ニューヒーローの胎動
10R
①末永和也(佐賀)14
②原田幸哉(長崎)13
③金子拓矢(群馬)12
④守屋美穂(岡山)11
⑤桐生順平(埼玉)13
⑥塩田北斗(福岡)12

直近1年、イン1着率89%というベラボーな数字を誇る末永が、ここも文句なしのイン逃げを決めた。おそらく、この1着で90%を超えることになるだろう。つまりは明日も1号艇なら「9割がたSG初制覇!」みたいなフラグが立つわけだが、それは次の①郡次第。郡がうっかり2着以下に敗れれば、佐賀から定松勇樹に次ぐニューヒーローが誕生する可能性は極めて高いのだがどうか。

記録っぽいネタからはじめたが、今節の末永は後手を踏んでも焦らず騒がず、しっかり着をまとめて予選2位に輝いた。おそらく、その落ち着きを与えたのは地元で「エース格」と呼ばれる37号機の安定パワーだろう。今日の逃げもしかり。スリットがこれだけ横一線になれば逃げて当たり前としたものだが、それにしてものSG準優とは思えない完璧なインモンキーだった。明日の枠番はともかく、まずは第一関門突破、おめでとう。

2着は……やはり、あの男が来た、来てしまった! 天才・桐生が狙いすました5コースまくり差しで、あっという間の2番手進出!! 昨日から私の脳内レースで何度もこのシーンが浮沈したのだが、そのたび「ターン回りは大丈夫なのか?」という疑問が湧き出した。
桐生のターンは初日から出口で横揺れや縦バウンドなどで減速し、着を落とすことすらままあった。あの天才をしてこの不安定なターン。よほど重症だと見ていたし、本人も「とにかくターンマークを回れるようにしたい、まったく回れない」とつい昨日、2コースから差しきった直後も不安ばかりを吐露していた。
さて、今日はどうだったのか。豪快なまくり差しを決めたのだから、不安が解消できたのでは? そうも思えるが、今日のあの1マークのターンは初動、スピードともにあまりに完璧で、乗りにくさや出足系統の不安とは無縁の天才ターンだった可能性も否めない。

つまり、1マークの一撃決着ではなく、道中で複数艇と競り合ったら弱点を露呈するのではないか。今日もまだそんな不安を抱えながら、明日の桐生の気配を見つめることになるだろう。確信はしていないが、2番手を取りきってからの旋回はやはり左右に小刻みにハンブルするような見え方ではあった。
遅咲きルーキーの反乱
11R 並び順
①山崎 郡(大阪)23
③上條暢嵩(大阪)17
④柴田 光(群馬)13
②渡辺浩司(福岡)10
⑤峰 竜太(佐賀)12
⑥赤岩善生(愛知)19

大、大、大波乱!
このレースだけ進入争いが激しいと誰もが予想し、そのキーマンは赤岩だと誰もが思っただろう。だが、違ったのだ。真の埋伏の兵は、SG初出場の53歳だった! ピットアウト後、峰や渡辺が赤岩の動向に目を光らせブロックしようとしている中、柴田はまったく赤岩を見ていなかった。

赤岩もへったくれもなく、唯我独尊、インを奪いを行ったのだ。嗚呼、この凄まじい前付けを見て、私はやっと気づく。柴田が江口晃生の愛弟子であることを。このオラオラ前付けは、いつもの江口のそれと酷似していた。江口師匠とどこまで会話したか分からないが、おそらく柴田は決めていたのだ。

赤岩とは関係なく、俺はガチでインを狙い行く。江口さんのように。
と。それにいち早く気づいたのは内側にいた郡(ハナからイン主張なので当然)と上條(光を見て咄嗟にブロック)の大阪コンビだった。赤岩に気を払っていたであろう渡辺は、完全にブロックするタイミングを逸した。①③④があっという間に舳先をスタート方向に向け、もう渡辺が入る余地はどこにもない。

