BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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Wチャレカ優勝戦 私的回顧

12年、女王覚醒

11Rレディースチャレカ優勝戦
①三浦永理(静岡・3位)09
②田口節子(岡山・15位)08
③西橋奈未(福井・10位)04
④平高奈菜(香川・8位)05
⑤平山智加(香川・7位)03
⑥川野芽唯(福岡・16位)03

 うーーーん、やっぱ今節のエリー46号機はレディース組の最強タッグだった。2日目に日高逸子ママがぼやいたように、この人機はSG組に紛れ込んでも上位級の鬼足を披露したことだろう。

 そうとは知りつつ、私は西橋のポテンシャルに賭けた。スリットから1マークまで、西橋の仕掛けは完璧だったと思う。なんなら、スリットから三浦よりもじんわり出て行くムードがあった。で、2コース田口が差しの初動を起こすと同時に発進。上から田口を飛び越えつつ、舳先をキュッキュッと左に傾ける。タイミングもスピードも理想的な見え方だったが、舳先が届いたと思った瞬間、三浦46号が何事もなかったかのように突き放し、逆に西橋67号は引き波に負けてズルリ後退した。

 舟券で蹴とばしておいてなんだが、強い強い勝ちっぷりのエリーには賞賛の拍手を送りたい。前に記念レースを勝ったのは2012年の大村クイクラだから、ちょうどひと回り、12年2度目の快挙だ。

 なんやかやと紆余曲折があっての長いブランクだったかも知れないが、『テクニカルエリー』の強さ巧さは往年のファンなら誰もが知っている。今節で、若いビギナーのファンも彼女の強さに舌を巻いたことだろう。今日の490万円GETで遠藤エミに継ぐ女子賞金2位まで到達した初代クイーンが、今度は蒲郡の1号艇からどこまで暴れるのか。熟女の超絶テクをしかと魅せてもらうとしよう。

 さてさて、このチャレカという大会はこんなきれいごとだけで終わらない。終わらせてくれない。三浦がぶっちぎった水面下では、QC勝負駆けのサバイバルマッチが繰り広げられていた。ともに石に噛り付いても3着以内が欲しい田口vs川野!!

 戦前の私は2号艇の田口が断然有利と見ていたが、いざフタを開けてみたらば……勝負リングを装着し、常に強気強気で攻め続けた6号艇の川野が2着で当確。西橋のまくり差しを浴びて後手後手に回った田口は5着に散った。その悔しさは推して知るべし。大先輩の寺田千恵を引きずり落とすのは、せめて同県の自分でありたかっただろう。テラッチ、節子に賞金5位ながら罰則で出られないミポリン。今年のクイクラは岡山勢にとって鬼門だったとしか思えない。

33人斬り!

12R優勝戦
①河合佑樹(静岡・46位)13
②坪井康晴(静岡・45位)23
③寺田 祥(山口・34位)18
④土屋智則(群馬・12位)17
⑤池田浩二(愛知・10位)18
⑥佐藤 翼(埼玉・19位)22

 長州の勝負師・寺ショーが舳先を180度翻した瞬間、超満員の観衆がおそろしいほどに湧きあがった。地元だから当たり前。もちろん、私の心もそぞろときめいた。特訓でもスタート展示でも「3カドってなん?」みたいに微動だにせず、いざ本番だけ勝負手を放つからたまらない(本来の3カドはこんなヤラズノヤリが主流だったが、3カドの使者・今垣光太郎がその常識を覆してスタ展から嬉々として動きはじめたw)。

 そして、寺ショーは次なる継続手も成功させた。早くはなかったが、質の良い全速スタートで2コース坪井を撃破! ダッシュだからこそ実現した絞めまくりに、寺ショーのアタマ舟券を買っていたファンは脳汁をダダ漏れさせたことだろう。もちろん私も。

 だがしかし、今節の静岡の山々は異様に高い。坪井師匠を超えた先には、節イチ21号機にまたがる弟子がいた。スタートも良かったが、例によってスリットからの伸び返しもエゲツない。
「こ、こりゃまくりきれん、まくり差しで突き抜けたる!」
 寺ショーは坪井を叩き終わってから舳先を左に傾け、師弟の狭い隙間にその舳先をぶち込んだ。その光景は11Rの③西橋vs①三浦の攻防に似ているようで、大きな違いがひとつだけある。

「こ、この舳先は入ら~~ん!!」
 河合の伸び返しが凄すぎ、だからこそ初動も早くなり、寺ショーの勝負手は1マークを回る前に“空砲”と知れた。それくらい、11R以上にパワー差、特に出足系統の差はケタチだった。今年のWチャレカは、どっちも超抜パワーの静岡レーサーが外の攻撃を寄せつけずに圧勝したわけだ。

 下剋上チャレカ。
 今節、私は好んでこの言葉を使ってきたが、やはりフィナーレも最大級の下剋上だった。参戦34人中、賞金がもっとも少ない選手の優勝。のみならず、戦前に河合佑樹というレーサの優勝を予想した人が何人いただろうか。正直、私は0.0001%も思い浮かばなかった。

 そりゃ今まで何度かSG準優に乗ってるし、弱い選手とは思っていないが、同期にはSGを獲った遠藤エミはじめ、上野真之介、前田将太、山田康二など強い面々が鈴なり。エミの次にSGを云わすのは、この3人の誰かしらだと思い込んでもいた。
「こんなショボい選手ですけど、これからも一生懸命に上を目指します」
 優勝インタビューの最後に静岡のイケメン君がこう吐露したとき、私は少しだけドキッとした。内面を見透かされた気がしたのだが、SGをひとつ獲って急成長~真のスターダムにのし上がった選手も少なくない。賞金46位から13位。33人ゴボー抜きでGETしたこの勲章を大きな自信に変換し、来月はとっておきの副賞旅行を満喫してもらいたい。

 さてさて、この大会の趣旨に沿って振り返るなら、まずは昨日まで19位の佐藤翼が今日の5着で16位までランクアップ。先月の戸田ダービー準Vからの大逆襲は、これまた下剋上と呼んでもいいだろう。

 それから、池田浩二が道中で苦労しながらも4着入線で賞金6位に滑り込んだ。本人としては消化不良の着順だろうが、今節、自分が取るべき最低限のノルマをきっちり取りきるベテランらしい走りに何度も唸らされた。来月は3日目の3号艇から、艇界屈指のテクを見せてもらえるだろう。(photos/シギ―中尾、text/畠山)

2024賞金ランキング

1馬場貴也(滋賀)
2毒島 誠(群馬)
3桐生順平(埼玉)
4茅原悠紀(岡山)
5峰 竜太(佐賀)
6池田浩二(愛知)
―――――――――
7菊地孝平(静岡)
8平本真之(愛知)
9宮地元輝(佐賀)
10土屋智則(群馬)
11定松勇樹(佐賀)
12関 浩哉(群馬)
13河合佑樹(静岡)
14松井 繁(大阪)
15西山貴浩(福岡)
16佐藤 翼(埼玉)
17瓜生正義(福岡)
18上條暢嵩(大阪)

2024女子賞金ランキング
1遠藤エミ(滋賀)
2三浦永理(静岡)
3浜田亜理沙(埼玉)
4渡邉優美(福岡)
5守屋美穂(岡山)
6細川裕子(愛知)
7平高奈菜(香川)
8平山智加(香川)
9西橋奈未(福井)
10宇野弥生(愛知)
11藤原菜希(東京)
12川野芽唯(福岡)
13海野ゆかり(広島)