み、1マークまで外に開きながら一気呵成にまくり差しハンドルを入れてみたが、もうその右隣にツヨポンはいなかった。峰を引き波にハメて、2番手を確定させるのがやっとこさ。

「うわーーー、つえぇぇ!」
 記者席でうっかり叫ぶレベルだった。だって、茅原の3コースまくり差しはかなり完璧だったのに、勝者はその3艇身ほど先にいたのだ。明日も同じ1号艇。同じコース、同じスタート、同じ旋回をしたらば、自慢のモンスター出足が唸って間違いなく優勝するだろう。実に14年ぶりのSGタイトルの美酒。

 ツヨポンの雌伏の歳月を思えば、心の中に「優勝してほしい」という甘いささやきもなくはない。だがしかし、これほど強い男が14年間の真剣勝負の果てに、ついぞ勝ちきれなかったのも事実。自称・穴党は明日の夜まで、重箱の隅を突きながら大本命の弱点を探し続けるつもりだ。
 1着・山口、2着・茅原。

 現状、山口【出S・直A】、茅原【出B+・行S】の独断評価を換えようとは思わない。ただ、これは何となくだが……もしも明日までにさらなる大化けがあるとすれば、それは完成度の高いツヨポンより全体に甘さのある茅原だと思っている。大化けするかどうかは分からないけれど。(photos/シギ―中尾、text/畠山)