そして、渡辺にとっては、この柴田の“奇襲”が幸運へとつながっていく。内3艇がずんずん深くなる中、見た目には4カドにも近い美味しい4コースをGET。峰と赤岩もやんわり艇を流し続け、オールスローながら134//256的なイビツな最終隊形ができ上がった。

12秒針が回りはじめたとき、内3艇はすでに90mをゆうに通り越していた。4コース渡辺の起こしは130m。ハナから深い起こしの覚悟を決めていたであろう3コース柴田もしっかり踏み込んだが、加速度が違う。あっという間に柴田を飛び越え、やや凹んだ大阪コンビも一気に叩き潰した。もちろん、この一撃まくりは渡辺の自力によるものだ。想像以上に熾烈になった待機行動で得た絶好のポジションを、素晴らしいスタートと迷いない猛攻で勝ちきった。ラッキーな1着であり、強い1着でもあった。

そして、6コースから2着に滑り込んだ赤岩にとっても、望外の嬉しい展開だったか。同じ「オールスローの6コース」でも、だらだらの枠なりオールスローとはまったく別物の6コースだったのだから。とはいえ、渡辺の強まくりで内艇がつぶれる中、しっかり展開を突いてファイナルのチケットをもぎ取った赤岩にも、もちろん天晴れの称賛を授けたい。

2-6-3で906倍というとんでも配当をぼんやり見つめながら、私は明日の1号艇に思いを馳せた。末永和也。今日でイン1着率90%を超えたであろう若武者がSG初優勝にかなり近づいたわけだが、「本当にそうだろうか」なんて思い直した。そう思い直すだけの、人の気持ちの強さ恐ろしさを痛感するレースだった。
波乱の果てに……
12R
①茅原悠紀(岡山)10
②上平真二(広島)08
③新田雄史(三重)10
④池田浩二(愛知)08
⑤松村 敏(福岡)03
⑥北山康介(東京)F+05

配当こそ11Rより激安、万舟にも満たなかったが、最後も波乱のレースになった。6コース北山の特大フライング! 昨日から噴きまくっていた41号機がどんだけ背中を押したのか。コンマ05までハミ出して、そのまま内の6艇をまくりきってしまった。

いわゆる、「レースを壊し」ながらの一撃アウトまくり。ガッツリ絞め込まれた上平と茅原が玉突き状態で外へと流れる。そんな非常事態で、もっとも巧く立ち回ったのは地元の新田だ。まくられながらも、最内に潜り込んでの小回りターン。

これまた勝負の妙というべきか、気合の3カド戦法がまったく伸びず、北山に軽々と飛び越えられたからこその“先制ターン”だった。もしも3カドからしっかり伸びていたら、間違いなく北山Fまくりの第一の餌食になっていただろう。いやはや、11Rもこのレースも、何が誰にどう幸いするかわからない。

バック直線、空襲の直撃弾を逃れてひた走る新田に、モロに被弾されながら態勢を立て直した茅原が追いすがる。やはり足色は茅原に分があったが、2マークを先制した新田がスッと突き離して明日のファイナル6人とその枠番が決まった。

新田が3号艇で茅原が4号艇。フライングがなければまるで違う結果になった可能性も高いのだが、これもまた勝負ごとの綾。もちろん、事故によって成立したこの枠番が、明日のレースに及ぼす影響も小さくはないだろう。
12R優勝戦
①末永和也(佐賀)
②渡辺浩司(福岡)
③新田雄史(三重)
④茅原悠紀(岡山)
⑤桐生順平(埼玉)
⑥赤岩善生(愛知)
大きな波乱とアクシデントがあったのに、茅原以外の5人は準優と同じ枠番で最終決戦を迎えることになった。とはいえ、同じ枠でも明日はまったく違う進入、まったく違うレースが繰り広げられるだろう。赤岩の前付けがある限り新田の3カドはなさそうだし、渡辺のスロー4コースも考えにくい。では、明日もインを主張するであろう末永が断然有利なのか。さっきも書いたが、準優を見るだに、それほど簡単なイン逃げ決着にはならない気もするのだが、どうだろうか。(photos/シギ―中尾、text/畠山)