
レースが始まる前の朝の時間帯に、優勝戦のメンバーはスタート特訓を行なっている。その後、前田滉が試運転をしているのは見かけられたが、その前田も含めて、いったんはボートを陸に上げている。一人を除いて。

水面に残ったのは新開航だ。優勝戦の1号艇が、序盤の時間帯に試運転を行なっているのはなかなか珍しい。それが毒島誠や遠藤エミだったら普通のこと、ルーティンのようなものだが、それ以外の多くはゆったりと過ごすことが多いのが優勝戦1号艇の選手である。予選トップからの優勝戦1号艇ならなおのこと。機力優勢だから予選トップであり、準優逃げである。早くから動く必要がなくて当然なのである。しかし、今日の新開は早々から動いた。伸び強力な選手がいる優勝戦、少しでも上積みをはかって不安を少しでも打ち消したいということか。

ボートは引き上げていたが、吉田裕平はその後にプロペラ室にこもっている。中堅程度の足とは本人も証言してきており、ならば優勝戦に入れば最も弱い足色ということになりうる。技量上位の吉田とはいえ、それだけで優勝戦を乗り切れるほど簡単ではないのだ。だから、ピットに入る前から吉田が調整に励んでいることは、実は想像していた。その通りに、吉田は朝からペラと向き合っていたのである。

伸びで新開を脅かす最右翼の井上忠政も、ボート回りの作業を入念に行なっていた。プロペラを外しており、まだ調整している姿は見られなかったが、いつでも作業に取り掛かれる準備は進めていた。現時点で伸びは上位、しかし準優はまくり差しも想定しての仕上げにしていたそうである。それを、優勝だけを意識してもっと伸びに振るのか。それを警戒されると見て、まくり差しの可能性も残す調整でいくのか。昨日のインタビューでは一晩考えると言っていたが、その決断に注目したい。

中山翔太は調整作業をする様子は見ていないが、ピットで姿は頻繁に見かけている。何しろ今節最年少の新兵である。調整作業以外にも、こなさねばならない仕事はある。それにしても、今日もまた落ち着いた様子であり、やはり感服してしまう。そう本人に振ってみると、今のところは特に緊張もしていないと言った。強心臓なんじゃないの、と振ると、レースでは緊張しますと否定しつつも、それにうまく対処できて楽しめていると返ってきて、それが強心臓の証しではないかと思って、改めて感服した次第であった。話してると、ほんとに初々しく瑞々しい、好感度抜群の若者なんですけどね。でも、大仕事を成し遂げる雰囲気は充分にあるように思えた。

6号艇ということもあってか、中村日向はリラックスした様子。機力に苦戦していた予選道中などはピリピリしたところも見かけている。しかし、準優では今節では一番の仕上がりと好感触を得て、そして優出も果たし、気分的にはかなり上がってきているのがうかがえた。表情がかなり柔らかいのだ。5R発売中の公開インタビュー後に調整のピッチを上げていくものと思われるが、そこからは闘志高まる表情が見られることだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)