BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――何という明暗……

 河合佑樹が予選トップ! いやあ、凄い。なにしろ選考順位が下から2番目なので、1号艇が予選では回ってこなかったのだ。水面際にたたずむ河合の声を掛けると、「まさかまさかの」と言って爽快に笑みを浮かべた。いやいや、だって1号艇なしですよ、と返すと「それは坪井さんも同じです」。

 そう、坪井康晴も1号艇なしで予選2位。坪井は選考順位が最も下で、そう、まさに大下剋上のワンツーなのだ。得点率は二人で並んでいて、最高タイム差で河合がトップに。この二人、師弟ですよ! すごい師弟! 河合も坪井も、自力で1号艇をゲットして準優へ。逃げ切って優勝戦でのガチンコ師弟対決になるか、がひとつの焦点になってきた。

 こちらの師弟は厳しい一節となってしまった。峰竜太と定松勇樹だ。峰は7Rで1マーク失速。これに椎名豊が巻き込まれたことで、不良航法をとられてしまった。完全に万事休す。そして定松は10R、2着条件の勝負駆けで6着大敗。予選落ちが確定してしまった。グランプリ出場を決めている師弟が苦しみ、選考順位ギリギリでやって来た師弟がワンツーとは、ボートレースはやはり奥が深い。
 定松はレース後、誰の目からも明らかなほどに落胆していた。首を捻りながら顔を歪ませ、そして俯く。痛々しいほどのレース後だ。「ベスト6しか見ていない」と宣言して臨んだ今節、しかし予選通過を果たせずに、現在賞金ランク9位の定松はトライアル1stからの出場が決まってしまった。そう、ベスト6勝負駆けは潰えた。それを覚悟しなければならない敗戦でもあっただけに、痛恨は大きかったのだろう。

 10Rの他の5人は、出走時点で得点率18位以内で、全員がノルマをクリアした。ただ、片岡雅裕は大敗が許されず、5着以下なら予選落ちとなっていたところだった。枠番は6号艇。かなりヒヤヒヤする状況だった。それだけに3着で準優出を決めて、大きな大きな安堵。なにしろ、レース後は淡々としていることが多い片岡が、ヘルメットを脱いだ瞬間、ホッとした笑顔を見せたのだ。そんな片岡を森高一真がからかうのはお約束。でも揃っての予選突破を喜んでいて、ふたつ並んだ笑顔は輝いていた。

 ところで、その頃、馬場貴也が本体整備に励んでいた。馬場はドリーム戦を逃げ切ったものの、その後がいまひとつピリッとしない。8Rも5着。本体整備はそんな状況にカツを入れるためのものだったろう。準優を見据えて……と言いたいところだったが、馬場は10R終了時点で得点率18位。もろボーダーにいた。11Rは下から逆転を狙う選手が3人もいて、その時点では準優当確とは言えない状況だったのだ。

 11R。まず、2着で5・00だった深谷知博は3着。平本真之、島村隆幸との競り合いとなったが、着順がひとつ足りなかった。つまり、これで賞金ランク25位の深谷はグランプリ出場の目が消えた……。疲労感が漂うレース後。

 1着で5・00だった前田将太は、見せ場らしい見せ場を作れずに5着。賞金ランク22位の前田もまたグランプリへは……。念願の初出場が、今年もなくなった瞬間。こうなると減点10が非常に痛く、それだけに呆然とした様子が正視に堪えない。ちなみに、ボーダーが6・00をかなり下回るという意識がなかったようだ。それを認識していれば、減点後の戦い方も変わっていたか……。

 そして、3着で5・00だった平本が2着。3着でいい、のではない。とにかくひとつでも上の着順を獲って準優へ。そうしたガチンコの思いが、深谷と島村に競り勝つ要因だったかもしれない。そしてこれこそボートレーサーの魂! 転覆の憂き目を乗り越えての準優出はお見事! ハードな競り合いの後だから、さすがに疲れた様子も見せていた平本。しかしそれは充実感と安堵感をももたらしたようで、嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 19位以下から平本が準優圏内に浮上。ということは馬場は……いや、馬場は18位で残ったのである。4着条件だった遠藤エミが6着大敗。準優圏内から圏外へと転げ落ちてしまったのだ。嗚呼、またも関係の深い者同士の明暗がそこに……。それを認識していたかどうか、淡々と遠藤のエンジン吊りを行なう馬場。遠藤は2年ぶりのグランプリ出場がここで消えてしまった。馬場はその分も、今日の本体整備を活かしたいところだ。

 GⅡのほうは、今日の時点で得点率トップに躍り出たのは三浦永理。得点率では田口節子と並んでいるが、上位着順差で現時点では首位となっている。三浦は遅い時間帯までゲージ擦りを行なっており、それは現状の足に手応えを感じている証しでもあろう。優出3~4着あたりで浜田亜理沙を抜き、トライアル初戦1号艇を手にすることとなる。優出はほぼ当確であり、明日はさらに2位浮上の可能性を高めるために優勝戦好枠を手に入れる戦いとなる。

 12R、細川裕子が5着大敗。6位圏内から7位へとランクダウンしてしまった。競り合いに敗れた格好で、かなり深刻な表情のレース後。賞金ランク6位(実質5位)はクイーンズクライマックス当確だが、なにしろ舞台は地元蒲郡である。トライアル初戦は現状3号艇となりそうだが、ランクを落としてそれより外にはなりたくない。ならば優出して賞金を積み上げたいところだから、この大敗は痛い。明日は6号艇だけに、厳しい状況……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)