BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

飄々と峻烈

12R優勝戦
①平高奈菜(香川) 09
②川井 萌(静岡) 18
③山川美由紀(香川)13
④川野芽唯(福岡) 09
⑤岩崎芳美(徳島) 08
⑥海野ゆかり(広島)09

 自称『愛媛のスピード狂』平高が勝った。インから絶品のコンマ09。2コース川井が凹んで薄壁のスリット隊形でも、その川井が意表の強ツケマイを放っても、まったく動じることなく完璧なインモンキーでバック突き抜けた。

 今節6日間の平高には「飄々」という言葉が相応しい。スリットや道中でド派手なパフォーマンスはなかったけれど、インでもアウトでもじんわり覗いて主導権を握り、飄々と飄々と上位着を奪い続けた。競馬でいうなら「先行抜け出し」みたいな。相撲でいうなら横綱相撲みたいな。スピードクイーンという派手なタイトルとは裏腹な6日間にも思えるが、だからこそ真の強さが際立つ6日間でもあった。

 2020年12月の浜名湖クイーンズクライマックスに次いで、2度目のGIタイトル。浜名湖の水がよほど身体に合うのだろう。こうなったら一気に今年8月の女子ビッグも勝ち取り、『女子ビッグ三冠』を達成してもらうとしよう。今年のレディースチャンピオンの開催地も、相性抜群の浜名湖なのだから。とにもかくにも、おめでとう、奈菜ちゃん!

 さて、敗者に触れるなら、やはり川井萌だろうか。飄々と強かった平高とは対照的に、今節の川井は地元水面を所狭しと暴れまくった。そして、随所にルーキー世代らしい非凡なスピードを見せつけた。

 この集大成のファイナルでもそうだった。途中までは。まず、ガッツリ凹んだ2コースからの強ツケマイ。おそらく咄嗟に「山川さんに絞められたら万事休す」と判断しての苦肉の策だったと思うのだが、1艇身遅れとは思えないほどの迫力を感じた。もしもスリット同体だったら? なんて変な妄想も膨らんだが、それはそれで内外の選手も違った対応を見せたことだろう。

 ツケマイで平高を捕えきれなかった川井は、強い右横風を浴びて大外に流れた。強く握れば握るほど流れる。今日の1マークの宿命だ。その間に山川、川野、海野あたりにズボズボと差し込まれ、バックは4、5番手あたり。しかも大外だからして大敗もありえるポジションだった。

 嗚呼、まだリプレイを観てない読者は、このサイトを閉じてすぐに1周2マークを御覧なさい!(笑) プレミアムGIファイナルという大舞台で、女子レース界を牽引してきたスター女傑を相手に、大外から大外への全速握りマイ一閃!! とんでもなく速くて大きな半円を描いたそのターンは、2番手の山川姐さんをも捕える勢いだった。なんちゅう萌え萌えターン!?

 さらに2周1マーク、内から伸び返した山川姐さんに強烈なツケマイを浴びせる。初動もスピードも素晴らしい速さだったが、こっちサイドはやはり外に流れて抜けきれない。またまた内からじんわり伸び返した山川が舳先を入れて踏ん張る。ただ、2マークはどんなに握ってもサイドが掛かる向かい風。

 萌ちゃんが圧倒的に有利だ。
 思った瞬間、美由紀姐さんがつつつ、と艇を外に寄せた。そして、川井が初動を入れようとした直前に、つっ、ともうひとつ艇を寄せたように見えた。それでも委細構わず握った川井61号機は、ハンドルを入れきれずにオーバーラン。艇のバランスを立て直そうとした瞬間、逆にバランスを逸して横転した。
 若さの露呈。若気の至り。女子ビッグの洗礼。山川姐さんの老獪な高等戦術。いろんな言葉が当てはまりそうな転覆ではあったが、ある意味、このド派手な横転シーンは全国の多大なファンの脳みそに色濃く刻まれたことだろう。5人のベテランを脅かした峻烈なスピードとともに。

 この先、この子はどんだけ強くなるんだろう。
 残念なアクシデントを見つめながら、私はそんな場違いなことを考えていた。萌舟券を握りしめていたファンからのお叱りを覚悟しつつ、私は川井萌に「陰の初代スピードクイーン」という称号を授けたい。でもって、山川姐さんには最優秀助演女優賞を(笑)。

 最後に余談。このシリーズは選考時期からスピードを競う大会だからして、節間はスピードやレースタイムにちなんだユニークなアイデアが導入された。とりわけ面白かったのは、オフィシャル実況画面の右下にちょこんと掲載されたラップタイム。今までに想像すらしていなかったファクターだけに、実に興味深くチェックさせていただいた。
 ただ、残念だったのは、1周と2周のラップタイムが反映されるまでにかなりの時差があったこと。できることなら、スキーの滑降とか回転とかのラップタイムのように、チェックポイントを通過した瞬間に止まる=分かるシステムであって欲しかった。もしも来年の鳴門でも採用されるなら、なんとかこのあたりを実現していただきたい。

 それから、優勝戦の前に『BOATBoy』の女子バン君と話していたら、面白いアイデアを聞かせてくれた。
「スピードクイーンを決めるんだから、優出メンバーの枠番も節間タイムの速い順にしたほうが面白いっすよね」
 なるほど、準優1着2着までは一緒として、たとえば1着3人の速い順番に1~3号艇とか。なんなら6選手ひっくるめて節間タイムの速い順番とか。確かに、そうすればこの大会ならではの特長が反映されるし、予選道中のタイムアタックにも拍車がかかるだろう。水面環境の有利不利やタイムアタック過多によるアクシデントの危険性など問題もありそうだが、なかなかに素敵なアイデアではなかろうか。(photos/シギー中尾、text/畠山)