BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――レディースV! 蓮連覇!

 団体戦はいよいよ佳境! 10Rから賞典レースに突入である。
 今回から、選抜戦の団体ポイントが変更されている。これまでは特別選抜B戦=4ポイント、特別選抜A戦=8ポイントだったものが、A戦とB戦の区別なく6ポイントずつとなったのだ。それに伴って、番組編成も変わっていて、これまでA戦には準優勝戦の4~6着が出走し、B戦は準優組以外の得点率上位3名ずつが出走した。A戦の枠順は、1号艇と2号艇は準優4着、3号艇と4号艇は5着……といった具合で、内枠は予選得点率上位が入った。優勝戦と同様の組み方だ。今回から、準優4~6着はそれぞれの選抜戦の1~3枠。外枠が準優組以外の得点率上位。準優組が内枠に組まれているわけだ。

 10Rの選抜戦は石渡翔一郎が逃げ切って1着。さらに樅山拓馬が3着に入って、これでルーキーズが6ポイント獲得。9Rまではレディース26-ルーキーズ19だったが、一気に26-25と接近した。レディースがリードした状況で一般戦終了、選抜戦に突入したため、10Rと11Rの6ポイントずつを両方、レディースが獲得していたら優勝戦を待たずに団体戦は決着。ひとまずその事態は阻止したわけだから、勝った石渡、連に絡んだ樅山は大貢献といっていいだろう。いったんは2番手を走り、残念ながら4番手に下がってしまった柳瀬幹太も上位争いに加わったのはルーキーズにとって大きかった。3人には敢闘賞を授けましょう!

 11R、ここもルーキーズが連取だ! まずは4カドからのぞいた隊形となり、内を攻めんとした高井雄基が影の立役者だろう。伸び切れずに攻め不発も、これにレディース勢が抵抗したことで、高井の外の濱野斗馬に大きなウィニングロードが開けた。

 こうなれば、格上の濱野がこのチャンスを逃さないわけがない。豪快にまくり差しでズバッと先頭へ。今節はまさかの予選落ちだったが、その鬱憤を晴らし、格上の意地を見せつける見事な勝利! 水面際では、濱野が突き抜けた瞬間に島川海輝が両手を上げて快哉をあげている。

 藤原仙二も6コースから濱野に追走。これで6ポイントゲットである。内の動きを見てしっかり握っていったのが2番手浮上の要因で、思い切ったレースぶりが素晴らしかった。転覆の憂き目にあった今節だが、その後はオール2連対! おおいに存在感を誇示したと言っていいだろう。

 それにしても、永田楽の悔しがり方がなんとも痛々しかった。顔を思い切りしかめて、1号艇を活かせなかった悔恨をあらわしていたのだ。スタートを行き切れなかったこともあって、悔いばかり残る選抜戦となってしまったか。しかし今節は、永田もまたおおいにアピールしたシリーズとなっている。準優、選抜と悔いが残る戦いとなっただろうが、これを今後に生かして、次は女子ビッグで会いましょう!

 さあ、完全決着の舞台は12R優勝戦! まず、展示で不穏な気配が漂った。田口節子がピット離れで飛んだのだ。ピットではレディースたちがきゃーっと悲鳴をあげる。もちろん、期待を込めた悲鳴だ。田口はしっかりと舳先を向けて、常住蓮がねじ込んでインを主張したものの、本番で同じタイミングならインを獲れてもおかしくないような進入。常住の連覇に待ったをかけるのはもちろん、レディースに団体優勝を呼び込み、大会2人目の女子個人Vをもぎ取りに行くかのような、エキサイティングな場面だった。

 しかし、本番では田口は飛ばず。一方で廣瀬凜が後手を踏んで6コース回りとなるという、やはりやや不穏な進入。このころ、水面際には多くの選手がずらりと並んでおり、この並びになって女子選手たちがそわそわし始めている。
 それはそうだろう。常住に逃げられたとしても、2コース=香川素子、3コース=田口節子、4コース=細川裕子という並び通りにゴールできれば、団体ポイントはレディースのものとなるのだ。足はかなり良く見えた廣瀬が6コース回りになったことで、少なくとも団体優勝への期待は大きくなったと言えるだろう。

 常住は、期待通りに逃げた。しかし、水面際のルーキーズたちは沸き立ちはしない。5コースから田中宏典が握り、廣瀬も6コースから渾身のまくり差しを放っていったが、バックに出て常住を追っているのは、差した香川、握った田口、さらに差した細川であるのは明らかだったからだ。2マークを回り、香川が2番手抜け出し、細川が3番手先行、それを田口が追う態勢となったところで、早くもレディースがバンザイ! 猛追を見せた廣瀬が田口を抜いても、問題ない。田中が最後方を走っていたから、田口がこれに抜かれなければ(抜かれそうな気配もなかった)団体ポイントはレディースのものなのだ。

 それでも廣瀬はあきらめなかった。3着に浮上すれば、一発逆転、団体優勝もルーキーズにもたらされるのだ。ルーキーズたちは「まだある! まだある!」と廣瀬に声援を送る。廣瀬も追いに追ったのだが……及ばず。ここで改めてレディース勢がバンザイをして、仲間を出迎えにボートリフトへと走るのだった。ルーキーズもリフトへ向かうが、足取りは少し重いようにも見えた……。

 ボートリフトでは、レディースたちが何度も何度もバンザイ。まだ3人が陸に上がる前から、喜びをあらわにしていた。3人が上がってくれば、称賛の拍手とバンザイ。なにしろ6大会ぶりのレディース優勝である。みんなテンションが上がるのも当然!

 優勝戦という意味では敗れた香川、田口、細川だが、その悔しさが皆無とは思わないが、団体戦に勝ったことが満足感をもたらしているのか、レース後は笑顔のほうが目立っていた。田口は準優を勝っていれば優勝戦1号艇、優勝を獲り逃したとも言える立場だが、気持ちを切り替えれば、団体優勝には貢献したのだ。仲間と笑顔で振り返り合うのが自然な姿だろう。

 連覇を果たした常住だが、ウィニングランから戻ってピットに上がった瞬間は、やや複雑な表情も見せている。団体優勝を逃したことをわかってはいたのだろう。自分は逃げるだけ、後ろのことはどうにもできない。だから、常住としては優勝を喜ぶだけでよかったはずなのだが、やはりこれも団体戦の光景、仲間を思えばどうしたって心の底からは喜べないところもある。

 仲間たちは偉かった。団体戦は敗れたが、個人優勝を果たした常住に拍手と称賛を送り、バンザイして見せたのだ。ここには、寺田空詩ら女子選手たちも加わっていて、そう、やはり今節最強だったのは常住蓮だった、そのことを全員が素直に称えたのである。
 というわけで、表彰式に向かう頃にはとびきりの笑顔になっていた常住。整備室でモーター返納を行なっている優勝戦メンバーに挨拶をしにいくと、そこには祝福の声が巻き起こっていた。とにかく常住は強かった! 本当におめでとう!

 そして、6大会ぶりにレディースの優勝が見られたのは、個人的には嬉しくもありました。次こそ、2人目の女子個人Vも、何としてもかなえてほしいと切に願います!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)