なにしろ、超短期決戦なのである。初戦を走ってみて調整を考える、では手遅れになる可能性がある。その初戦がトーナメント1回戦で、4着以下に敗れれば(復活戦で優勝戦に駒を進める可能性があるとはいえ)おしまいなのだ。ということも大きく影響しているのだろう、素早く整備に取り掛かる選手もいたし、整備可能時間ギリギリまでペラを叩き続けている選手がSGなどより多かった。唐津の調整所は一部、装着場の隅に設けられているので、幅員が狭い場所では目の前で叩いているという感じ。最も目の前にいた北川太一で、これがまた親の仇もかくやというほどの強い叩き方をしていたので、相当に迫力を感じたという次第であります。
松井繁の動きは実に素早かった。1班でスタート特訓とタイム測定を終えた松井は、あがってくると速攻でギヤケースを外して調整。いつでもテキパキと動く王者ではあるが、やはり早いうちに調整をしておきたかったということだろう。エンジン吊りにはその調整の合間に猛ダッシュで駆けつけていて、終わるとあっという間に整備室へ。短期決戦という意識がこちらも高まってくる。
そうそう、平石和男も調整を行なっていたのだが、4班の馬場剛のエンジン吊りに出遅れて、ついに参加できなかった。今節の関東最年長だから誰も不快になどなるはずがないのに、馬場に平謝りのヘーちゃんなのでありました。あと関東勢に対しても。エンジン吊りというのはそういうものなのですね。
最も大きな整備をしたのは、地元の超大将格・峰竜太だ。5班で前検航走を終えるとすぐにモーターを運び込み、まずはプロペラの点検を調整所で行なうと、次には整備室に駆け込んで本体を外す。キャリアボデーの交換を始め、さらには本体をバラしている。部品室でピストンを受け取り、重さをはかったりしていたので、交換は必至。後で本人に聞いたらリングも換えたようだ。そして返す刀でリードバルブの調整。いやあ、前検から超多忙! 地元だけに、勝手知ったるという部分もあるだろうが、徹底的にモーターと向き合う様は圧巻であった。
本体整備は高田ひかるも行なっている。高田の本体整備は珍しいことではなく、独特の伸びも本体調整を含めて引き出すタイプ。3日間しかない、というか、明日には早くも勝ち上がりができるかどうかの分かれ目を迎えるのだから、前検から整備を始めても何の不思議もないわけである。整備が終わったのは、制限時間の数分前。とことん整備を尽くす前検だったのだ。
丸野一樹はギヤケース調整をかなり入念に行なっていた。実はYouTube「週刊BOATBoy」でインタビューを行なおうと目論んでいて、ギヤケース調整に突入したときにはそこまで時間がかかるとは思っていなかった。ところがこれが、時間を目一杯使っての調整で、インタビューは帰宿の集合アナウンスがかかるギリギリで何とか受けてもらえたのであった。バタバタにさせてすみません! その調整のキモはぜひインタビューをご覧ください。9月に入って立て続けにGⅡ、GⅠ、GⅠと優勝し、最も勢いに乗っている男。その充実ぶりが伝わってくるインタビューになったと思います!
今節の新兵である常住蓮も整備室で調整を行なっていました。本体をバラすようなところはなかったが、入念に本体を点検している様子であった。そして、その周囲には常に整備士さんが数人。やっぱり、地元期待の若手のことが気になるんでしょうね。おそらくアドバイスなども送っていたと思うが、遠目からは温かく見守っているという雰囲気なのでありました。今節は先輩も数多いし、いつも応援してくれている関係者もたくさんいる。そんな人たちに囲まれて、ぜひビッグアプセットを見せてください!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)