魔性の人機?
11Rシリーズ優勝戦
①若狭奈美子(岡山) 13
②三浦永理(静岡) 19
③向井美鈴(山口) 13
④中田夕貴(埼玉) 10
⑤堀之内紀代子(岡山)08
⑥海野ゆかり(広島) 15

若狭48号機が勝った。
スリットラインは2コース三浦が凹んで肌寒い隊形に。3コース向井が先攻めの権利を得たが、その外から行き足の良い中田~堀之内が向井を包むように足を伸ばした。誰もがすぐには仕掛けられない、微妙な段々畑とでも言おうか。

そんなニラメッコっぽい隊列を尻目に、若狭がイチ抜けの先マイを打って早々に優勝を決め込んだ。タラレバでいうと、この同じ隊形で中田や堀之内が3コースだったら、若狭はこう易々とは逃亡できなかっただろう。

勝ち将棋、鬼のごとし。
リズムもパワーも時の運も、すべてしっかり味方につけての優勝だったと思う。まずは三島敬一郎がトライアル組を差し置いて第2席に指名した48号機。つい先日、別府正樹が12月14日の8RでFを切って、翌15日の8RでもFを切って、2連続Fで帰郷に追い込んだ魔性のモーターだ。ガチで「行き足ヤバすぎやん!」ってなF2だったわけだが、乗り手が女子レーサーに変わると、悪魔のモーターは従順な天使のモーターに変貌したw

「全部の足がいい。エンジンがいいからスタートさえ互角なら勝てると思います」
準優後、若狭は自信たっぷりの表情でこう言った。そして、その通りのレースだった。三浦が凹んでダッシュ勢が津波のように覗いてきても、焦らず騒がず完璧なレースができたのは48号機への信頼があればこそ。ボートレースが揺るぎないモータースポーツであることを実感するシリーズでもあった。

ただ、この魔性のモーターを乗りこなした若狭奈美子もタダモノではないのだな。初優勝はデビュー15年目。それからさらに6年の沈黙を重ねた37歳の今年になって、ポンポンと2度優勝。そして、全国のファンの耳目が集結するこの大会で今年3度目、通算4度目の優勝を遂げたのだ。

「どんだけ遅咲きなんじゃーーい!」
と脳内でツッコミつつ、実はこの人、フツーの人間じゃなく魔女の類ではないのか、なんて思ったりもする。だとするなら、魔性のモーター48号機をこれだけ従順に手なずけられたのも、当たり前ということになるのだが……。
鎌倉時代の到来
12Rクイクラ優勝戦 並び順
①鎌倉 涼(大阪)07
②小野生奈(福岡)07
③川野芽唯(福岡)09
④遠藤エミ(滋賀)07
⑥平高奈菜(香川)14
⑤渡邉優美(福岡)13

夏の女王が、そのまま冬の女王を受け継いだ。
このサマークイーンを力ずくで引きずり下ろしに行ったのは、やはり女子最強の遠藤だった。その手前、ピット離れの優劣で⑤優美⇔⑥平高が一瞬の入れ替わり。当事者ふたりにとっては大きな出来事だが、4カド遠藤にはなんの支障もない。

「負けるわけにはいきませんから」
昨日の準優後、ピシャリ言い放ったセリフが耳にこびりついている。
「こんなところで」
私の脳みそは、勝手にこの文字を付け足していた。1年間、賞金女王の座を独走し続けた第一人者の責任感。ただひとり、SGを制覇した女傑のプライド。さらには、来年3月のクラシックの権利を獲るための気合の発露だったか。

遠藤は行った。ほぼ同体だったカド受け川野をあっという間に飛び越え、迷うことなくイン鎌倉に襲いかかった。昨日の3コースまくり同様、初動も角度もスピードも決まりそうな見え方だったが、それでもわずかに届かなかった。スリットの手前でちょんと上体を跳ねてアジャストしたのが見えたが、あるいはその分のロスが響いたか。

最強の敵をシャットアウトした鎌倉女王は、そこでもう来年夏までの女王継続を確定させた。夏にも書いたが、10代半ばからターンセンスを高く評価されていた才媛が、出産や怪我などさまざまな人間としての学びを経て、36歳にして完全に覚醒したとみていいだろう。

上りタイムの1分46秒0は、11Rの若狭のそれを1秒4も千切る破格の数字。トライアル初戦の遠藤1分45秒5には届かなかったが、波風漂う今日の水面環境では驚異的とお伝えしてもいいだろう。タイムといえば、鎌倉の次なる野望は2月鳴門のスピードクイーンメモリアル。この大会をも制圧しようものなら、「ひとつの年度で女子プレミアムGIの完全制覇(年度間グランドスラム)」ってなことになるだろう。鎌倉幕府がどれだけ安泰な長期政権を築くのか、下っ端の町民として眺めさせてもらうとしようw

ひとつだけ、今節の大きな分岐点を選ぶなら、やはり昨日の11Rの1周2マークに尽きる。エミと生奈の着順が入れ替わったあの瞬間、今日のファイナルはまったく別の時空間を築きはじめた。あのままエミが2番手を守りきってファイナル1号艇だったら……ボートレースはひとつの着順で運命がガラリ変わる競技と知り尽くしているが、きのうのアレはその極限的な事例だという気がしてならない。

最後に、この最終バトルを終えて賞金女王の座に就いたのは、鎌倉ではなく遠藤エミだった、ということだけは明記しておこう。クラシック勝負駆けのチャンスを逸した遠藤には、近畿地区選で起死回生のリベンジを果たしてもらいたい。(photos/シギ―中尾、text/畠山)

読者のみなさま、今年1年も、だらだら文章にお付き合いくださりありがとさんでした。来年もよろしゅうお願いしますぅぅ、ほな、良いお年を!
