

ピットには静謐な空気が流れていた。グランプリ5日目というのはこういうもので、昨年の記事を確認してみたら、やっぱり同じことが書かれていた。勝ち上がりの賞典レースが5個あって、勝負がかかっている選手が多いのだが、それぞれが仕上げの段階であることが多いから、逆に空気は落ち着くのである。
また、プロペラ調整室にこもる選手が多いことも、装着場から人影を薄くしているところがある。人口密度を増しているペラ室にはトライアル組やシリーズ準優組が数多く見られる。向って左奥に陣取っている毒島誠。手前の真ん中寄りには茅原悠紀。これは節間通しての定位置だ。トライアル最終戦の勝負どころでも、変わることなく調整に没頭。それが勝ち上がるための最善の方策ということだ。


峰竜太は、右寄りの壁際でやや手前に陣取っていた。今節は数多くの整備をしてきたが、今日はプロペラ調整に集中しそうだ。峰のいる場所から2人分くらい空いて、定松勇樹がペラ叩き。近い位置で叩いてはいるが、師弟で隣同士というわけでもないのですね。まあ、その間にはほかの佐賀勢が収まることもあるのだろうが、定松が師匠を頼りっきりというわけではなく、むしろしっかり自分自身での戦いを続けているのだと見えて、これは頼もしい姿だ。近くにいることで精神的な強みにはなっているのだろうが、決してべったりにならずにそれぞれが奮闘している。それは素敵な光景にも見えた。

1R発売中に上條暢嵩がペラ室を出て、モーターに装着した。着水が近そうだ。装着を終えると、キャリアボデーやボートの側面などを綺麗に磨く。そこに、山口剛が通りかかって上條に声を掛けた。すると、「山口さんの5コースからのレースをイメージしてみます」と上條。今日もまた5号艇になった上條は、どんなターンをし、そのためにどんな調整をするかと考えたとき、山口の5コース戦の走りを思い浮かべたようだ。それからやや声を落としての会話となったが、山口なりのアドバイスを上條に送っていたように見えた。

ペラ調整組が多いなか、唯一の本体整備が平本真之。朝特訓時にピット離れの練習をしていた平本は、その後に本体を割ったのである。ピット離れでの懸念を潰し、そのうえでさらに上積みをはかる。ボーダーの目安である21点には勝っても届かない状況だが、しかし勝っておかなければ望みも潰える。すべての面で勝負できる状態を整えて、最終戦に臨むのだ。

で、1R発売中にはモーターを装着すらしていなかったのが土屋智則。1Rのエンジン吊り後に毒島のヘルプを受けて装着したが、これは余裕のあらわれということなのか。昨日は4番手を走っていたものの、桐生順平との接触があって、操縦不能になった模様。おそらくステアリングバーを交換したものと思われ、それから満を持しての装着ということだったのだと思う。いずれにしても、本格的な調整を始めたのが最も遅かったのが土屋。この泰然とした様子が実に不気味と思えた。

シリーズ。予選トップ通過の前田将太はやはり余裕が感じられ、調整らしい調整をしている姿は目撃しなかった。1号艇組は山口剛が上條との会話後に着水の準備を始め、佐藤翼もペラ室で姿を見たが、大きな動きにはなっていない。

ちょっと不気味なのは宮地元輝で、何かを思案している様子。6号艇からの一発勝負、今日こそ何かを見せてくれるかも!?

あと、宮之原輝紀が早くも着水に向かっていて、調整のピッチを上げてきそうだ。同期の新開航も準優出しており、118期が優勝戦揃い踏みとなれば痛快!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)